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昨日(15日)、新聞等において、「エフオーアイ社が、実際の売上高はわずか3億円弱しかなかったのに、約118億円とウソの記載をしていた疑いで、強制捜査された」旨が報じられていました。



日本経済新聞「エフオーアイ社長を逮捕 115億円粉飾決算の疑い 」

東証マザーズに上場していた半導体製造装置メーカー「エフオーアイ」(相模原市、破産手続き中)の粉飾決算で、さいたま地検は15日、上場時に約115億円の売上高を水増ししていた疑いが強まったとして、同社社長、奥村裕容疑者(60)を金融商品取引法違反(有価証券届出書の虚偽記載の疑いで逮捕した。
証券取引等監視委員会は近く、同法違反容疑で刑事告発する。
上場わずか7カ月で上場廃止となった新興企業を舞台にした粉飾決算は経営トップの逮捕に発展した。同地検と監視委は今後、財務担当の専務(46)らについても逮捕する方針で、粉飾決算の全容解明を目指す。(引用終わり)

日本経済新聞「監視委、エフオーアイ関係先を強制調査 粉飾決算事件」

監視委によると、同社は株式公募を実施する際、2009年3月期の実際の売上高がおよそ3億円だったにもかかわらず、約118億円と架空計上して記載した疑い。同監視委は「売上高の97%を粉飾しており、強制調査による実態解明を要する悪質な事案。告発に向けてさらに調査を進める」としている。(引用終わり)




有価証券届出書の虚偽記載は、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又は併科です(金融商品取引法第197条第1号)。

この事件は、売上高の約97%の粉飾であり、最早、粉飾決算というレベルを超えて、詐欺罪(10年以下の懲役。刑法第246条)に近いと思います。調達金額は、50億円以上ということですので、50億円以上の詐欺事件となると、歴史上でもなかなか見当たらないのではないでしょうか。

本件については、ほぼ確信犯的に実行されていたようであり、その騙しの手口の巧妙さやチェック体制についての議論は、多くなされておりますので、ここでは、IPOを目指す会社と、有価証券届出書や目論見書の虚偽記載との関係に、議論を絞って、議論したいと思います。

IPOを目指す会社は、当然ながら、いずれは有価証券届出書や目論見書を作成しなければなりません。上場前に作成しようという段階になり、「正確かどうかわからない」という状態は、問題です。この点は、主幹事証券会社も厳しくチェックします(しているはずです)。

ちなみに、主幹事証券会社も、目論見書等の重要な事項について「虚偽記載等の事実を知らず、かつ、相当な注意を用いたにもかかわらず知ることができなかったこと」(金融商品取引法第17条但書)、有価証券届出書のうちの重要な事項について「記載が虚偽であり又は欠けていることを知らず、かつ、財務計算書類以外の部分については、相当な注意を用いたにもかかわらず知ることができなかったこと」(金融商品取引法第21条第2項第3号)が立証できない限り、損害賠償責任を負います。したがって、少なくとも、相当の注意を用いたと立証できる程度には、虚偽記載等がないかについての審査を尽くすことになります。これがいわゆる「引受審査」です。主幹事を引き受ける証券会社には、引受審査部という部署があり、この部署が担当します。

この引受審査を通過するには、(当然のことながら、粉飾を誤魔化す手口を巧妙にするのではなく、)予め、審査されても大丈夫なように社内の体制を整えておく必要があります。


例えば、株主の記載が問題となることがあります。有価証券届出書等においては、直近3ヶ月の株式の移動や主要株主が記載されます。ところで、株券発行会社の株式譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ有効ではありません(自己株式の処分を除く。会社法第128条第1項)。これは、いわゆる株券不所持制度を採用していても同じです。したがって、株券発行会社において、過去に株式譲渡が行われている場合、株券の交付が行われていなければ、その株式譲渡が無効である可能性があります。これは、そのまま放置すると、有価証券届出書等の株主の欄や株主が保有している株式数が虚偽である可能性があることを意味します。これらの事実が「重要な事項」か否かは、ケースや程度によることになるでしょうが、審査側としては、放置できる問題ではありません。そこで、IPOを目指す会社としては、その株式譲渡が有効であることを証拠により説明しなければなりません。そこで、実際には、株券の交付を行い、それを確認する書面を新旧の株主から取得するか、適法であることの意見書を取得する等の方策が採られることが多いです。

他にも、重要な契約について、解除が極めて容易になされる旨の条項が規定されているにもかかわらず、これを記載しないことも虚偽記載になる可能性があります。いくら当事者同士で信頼関係があるとしても、将来的に関係が悪くなって、解除されてしまうことが十分あり得ます。その時に、解除条項が開示されていないことが問題となる可能性は否定できないでしょう。したがって、IPOを目指す会社は、重要な契約については、いくら信頼関係があっても、相手方の一方的な意思表示で解除されてしまうような条項や、容易に条件が満たされてしまうような解除条項は、断固として拒絶しなければなりません。

上場準備の段階になってから、修正するのは大変手間ですし、場合によっては修正しきれず上場が延期になってしまうことさえあります。IPOを目指すベンチャー企業は、早い段階から、将来、有価証券届出書等を作成することを念頭に、社内の体制を構築しておかれることを強くお薦めします。結果的には、コスト的にも、上場のチャンスという意味でも、良い結果に繋がると考えます。

2010年9月16日  8:30 AM |カテゴリー: 企業法務 |コメントはまだありません

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