森法律事務所
トップページ 事務所紹介 業務内容 弁護士紹介 採用情報 所在地 お問い合わせ
 

今年のベンチャー業界では、プラットフォーム化の加速、モバイルへの移行(iPhone, Androidの台頭)、ボーダーレスなM&Aの増加等が傾向としてあったように思います。

私のエントリーでは、「2010年夏のベンチャー業界の気になる動き(その1)」や「2010年夏のベンチャー業界の気になる動き(その2)」で、ボーダーレスなM&Aや海外IPOの話を取り上げました。

さて、今年は、私がこのブログ「ベンチャー法務の部屋」を始めた年でもあります。9月から始めて、たった4ヶ月の間ではありましたが、御蔭さまで多くの読者にお読みいただくことができました。読者の皆様、ありがとうございました。今年、アップさせていただいたエントリーの中で、アクセスが多かった記事のベスト3は、以下のとおりです。

1位「営業は利益を、開発は売上を
2位「ベンチャー企業のCFOとは
3位「社長が一番エラいという観念

私の専門領域である法律関係のエントリーもいくつかアップしました。主なものをピックアップしましたので、ご興味のある方はどうぞ。

1 ファイナンス
ベンチャー企業が種類株式を発行する場合
ベンチャー企業の資金調達とアーンアウト条項
ベンチャー企業のファイナンス方法の選択
投資契約書の株式買取請求権(1)
投資契約書の株式買取請求権(2)
新株予約権と税制適格
ベンチャー企業のモチベーション2.0 ストック・オプションの話(1)
ベンチャー企業のモチベーション2.0 ストック・オプションの話(2)

2 契約
契約書は作成した方がよいか 契約書と信用の関係
中小企業・ベンチャー企業とウィーン売買条約
サイト構築業務における見積書と請負代金の確定についての裁判例
中国企業とライセンス契約を結ぶときの留意点
企業の法務部門の役割(1)
企業の法務部門の役割(2)
解除条項について考える(1) ~意外と取扱いが難しい~
解除条項について考える(2) ~事業譲渡契約の解除・表明保証条項と解除権~

3 取締役・CFO・ガバナンス
ベンチャー企業のCFOとは
ベンチャー企業におけるベンチャー・キャピタルから派遣される社外取締役の役割
経営判断原則に関する最高裁判決について
名目的取締役が約した保証債務の履行請求と権利濫用
VCからの役員派遣とコンプライアンス

4 バイアウト・Exit
大企業によるベンチャー企業の買収
会社の未来は4つしかない

5 会社法改正
会社法改正の動向と株価算定事件についてのメモ

ところで、最近、読んだ本に、『顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説―アマゾンを震撼させたサービスはいかに生まれたか』という本があります。

この本は、事業の目的は顧客に良い価値を提供することである、そして、その組織作りをするための過程には多くの苦労と楽しさがある、という本を実例を通じて教えてくれます。私も完全に読み込んだわけではありませんが、正月期間に読む1冊にするつもりです。貴方が、起業を考えていたり、ビジネスに関心があったり、事業をサポートする立場にあったりするのであれば、この本から得られることは少なくないのではないかと思います。

それでは皆さん、良いお年を!

2010年12月27日  3:30 PM |カテゴリー: その他 |コメントはまだありません

今日は、クリスマス・イブですので、クリスマスらしいかはわかりませんが、ベンチャーとも法律とも関係のない話をさせていただこうと思います。

最近、エディット・ピアフという方の自伝を読みました。本のタイトルは、『わが愛の讃歌―エディット・ピアフ自伝』です。誠に恥ずかしい話ですが、最近まで、彼女のことをほとんど知りませんでした。

フランスが生んだ最高のシャンソン歌手であり、「薔薇色の人生 La vie en rose」や「愛の讃歌 Hymne à l’amour」という数々の美しい歌を歌った女性です。誰しもが一度は耳にしたことがある曲であり、世界中で数多くの歌手、日本でも、越路吹雪さんや美空ひばりさんをはじめとする数々の歌手がカバーしています。

