森法律事務所
トップページ 事務所紹介 業務内容 弁護士紹介 採用情報 所在地 お問い合わせ
 

先月(1月)26日に、東京地裁民事第8部において、株主総会決議不存在確認等請求事件で、決議不存在を認める判決がありました(商事法務No.1924 60頁)。

主な内容は、以下のとおりです。
(1)適法な議長不信任・議長交代の動議がないままに、議長を交代した後の取締役解任決議は、議長でない者によって採決が行われたことになり、不存在である。
(2)(1)の株主総会決議を追認する株主総会決議についても、適切ではない代表取締役によって招集手続きが行われた点には瑕疵があるものの、株主が1人であるところ、その1人株主が出席してなされたと考えられるため存在する。
(3)(2)の株主総会により追認決議が行われたとしても、(1)の株主総会が有効になるものではなく、その間の((1)で解任された取締役の)報酬請求権は、認める。
(4)(2)の株主総会の解任に正当な理由が無いとして、会社法339条2項に基づき損害賠償請求権を認める。

株主総会の決議不存在が認められるケースは、それほど多くありませんので、ご紹介します。

2011年2月28日  4:00 PM |カテゴリー: 企業法務, 法務関連ニュース |コメントはまだありません



「スピードが大事なんじゃない。すぐ役に立つことは、すぐに役立たなくなります。何でもいい、少しでも興味をもったことから気持ちを起こしていって、どんどん自分で掘り下げてほしい。そうやって自分で見つけたことは君たちの一生の財産になります。そのことはいつか分かりますから」

(引用終わり。「週刊ポスト2011年3月4日号」より)




ネットで話題になった記事からの引用です。『銀の匙』1冊を横道に逸れながら中学3年間かけて読み込む授業をした、ある国語教師の記事です。

私も、この考え方を、普段から心がけたいです。

振り返ってみると、学生時代に学んだことのうち、当時、興味をもって、じっくりと時間をかけて、自分なり考えたことが、今でも一番、生きているように思います。

司法試験であれば、「国民主権とは何か」「憲法とは何か」「「すべて国民は、個人として尊重される。」とは、どういう意味か」「法の下の平等とは何か」等という問いに真剣に考え、自分なりの答えを出し、先人の見解から学ぶというプロセスは、決して遠回りの道ではありませんでした。

しかも、これらのことを考える時に、小野紀明教授の政治思想史の講座とゼミで3年に渡って教えてもらったことは、大きく影響しました。この頃に学んだことは、長い目で見て、私の糧になっています(講座の単位は1年目で取得していましたが、その後も興味本位で授業に出ていました。)。小野紀明教授の授業は、プラトン、ソクラテスからニーチェにいたるまでを1年間で、その後、ニーチェから現代哲学(フーコー、サルトル、デリダ等)までを1年でするものでした。ゼミでは、古典をずっと読み、私のときは、ヘーゲルの『歴史哲学講義』を通読しました。あと、個別発表というのもあり、各人が興味をもったテーマについて、政治哲学的に議論するというもので、今にして思えば、こちらも本当に勉強になりました。

なぜ、民法は、総則、物権、債権とあるのか、ということも考えてみると面白いかもしれません。私なぞは、世の中の事象を「物」か「人」で分けようとする考え方(特に19世紀以前の西洋哲学の考え方)が背景にあったと考えています。物に対する権利が物権で、人に対する権利は債権ですが、それ以外の概念に対する権利については、民法には書かれていません。古来から、日本では、西欧ほどには、物/人という2項対立で考えてきたわけではなさそうですので、民法制定時に輸入されてきた考え方だと思われます。ちなみに、現代では、物といえるかわからないものや、物か人かわからないものが、いろいろ出てきて、修正を余儀なくされています。知的財産権や動物の問題もそうです。電気については、刑法でわざわざ「この章の罪については、電気は、財物とみなす。」という規定が置かれたくらいです。

法科大学院の学生や受験生は、日々お疲れだとは思いますが、時には、法律の構造や順番、なぜその文言が使われているのかということを味をかむようにして考えることも、如何でしょうか。