彼女の人生は、一言で言えば、壮絶な人生です。彼女は、凄まじい生い立ちの中、天性の歌声で歌い続けることで生きた女性です。麻薬とアルコール、浪費癖、数多くの男性との恋愛遍歴、最愛の恋人マルセル・セルダンとの死別、娘マルセルとの死別。なぜ、このように過酷な運命が次々と彼女に襲いかかるのかという程に、過酷です。しかし、そのような過酷な運命の中でも、歌、そして人への想いを胸に生き続けます。1963年、47歳で亡くなった彼女ですが、彼女の歌声は、今なお世界中で愛されています。



 歌は私にとって、自分自身であり、自分の肉体であり、血であり精神であり、心であり、魂なのです。ほかにどうお話ししたらいいでしょうか?(引用終わり)(中井多津夫訳『わが愛の讃歌―エディット・ピアフ自伝』177頁)




彼女の自伝の最初の章の題は、”je ne regrette rien”(私は何も後悔しない)です。私は、彼女の人生から教訓めいたものを得たいわけではありません。ただ、カトリックの世界からすると、数多くの罪を犯していると思われる彼女の行動を前提にしても、彼女が後悔しないと言えたのは、ある意味、素直な心があったからのようにも思います。彼女が、恋人マルセル・セルダンと遊園地でデートしていたところ、周りの人に気づかれたときのエピソードです(マルセル・セルダンは、ボクシングの世界ミドル級王者だった。)。



 その時、だれかがこう叫びました。
《エディット〈バラ色の人生〉をうたって下さい》
 すると、回転木馬がみんなとまり、あたりがしーんと静まりかえってしまいました。
 私は〈バラ色の人生〉をうたいました。
 私がうたいおわると、いっせいに拍手喝采が湧きおこりました。ふと振りかえってみると、マルセルがあっけにとられたような表情をみせているのです。その時、彼はこう言ったのです。
《エディット、きみはぼくなんかよりずっと素晴らしい仕事をしているんだね。あのひとたちに愛と幸せをあげるのがきみの仕事なんだから》
 彼の言葉をきいて、私は自分の両頬に涙が流れていくのを感じました。私がセルダンより素晴らしいだなんて!それはひとりの男性が私に与えることのできる最も美しい言葉でした。もちろん、私がそれに価するような人間だなんて、これっぽっちも思っていません。
 セルダンのことを話しだすと、そうなんです、私は彼のことを話しているだけでとってもいい気持になれるのです。(引用終わり)(同書、68頁)




多くを語るより、彼女の歌声を聞いていただいた方がよいことは間違いありません。クリスマス・ソングも良いですが、彼女の歌も聖夜にお勧めです。

今日は、クリスマス・イブです。多くの人が素直な気持で素敵な人と一緒に過ごせることを心から祈っています。

2010年12月24日  6:30 AM |カテゴリー: その他 |コメントはまだありません

起業を考えている方と話をしていると、ときどき「種類株式を発行して、資金を調達しようと考えているのですが・・・」という方と出会います。このとき、私は、「なぜ、種類株式で調達しようと考えているのですか?」と質問することが多いです。

この質問に対しては、少なからず(1)「何となく、種類株式の方が良さそう」「シリコンバレーでは種類株式しか発行しないと聞いている(ので真似したい)」といった回答を受けることがあります。この場合、「であれば、投資家が普通株式で良いと言っているのであれば、そして株価が同じであれば、普通株式で調達した方がよいのではないですか?」と答えるようにしています。

その理由は、あまり種類株式のことをよく理解しないまま発行しても、その後の運用の手間を考えると大変だからです。私自身、種類株式の発行のサポートを何度も担当させていただきましたし、種類株式発行会社のサポートもしてきましたが、確かに、運用面で意識しておかないといけないケースがあります。

特に、種類株主総会決議事項が種類株主総会で決議されていないと、無効になってしまいますので、要注意です。具体的に、よく問題となるのは、会社法第200条第4項の種類株主総会です。種類株式発行会社が普通株式を発行する場合にも、通常の株主総会決議の他に、定款に定めがある場合を除き、同項の普通株主総会(普通株式を保有する株主のみの種類株主総会)を開催する必要があります。他にも、取締役又は監査役の選任条項が付されている種類株式(会社法第108条第1項第9号)が発行されている場合、当該種類株主総会で選任決議された役員の改選議案も忘れがちです。実際に、役員選任条項やA種B種合同種類株主総会決議事項(会社法第108条第1項第8号)等が付されている種類株式を発行していると、定時株主総会前に、A種B種合同種類株主総会、A種株主総会、B種株主総会、普通株主総会(普通株式を保有する株主のみの種類株主総会)を開いて、ようやく定時株主総会を開催するといったことがあり得ます。招集通知の発送の管理等が手間がかかりそうです。

とはいえ、起業家の方から(2)「調達したい金額が大きいので、株価を高くしたい」「外国の投資家(種類株式を使う日本の投資家)から調達予定である」「引受先がファンドと事業会社の2種類あり、それぞれに違う権利を付与したい」「大企業からのスピンアウトであり、その元の会社と新規投資家からそれぞれ取締役が派遣されることになっている」等という話をいただく場合は、それぞれ種類株式を発行するのに合理的な理由がありますので、発行会社側として、種類株式を発行する際に気をつけるポイントをお話しさせていただいています。

また、(3)「上場企業から出資を受けるが、連結させたくない」というケースもあります。これは、どのような場合に起きるかといいますと、上場企業がベンチャー起業に投資する場合、資本的および実質的に支配従属関係があると判断され、連結されてしまって連結決算書類に載るのを避けたいという場合です。赤字のベンチャー起業が連結されてしまうと、上場企業としては連結決算書類が悪い数字になってしまうので困るというわけです。この場合は、無議決権株式という種類株式を当該上場企業に発行して、連結化することを避けるという手法が採られることがあります。売上が立つ前に、研究開発費等でどんどん累積赤字が溜まっていく研究開発先行型のベンチャー企業に見られます。

このとおり、種類株式の発行は、(3)のような場合でない限り、発行会社側からは自らを縛るという側面がありますので、安易な気持ちで種類株式の発行を選択することは危険です。種類株式を採用する合理的な理由がある場合に、専門家の助言を受けて、種類株式の内容をよく理解してから、発行するように心がけていただきたいです。種類株式の概要は、『起業のファイナンス ベンチャーにとって一番大切なこと』の第8章に記載されています。この内容が理解できることは種類株式を発行する上で必須ですが、個別具体的な条項の問題について深く掘り下げられたものではありませんので、投資家から種類株式の要項が提示された時点で、専門家の助言を受けることをお勧めします。

2010年12月22日  6:30 AM |カテゴリー: 未分類 |コメントはまだありません

昨日のエントリーは、「技術畑出身の社長が陥りがちな罠」というテーマで書かせていただきました。このエントリーで触れさせていただいた藤沢武夫さんが書かれた『経営に終わりはない』という本は、藤沢武夫さんが、本田宗一郎さんという希代の情熱的なエンジニアを如何に上手く縁の下で支えられておられたか、よくわかる本です。HONDAがどのようにして生まれ、成長したかがよくわかる私の好きな本の1つです。

ところで、本日は、営業出身の社長と話をしたときに、聞いた話をさせていただこうと思います。

営業出身の方は、「営業して、売れば何とかなる」という発想が頭にあるようです。営業出身の方は、独立しても、とにかく自社製品・自社サービスを自分の足と口で売ってお金にするのはできるだろうという自信があるようなのです。実際、営業出身の方がベンチャー企業を起こしてその後ある程度上手くいくことは少なくないように思います。

とはいえ、営業出身の方が実際に独立して、社長となり、つまずくケースもあるかと思います。

まず、最初にあり得るのが、売る商品やサービスがよくない、又はマーケット自体がよくないケースです。顧客に満足を与えることができない商品やサービスは、いくら営業によって販売できたとしても、長期的な事業としては成り立たないでしょう。また、縮小傾向にあるマーケットに参入しても、全体の流れに逆らうことはできず、上手く行かない可能性があります。

さらに、資金繰りで困るパターンも少なくないように思います。営業というのは、会社の資産を使って、いかに(売上及び)利益を増やすかという点に意識が向きがちです。当初は、会社の資産といっても、社長の身1つといった状態ですので、社長が動いて利益を上げればよいですが、事業を拡大するにつれ、固定費が増えたり、必要な運転資金が増えたりすると、資金繰りが重要になってきます。経営は、バランスシートの左側(Asset)を増やすことだけでなく、右側(DebtとEquity)の中身や、左側と右側とのバランスが重要である、又はキャッシュ・フローを常にチェックしておかなければならない、といったビジネス書に出てくるような問題点が生じます。