2011年2月26日  3:30 PM |カテゴリー: その他 |コメントはまだありません

皆さんは、カラミストという言葉は、ご存知でしょうか。

私は、いま、カラミストとカミツキストという新語(当時)をつくって、「からみ学」を唱える、なだいなださんの『からみ学入門』という本を読んでいます。

普段、何か事件が起きると、電話をかけてきて、愚にもつかない質問を投げかける記者に辟易とした著者は、ある日、奥さんとの会話で、妙にからんだことに着想を得て、電話をかけてくる新聞記者や雑誌の記者にからむことを思いつきます。

ー ぼくのところに、電話をかけてくる新聞記者雑誌記者にからんでやろう。ともかく、からんでやろう。とことんまでからんでやろう。
かくして、ぼくはカラミストとあったのであった。われ、いかにしてカラミストとなりしや、という問に対する答が、ここにある。(p.17)
(引用終わり)




この話は、人にかみつくカミツキストではなく、しらふで他人に堂々とからむカラミストになることを提案するという痛快エッセイです。よくよく考えれば、ソクラテスプラトンに始まり、昨年流行ったマイケル・サンデルまで、カラミストではないでしょうか。

ところで、この本を私が知ったのは、民事裁判の尋問についての日弁連研修です。上手に証人にからんでいくことが尋問の要諦であるということで、ご紹介いただきました。決して、カミツキストになってはいけない、と。いらだたない、こちらに有利な話は何度も話させる、逃げられないようにする、等。民事の尋問や普段のヒアリングに役立つエッセンスが沢山あります。

しかも、この本には、尋問に役立つという以外にも、多くの知恵があります。特に、普段の思い込みから脱却するための知恵、ゆったり考えて本質を見抜く視点等を得るためにも、お勧めの一冊です。その知恵の一部をご紹介します。

ぼくは世の中には、どうしてこうも正義派が多いか、と思った。その新聞記者などは正義派の代表のようなもので、大久保清に対して、しきりに、ふてえやろうだと怒っていた。こんなに正義派が多くて、それにもかかわらず世の中が不正だらけなのは、ぼくにはなんとも理解しがたいことである。だが、それよりも不思議なことは、この世の中で、正義派同士のあいだで、それもつかみかからんばかりのけんかが、しばしば行われることである。まあ、ヘーゲルが、なにかの本に「悲劇的なのは、われわれの世界にある対立が、正義と邪悪の対立ではなく、正義と正義の対立であることだ」と書いたのも、うなずけぬことではない。(p.33)


新聞の社会部記者の正義感とか、公憤とかいうものが、彼の仕事上のいらいらから出た私憤にすぎない場合もあることを認識した(p.43)


カラミストは、どんな正義にもたじろいではならぬ。また自分を正義派の味方と、安易に考えてはならない。(p.43)


わかったというのは、日本語では決してわかったことではなく、多くの場合逃げ口上なのである。わかった、わかった、と二回続けたら、絶対逃げ口上と思うべきだ。(p.57)


地べたにはうかぼちゃは、どこまではっても、地面しか見ることはなかろうが、相手にからんではいのぼるつる草は、高みからの見通しをえるだろう。(p.69)


相手がつまらぬことと思っている問題には、カラミストは、できるだけ大げさに答えねばならぬのである。そうでないと、どうしても相手のペースにはまってしまうことになる。(p.78)
(引用終わり)


このあたりで辞めておこうと思います。私が、読んでいて楽しくなってきましたので。それでは。

2011年2月24日  10:30 PM |カテゴリー: その他 |コメントはまだありません

10年前であっても、今であっても、シリコンバレーが起業と成長しやすい場所であることに異議を唱える方はあまりいないのではないかと思います。

2月22日に日本経済新聞から配信された「米サンノゼ市長「起業と成長しやすい場所であり続ける」「三度目の奇跡」インタビュー チャック・リード氏 」という記事では、シリコンバレーの中心都市であるサンノゼ市の市長がインフラ整備のために、どのような努力を行っているかが記述されています。

特に、印象に残った内容は、税制面での優遇策の余地はあまりない代わり、「行政が迅速に動くように努めている」という方針を示し、そのために「本社移転の手続きや、拠点拡大などの要望に他の自治体に比べ素早く応じる」という行政インフラの重視を心がけておられる点でした。さらに、「シリコンバレーでは、自治体もベンチャー企業と同じスピードで考えて行動することが大事。」ということで、スピードを重視している点も印象的でした。

政府や地方自治体がベンチャー支援となると、すぐに金銭面でのサポートが念頭に来ることが少なくありませんが、貸付の優遇措置等は、本当にベンチャー支援に資するか疑問の面がないわけではなく、逆に、このような行政インフラがスピード感をもって、使い勝手のよいものに変化するというのは、ベンチャー企業にとってありがたいのではないかと感じます。

日本では、法務局的な手続きは、全国一律ですので、なかなか地域間競争が起きにくいという状況にあるのは確かですが、その中でも、行政ができることについて、参考になるのではないかと考えさせられた記事でした。

2011年2月23日  6:30 AM |カテゴリー: その他, ベンチャー・ビジネス |コメントはまだありません

先日、ある会合にて、MBO事案で、PBRが1倍を下回っていた場合に、買い取るべき金額につき、少なくとも1株当たり純資産額は、株式の公正な価格として確保しなくてよいのか、という議論がありました。PBRとは、Price Book-value Ratioの略で、株価純資産倍率を意味します。すなわち、[(株価)÷(1株当たり純資産額)] を意味しますので、PBRが1倍を下回っていた場合とは、株価<1株当たり純資産額という状態です。この状態での公正な価格は、1株当たり純資産額を最低額とすべきではないかという議論です。

特に、少数株主を排除することが前提となっているMBOのようなケースで、少数株主として排除される側からすると、「PBR1倍以下の価格でしか買ってくれないのなら、清算して欲しい(清算すべき)」という期待があるだろうという問題意識から出た議論です。

この点については、商事法務No.1921(2011年1月25日号)の35頁に、太田洋著「サイバードホールディングス事件東京高裁決定の検討」という論文の1つのパラグラフに、下記の部分がありますので、参考になります。

3 PBRが一倍を下回っていた場合と「当該株式の客観的価値」

(中略)

この点、本決定は、・・・(中略)・・・(i)市場株価が当該会社の一株当たり純資産額を下回ることはまれではないこと、(ii)本件では、そのような事態が生じたのは一時期にすぎないこと、(iii)本件TOB公表前一カ月間の市場株価の終値による出来高加重平均値が直近の監査済み貸借対照表上の一株当たり純資産額を上回っていることを根拠に、PBRが一時期一.〇を割り込んでいたとしても、そのことから直ちに市場株価が企業の客観的価値を反映していないと認められる「特段の事情」があるとはいえないと判断している。しかしながら、少なくともわが国では上場会社のPBRが一倍を割り込むことはしばしばみられる現状であることや、平成に入ってからの資本市場に関するさまざまな法制度等の整備(インサイダー取引規制や相場操縦規制等の株式取引の公正確保のための規制の強化、株価に影響を及ぼすべき上場会社についての開示規制の充実、証券取引等監視委員会を始めとする資本市場の監視体制の強化・拡充)により、有価証券市場の株価形成機能が格段に向上している現在においては、少なくとも一カ月間(ないし一〇日間)の株価の平均値は株式価値の指標として十分信頼に足りると解されること等からすれば、仮に(ii)および(iii)のような事情がない場合であっても、特段の事情がない限り、MBOのためのTOBに先立つ時期に対象会社のPBRが一倍を割り込んでいても、「当該株式の客観的価値」に関しては、株価を基礎として算定することに問題はないと解すべきであろう。(引用終わり)



この議論は、「価値とは何か。」「価格とは何か。」という議論が内包されている難しい問題です。そもそも、価値なんてものは、人によって全然違うものです。株式についても、あと1株で過半数に到達する株主の1株と、0.1%の持ち株比率の株主が1株買い増す場合の1株では、購入者にとっての価値は違うといえるでしょう。しかし、ここでは、「客観的価値」又は「公正な価格」について議論しているのですから、いくら価値を議論しても市場で値段がついているのであれば、それが売り買いの成立している価格であり、市場が公正妥当であり、流通量(出来高)もあり、異常値ではないのであれば、すなわち資本市場の株価形成機能が健全な状態であれば、それを「客観的価値」又は「公正な価格」としましょうというのは、ある意味、筋の通っている議論ではないかと考えます。