最後に、ある程度の規模になったとしても、それ以上伸び悩むケースがあるように思います。社長の枠を超えた組織に脱皮できず、その手前にある壁に阻まれているような状態です。この問題についての話は、坂本桂一さんの『年商5億円の「壁」のやぶり方』という本の中でも詳しく取り上げられています。社長が営業から手を引いても、組織が大きくなるかという壁を乗り越えなければなりません。

これらの問題は、それぞれの段階ごとに解決の方法が異なります。例えば、財務面についていえば、優れたCFOがいるといないのとでは、大きく違います(CFOについては、以前の「ベンチャー企業のCFOとは」も参考にしてください。)。社長が資金繰りに時間をとられていると、社長が本来為すべき仕事がおろそかになります。

営業出身の社長が事業を立ち上げた場合、それなりに売れる商品やサービスを扱っているのであれば、事業をある程度の軌道にのせておられるケースは少なくないように感じます。しかし、今回、指摘させていただいたような理由で、伸び悩むケースも少なくありません。また、そもそも「それほど大きくしたいわけではない」「それなりに利益が出ているので、かまわない」ということもあります。それは、社長の価値観や起業の目的、ゴールに依存する問題です。ただ、事業をさらにのばしたい場合には、社長の営業力だけでは上手く行かないことがほとんどでしょうから、商品・サービスの内容、マーケットの選択、資金繰り、ビジネスモデルに合致した資金調達、社長が営業を離れても事業が回るための組織作り等の問題を、どう乗り越えていくのか、考えることが重要だと思います。

2010年12月21日  6:30 AM |カテゴリー: ベンチャー・ビジネス |コメントはまだありません

ベンチャー企業の創立には、いくつかのパターンがあります。学生が始めたもの、社会人を辞めた人が始めたもの、優れた技術を持った人が始めたもの、営業が得意な人が始めたもの、代々の家業を発展させたもの、大企業からスピンアウトしたもの、ある程度の規模と事業計画を狙ってスタートしたもの、個人事業程度でやっているうちに大きくなったもの等です。私自身、少なくない数のベンチャー企業を見てきましたが、創業までの経緯は、実に様々です。今回は、その中で、大企業の技術畑の方が脱サラして起業したものの、伸び悩んでいるケースを取り上げてみたいと思います。

技術畑出身の方が創立した会社が陥りがちな問題(過ち)の最大のものは、「良いものをつくれば売れる」ということでしょう。仮に「良いものでなければ、売れない」という命題が真実であったとしても、それは「良いものをつくれば売れる」理由にはなりません。1つの例として考えられるのは、マクドナルドでしょう。この世に、マクドナルドのハンバーガーより美味しいハンバーガーをつくることができる人は、沢山いるでしょうけれども、マクドナルドより大きな飲食チェーンを築き上げることのできる人は、なかなかいないでしょう。

この問題は、少なくとも2つの点を解決する必要がありそうです。まず1つ目は、「良いもの」の「良い」の中身を吟味することでしょう。単に、すばらしいとか、美味しいとか、世界で初めてとか、環境によいとか、特許として登録されているということでは無いように思います。少なくとも、事業として継続し得るように「売れる」ことが必要です。当たり前といえば、当たり前です。しかし、現実には、「これは、ウチにしか提供できないものなんです。」といったフレーズを耳にするものの、誰が買いそうなのか、買い手には買う動機が本当にあるのかが、いまいち想像できないケースは少なくありません。ビジネスである以上、「良いもの」とは、それを買った人が出したお金以上の価値があったと感じることができ、且つそのように感じる人が多くおり、さらに自社に適正な利益を生み出すものといえるのではないでしょうか。(ただ、予め検討し、且つそれを実行するのは、言うは易く行うは難しであることは承知しています。)

もう1つの点は、その会社に、売る人やお金を調達する人等、「良いものを売る」ために必要な人材を確保することです。技術は重要であることは確かですが、会社の経営にとっては営業や財務も非常に重要です。いくら良いものをつくることができても、売れなければ意味がありません。この点、例えば、HONDAの本田宗一郎さん藤沢武夫さんのコンビや、SONYの井深大さん盛田昭夫さんのコンビは、互いを補うすばらしいチームだったのではないでしょうか。