それに、「1株当たり純資産額」は、もし清算すれば株主が実際にもらえる「1株当たりの金額」(清算価値)を意味するわけではありません。なぜなら貸借対照表に記載されている資産は、その金額で売却できることを保証する金額ではないからです。理論的には清算価値と言われますが、現実に清算時の残余財産として分配される金額を保証してくれるわけではありません。

しかも、解散決議の可決について現実性がないのであれば、清算価値が実現することもあり得ないのですから、清算価値を「客観的価値」といって議論しても意味がないのではないかという観点もあり得ると思います。

ただし、会社が発表している中期経営計画等を前提にして、収益還元法(DCF法)を考えた際に、それでも清算価値を下回るようであれば、それはそれで取締役としての善管注意義務や忠実義務に違反する可能性があるという問題は別途発生するように思います。経営者(取締役会)が、会社の資産を全部売却するより、何とか事業を継続して収益につなげる方が株主への利益に資すると判断しているからこその事業継続の判断であり、そうでなければ株主及び会社に対する関係上、解散して、清算するべき義務が認められる可能性は否定できないでしょう。

以上が私見です。ご参考になれば幸いです。

2011年2月22日  8:30 PM |カテゴリー: その他 |コメントはまだありません

ベンチャー企業にとって、ファイナンスは、極めて重要です。勿論、マーケティングを含めたお金を増やすための戦略も(の方が)重要であることは間違いないのですが、ファイナンスは、その土台を作るという意味でも本当に重要ですし、最初で間違えると、なかなか修正がきかないという特徴があります。

このようなベンチャーのファイナンスについて、学ぶための書として、以前、『起業のファイナンス ベンチャーにとって一番大切なこと』という公認会計士の磯崎先生の本を紹介させていただきました。

ただ、この本は、ある程度、リテラシーや実務感覚がないと、難しいかもしれません。そこで、実際に、起業して、その後、上場した会社の経営者が書いた本「入門 ベンチャーファイナンス―会社設立・公開・売却の実践知識 」を紹介します。著者の水永政志さんは、スター・マイカ株式会社という会社の社長であり、この会社は、いまジャスダックに上場しています。また、MBA、コンサルティング会社、外資系金融機関という経歴をお持ちの方ですので、ファイナンスのプロでもあります。

第1章 ベンチャー企業とは何か
 1 私のベンチャー体験
 2 ベンチャー企業の本質
 3 ベンチャー企業のライフサイクル
 4 ベンチャー企業は危険なのか?
第2章 会社を作る
 1 会社とは何か
 2 会社の機関とその役割
第3章 ビジネスモデルと経営戦略
 1 アイデアをビジネスモデルに変える
 2 経営者が陥りやすい過ち
第4章 ベンチャー企業の組織
 1 求められるスピードと柔軟性
 2 目的に応じた機能的な組織のデザイン
 3 企業組織の変遷
 4 組織の戦略と評価
 5 現代の組織が抱える悩み
第5章 ベンチャービジネスの資金調達
 1 資金調達の方法
 2 デットファイナンス
 3 エクイティファイナンス
 4 資本コストの考え方
第6章 資本政策と上場、コーポレートガバナンス
 1 資本政策とは何か
 2 新規株式公開(IPO)と上場
 3 コーポレートガバナンス
第7章 ベンチャーキャピタルの役割と活用法
 1 ベンチャーキャピタルとは何か
 2 我が国のベンチャーキャピタル
 3 ベンチャーキャピタルの投資プロセス
第8章 企業価値の評価とM&A
 1 資産価値による評価
 2 会社の価値の決まり方
 3 M&A 会社の売り方・買い方
第9章 創業経営者とイクジットストラテジー
 1 創業経営者と企業
 2 イクジットストラテジーのパターン
 3 所有と経営の分離と資本主義の本質
 4 これからの日本のイクジット