もちろん、起業において失敗するケースの全ての原因がこの2つだけと申し上げるつもりはありません。ただ、この2つを遠因とするケースは、決して少なくないでしょう。技術畑出身の方が、起業を考えておられる場合、これらの観点も考慮していただければ、よい起業となる確率はぐんと上がるように思います。

2010年12月20日  6:30 AM |カテゴリー: 未分類 |コメントはまだありません

昨日のエントリー「名目的取締役が約した保証債務の履行請求と権利濫用」では、権利の濫用について、取り上げました。この「権利の濫用」という言葉は、よく耳にしますが、改めて考えてみたいと思います。

本来、権利を有しているのであるから、その行使は、認められるのが当然です。ある意味、トートロジー(同語反復)でもあります。そうすることが許されるから「権利」というのであり、権利の行使は許されるのが当然というのは、ほとんど言葉を定義しているのに近いと言えます。それなのにもかかわらず、権利の濫用という言葉が存在します。ある意味、私的自治と真っ向から対立する概念のようにさえ読めます。

日本の民法第1条第3項は、「権利の濫用は、これを許さない。」と定めています。この規定の前には、「私権は、公共の福祉に適合しなければならない。 」(民法第1条第1項)と「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。 」(民法第1条第2項)が定められています。従って、第1条第3項がわざわざ権利の濫用の禁止を定めたのは、公共の福祉や信義誠実の原則ではカバーできない領域に対応するためと考えられます。

この権利の濫用の禁止は、権利の行使には、自ずと限界があるという言いかえることもできます。この内容の規範は、古くはローマ法にその起源があるようです。大学時代のローマ法の参考書を引っ張りだすと、以下のようなラテン語の格言があります。なお、訳は、いずれも柴田光蔵先生の本に依拠しております。

Male jure nostro uti non debemus.(私たちは自身の権利を悪く用いてはならない。)
Sic utere tuo ut alienum non laedas.(君が他人のものを害しないようにして、君は君自身のものを利用せよ。)


一文目は、古代ローマの法学者ガーイウスが個人的に作成した講義用の命題であり、二文目は、古代ローマよりもずっと後の時代に生まれてきた格言的命題であるようです。

このような格言がある一方で、次のような格言もあります。

Nullus videtur dolo facere, qui suo jure utitur.(自身の権利を用いるものは、悪意で行動するものと考えられない。)
Qui jure suo utitur, nemini facit injuriam.(自身の権利を用いる者は、誰に対しても不法侵害をなさない。)
Suo jure uti nemo prohibetur.(自身の権利を用いることは誰にも禁じられない。)


一文目は、古代ローマにおいて、ローマ法の原則となっていたもので、最終的には6世紀の法典編纂のさい法文化されたものとのことです。二文目三文目は、上記の二文目と同じく、古代ローマよりもずっと後の時代に生まれてきた格言的命題であるようです。

前者が衡平(equity law)の見地や具体的妥当性を加味する立場であるのに対し、後者は法規範の絶対性を前提とする立場であると分類できるでしょう。柴田光蔵先生の解説によると、1000年もの長いローマの歴史でさえ、変遷があり、本来は、後者のように、(本来は家長だけが保有していた)支配権は、理念的、法的、タテマエ的には絶対のものとされていたものの、共和制末期ぐらいから弁論術(レトリック)が盛んになり、かりにちゃんとした権利を主張するにしても、その行使の態様しだいでは、それが衡平の見地から見て非難されるべきものとなる、という考え方が生まれたとのことです。

弁論家、政治家であり、法律にも精通していたキケロの名言「Summum jus, summa injuria.(最高の正は、最高の不正である。)」には、厳格な法治主義、タテマエ主義への批判も含まれているようにも読めます。キケロはこのような問題意識で、衡平(equity law)の見地や具体的妥当性を加味するための弁論術の世界を生み出していったのかもしれません。

どうやらヨーロッパ史でも、これらの変遷があったようであり、個人主義を強調することにより、私権を絶対視する後者の立場に近づいたようですが、あまりにも権利本位、権利中心に法体系を組み立てると社会に矛盾が生じてくることになり、前者のような濫用をチェックする方向となり、基本原理化していったようです。