非常にわかりやすく、理解の進みやすい構成となっていますので、ご興味のある方は、ご一読をお勧めします。

2011年2月21日  6:30 AM |カテゴリー: ベンチャー・ファイナンス |コメントはまだありません

昨晩、某所で、ベンチャー企業の知的財産実務というお題でお話をさせていただく機会がありました。

その中で、現行の著作権について考え方が産業の発展、特にITベンチャーのビジネス戦略に大きな影響を及ぼしているのではないか、という話をさせていただきました。要するに、今の考え方では、(立法論であるか法解釈論であるかはともかく)グローバルで戦うには、不利な状況を招いているのではないか、という議論です。

この議論について、一つの示唆となる報告書があります。

先月公表された「文化審議会著作権分科会 報告書(案)」(PDF)です。

この中で、次のような記述があります。

4 グーグルが提起した著作権問題
第10期第1回の本小委員会ではまた、「グーグルが提起した著作権問題」と題し、 米国での事例等の紹介が行われた。ヒアリングでは、様々な事例が紹介されたが、その いくつかを簡単にまとめると以下のとおりである。
まず、YouTube の登場に伴い、Tolerated Use、すなわち米国著作権法上のフェアユース にも該当しない違法利用であるが、著作権者側がパブリシティ効果を狙ってビジネス上 の判断から侵害を黙認するケースがあること、そして、こうしたケースの背景には、デ ジタル・ミレニアム著作権法(DMCA)第512条に規定するセーフハーバー条項、 すなわちプロバイダーは要請を受けた場合に違法コンテンツを機械的に削除すれば免 責されるという仕組みがあることについての指摘がなされた。
また、iPod や YouTube の成功は、技術イノベーションによるものではなく、ビジネス モデルとDMCAの制度イノベーションがもたらしたものであり、新しい時代の著作権 制度は、産業著作権と国益の視点でいかにして制度イノベーションを実現するかが問わ れるとした、角川歴彦氏の指摘を紹介しつつ、コンテンツ流通を促進していく必要性に ついて指摘がなされた。


個人的に、必ずしも全ての内容に賛成するわけではありませんが、これらの問題意識の成果として、「権利制限一般規定ワーキングチーム 報告書」(PDF)記載の報告があり、まだ賛否両論の状況とはいえ、そして少し遅い動きであったかもしれないとはいえ、徐々に改善の兆しがあることは望ましいことだと考えます。

著作権に関わった仕事をされている方やITベンチャーに関わりのある方は、これらの動向に注目しておいた方がよいかもしれません。

文化審議会著作権分科会については、こちらをご参照ください。

2011年2月18日  6:30 AM |カテゴリー: 企業法務 |コメントはまだありません

諸事情により、しばらくブログの更新をお休みさせていただいておりました。ご心配をおかけいただいた皆様、ありがとうございました。

早速ですが、今日は、特許権についての基本的な話をしたいと思います。

特許権についてのよくある勘違いとして、次のようなものがあります。

(1) 既にある発明が特許出願済みなので、もうその特許に抵触することができない

(2) 社長が発明した特許は、会社のものである。

これらについて、改めて整理しておきます。

まず、(1)について、検討します。

既に、ある発明が特許出願済みであっても、それが審査請求され、特許料を納付して登録されなければ、特許権となることはありません。特許を出願すると、出願日から1年6月経過後に自動的に公開され、「特許出願20○○-○○○○○○」といった番号で、公開されますが、それだけでは特許権ではありません。単に、過去に出願されたということに過ぎません。勿論、今後、審査請求され、特許権化する可能性はありますので、この点は、十分に検討する必要があります。

ただ、出願から3年以内に審査請求のない出願は、取り下げられたものとみなされます。以後権利化することはできません。したがって、3年以上前に出願され、且つ未だに審査請求がなされていない場合は、その出願された発明については、特許権化されません。

仮に審査請求され、拒絶査定ではなく、特許査定が下りた場合は、特許料が納付されると特許登録原簿に載り、特許公報が発行されます。この場合は、特許権として有効です。ただ、無効審決や裁判の結果によって無効化した場合、権利存続のための特許料が納付されていない場合、特許権存続期間が満了した場合は、有効ではありません。

次に、(2)について、検討します。

社長が発明した特許は、特許を受ける権利、又は特許権自体を会社に譲渡しない限り、会社は特許権者ではありません。会社は、実施許諾を受けている(通常実施権を有する)に過ぎません。特許を受ける権利を会社に譲渡した場合でも、特許権を会社に譲渡した場合でも、会社は、相当な対価を社長に支払う義務があります。

特許を受ける権利や特許権が、会社に帰属しているのか、社長個人に帰属しているのかという点は、事業上、問題とならないことも少なくありませんが、ベンチャー・キャピタルから資金調達するケースや、上場を視野に入れているケースは、注意を払った方がよいでしょう。また、会社に譲渡済みであったとしても、相当な対価が支払われたか否かも、重要です。

2011年2月17日  6:30 AM |カテゴリー: ベンチャー・ビジネス |コメントはまだありません

今日は、新株予約権無償割当てというテーマについて考えます。

新株予約権無償割当てとは、会社法第277条に規定されている資金調達方法で、「株主(種類株式発行会社にあっては、ある種類の種類株主)に対して新たに払込みをさせない」新株予約権の割当てです。

要するに、現在の株主全員に各株主の保有株式数に応じて、無償で新株予約権をあげるスキームです。割当を受けた株主は、お金を払って新株式を引き受けるか、お金を払わないかを選択することができます。お金を払わないと、他の株主がお金を払って新株式を得ると、その分、持ち株比率が低下することになります。ご存知の方は、「株主割当増資」と近いのではないかと考えられると思いますが、その通りです。特に、旧商法では、全株主に新株引受権を付与するという発想が原則でしたので、これに近いといえるでしょう。

実は、今の会社法では、株主割当てと新株予約権無償割当ての両方の仕組みがあります。ただ、要件が少し違いますので、ケースに応じて、使い分けることになります。特に、新株予約権無償割当てには、(1)取締役会設置会社では取締役会のみで発行できる、(2)新株予約権なので、新株予約権の行使条件にアレンジを加えることができる、という2つの大きな特徴があります。

(1)の特徴は、取締役会設置会社の株主割当増資については、取締役会のみで発行しようとすると定款の定め(会社202条3項2号)が必要であるのに対し(但し、整備法76条3項に注意)、新株予約権無償割当ては、原則として取締役会という点であり、時に役立つ可能性があります。

(2)の特徴は、ブルドックソース事件で如何なく利用されましたので、覚えておられる方もいるのではないでしょうか。同事件では、全株主に1株につき3個の新株予約権が無償で割り当てられましたが、その新株予約権とは、行使条件において、スティール・パートナーズ関係者は行使できないというものであり、代わりに対価を払う内容のものでした。その適法性は、最高裁まで争われ、最高裁判所平成19年8月7日決定にて、「株主平等の原則の趣旨に反するものということはできない」「当該新株予約権無償割当てを著しく不公正な方法によるものということはできない」という結論がだされるに到りました。

余談ですが、この件では、双方とも無傷ではなく、特に、ブルドックソース側は、平成20年3月期の決算で、営業利益6 億7000万円に対し、当期純損失19億1200万円(イカリソースののれん代(5 億9 千4 百万円)を含む。)を計上しています。新株予約権の取得に伴う支払額は21億1400万円、公開買付の対応に伴う支払額は6億6900万円とのことであり、20億以上もの大金が費消されたことになります。

ところで、先月19日に、金融庁から「「金融庁・開示制度ワーキング・グループ報告」~ 新株予約権無償割当てによる増資(いわゆる「ライツ・オファリング」)に係る制度整備について ~」と題する報道発表がありました。



新株予約権無償割当てによる増資(いわゆる「ライツ・オファリング」)とは、「公募増資」、「第三者割当増資」と並んで、企業の増資手法の一つであり、株主全員に新株予約権を無償で割り当てることによる増資手法である。株主は割り当てられた新株予約権を行使して金銭を払い込み、株式を取得することができるが、新株予約権を行使せずに市場で売却することも可能である。したがって、持分比率の低下を嫌う株主は新株予約権の行使によりそれを回避でき、追加出資を嫌う株主は新株予約権の売却により追加負担を回避できるという特徴を有する。(引用終わり)




この政策の趣旨は、上場企業において、新株予約権無償割当てによる資金調達を容易にすることです。

これをきっかけに、上場企業では、株主割当増資ではなく、新株予約権無償割当てによる増資が増えるかもしれませんので、上場企業の財務担当者やPO担当者は、要チェックだと思います。

ベンチャー企業のファイナンスについては、これまでにも何度か取り上げました。

今回は、銀行融資を受ける場合の注意点について、検討します。銀行融資は、デット・ファイナンス(Debt Finance)と呼ばれます。貸借対照表上は、負債となるからです。

このデット・ファイナンスの企業にとっての最大の特徴は、「支払期日に返さなければならない」という点であり、銀行等の貸し手にとっての特徴は「倒産されては困る」という点です。この2つの特徴を理解することが重要です。

「支払期日に返さなければならない」という特徴を考えると、いつ売上が発生するかわからないような研究・開発先行型のビジネスには、不適当ということがわかります。ある程度、収益の見込みのあるビジネスでないと、支払期日に一定の金額を返済する目処が立たないからです。

さらに、銀行等の貸し手にとって「倒産されては困る」という特徴を考えると、リスクは割とあるが、かなり利益がでるかもしれないというビジネスに関心がなく、確実にキャッシュ・インがありそうでリスクの低いビジネスを好むことがわかります。会社がハイリスク・ハイリターンな設備投資をしようと、ローリスクローリターンな設備投資をしようと、貸し手の収入、すなわち利息は(原則として)変化しません。最近では、例外的に変化する内容のデット・ファイナンスもあるようですが、それでも利息制限法の範囲を超えることはありません。ということは、貸し手からすると、無駄にリスクの高い事業はしてほしくないと思うのは当然です。

自社のビジネスが(少なくとも外部の人間にとっては)ハイリスク・ハイリターンなモデルであるという理解があれば、そのようなベンチャー企業は、銀行から借入を受けるべきではありません。実際に、急成長を志向するベンチャー企業が銀行融資を受ける場合は、以下のような点に気をつけるべきでしょう。

1 資金的に余裕があり、その必要があまり無い時点で借り入れを実行する。

2 個人保証は極力避ける。キャッシュフロー、運転資金、増資目標の達成など、特定の業績のマイルストーンに応じて借入金額の上限と返済期限を設定する。

3 貸付約定や制限条項を慎重に検討する。専門家やアドバイザーに頼ることなく、社長が自らその結果がもたらす意味を理解し、判断する。

4 一定の条件が満たされたときに、即時実行される不利な条項はよく検討する。特に、期限の利益喪失条項は、慎重に検討する。

昨今では、中小企業やベンチャー企業への融資について、政策的に「新規開業資金(新企業育成貸付)」といった内容の融資制度が整備されています。しかし、「借りることができるから借りる」という態度は、非常に危険です。特に急成長を志向するベンチャー企業は、ビジネスモデルに由来するリスクが高いことがほとんどですから、そのような会社が資金調達を銀行融資に頼ると、将来的に、会社の破産の原因となったり、社長個人の破産の原因となったりすることを念頭に置いておくべきです。ベンチャー企業に限って言えば、銀行融資は、基本的には補完的な位置づけであると考えておいた方が無難でしょう。

2011年2月1日  6:30 AM |カテゴリー: ベンチャー・ファイナンス |コメントはまだありません
 
   
2011年2月
« 1月   3月 »
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28  
 
 
 
 
 
 
お問い合わせはお気軽に/06-6228-0505
サイトマップ
ベンチャー法務の部屋
 

RSS

HOME事務所紹介弁護士紹介採用情報所在地本サイトの利用条件プライバシーポリシーサイトマップお問い合わせ

COPYRIGHT2010 ©, 山本・森・松尾弁護士事務所 All Rights Reserved.