一言で、権利の濫用といいましても、その歴史的な背景は長いものです。また、現代の日本でも認められている基本原理でもありますが、ご覧の通り、非常に曖昧な概念でもあり、恣意的な運用をすると、私的自治の原則を害することとなりますので、裁判所は、「権利の濫用」という法理論でもって、権利を制約する場合には非常に慎重に検討します。「権利の濫用」が濫用されることのないように運用されなければならないものでもあります。

昨日のエントリーをご覧になって、いざというときには「権利の濫用」で救ってもらえるかもしれないと考えるのは、危険です。まずは、予防、自衛が原則ですので、(相手に権利を発生させる法律行為に関連して)印鑑を押す場合は、リスクを認識し、わからなければ専門家に相談するよう心がけていただければと考えます。

2010年12月17日  6:30 AM |カテゴリー: その他, 企業法務 |コメントはまだありません

表題のテーマについて論じられた最高裁平成22年1月29日判決(金融・商事判例1348号21頁)について、金融・商事判例1354号2頁以下において、検討されています。

この事例は、企業グループ内において、企業グループに属する会社への融資を目的とする会社Xが、企業グループの末端にある会社に貸し付けた際に、その会社の代表取締役Y個人が連帯保証した場合に、XがYに対して保証債務の履行を請求することが、権利の濫用に当たるとされた事例です。

代表取締役に対する(会社債務の)保証債務の履行請求が権利濫用に当たり無効とされる事例は、そう多くはないと思われますので、備忘のために、紹介します。

本事例の特徴は、以下の点です。

・請求時において、Yが代表取締役を務めていた会社は、すでに事業を停止している状況にあった。
・企業集団に属する各社が、Yが代表取締役を務めていた会社から顧問料等の名目で収入を得ていた。
・Yは、僅かな期間同社の代表取締役に就任したとはいえ、経営に関する裁量がほとんど与えられない経営体制の下で、経験も浅く若年の単なる従業員に等しい立場にあった。
・Yが代表取締役に就任した当時の同社は資金繰りが行き詰まるおそれがあった。
・本件貸付の条件が利息制限法違反等であった。
・保証契約締結を拒否することが事実上困難な立場にあった。


これらの要素を勘案して、保証債務の履行請求は、権利の濫用に許されないと判断されています。

権利の濫用は、民法第1条第3項に定められた一般法理です。このような一般法理が適用されるためには、個別具体的な状況を丹念に検討して、論じていくしかありません。本件は、企業集団によって、集団の末端企業から利益を搾取していたとさえ評価し得る事例のようであり、その末端企業の名目的取締役に対し、連帯保証契約の履行を迫った場合につき、権利濫用と判断されています。権利濫用を主張する側(本件では、Y側)は、上記のような諸要素を丹念に主張・立証する必要があります。

金融・商事判例1354号2頁以下において指摘されているように、同一の法律関係であっても、訴訟当事者や利益状況等の個別具体的事情が異なる場合にも、同様の結論が得られるかは必ずしも明確ではありません。本判決を実務にフィードバックすると、企業経営者は、名目的取締役に一方的に不合理に大きな責任を負わせることを避けるべきと言えるでしょう。また、名目的取締役の立場に立たされた場合は、納得のできない債務等に同意しないことは勿論ですが、仮にそのような債務等に応じてしまっても、あきらめずに闘うことにより、本判決のように債務から免れることもあり得ますので、あきらめずに闘うことも頭の片隅においていただければ、と考えます。

2010年12月16日  6:30 AM |カテゴリー: ベンチャー・ビジネス, 企業法務 |コメントはまだありません

企業の資金調達には、大きく分けると、Debt(お金を借りる)とEquity(株を発行するのと引き換えに投資してもらう)の2種類があり、ベンチャー企業においては、一般的にEquityの方が適していることについては、以前のエントリー「ベンチャー企業のファイナンス方法の選択」 や、「大学発ベンチャーのとるべき行動」で述べたとおりです。(他の資金調達方法としては、資産を売却・証券化する等して、資産を現金化する手法も考えられますが、資産がほとんどないベンチャー企業では、現実的ではありません。また、ベンチャー企業であっても、ビジネスモデルや業態によっては、適度にDebtを加えることが望ましいケースもあります。)

では、実際のベンチャー企業が大量の資金を必要とするビジネスを展開する場合は、実務的には、どのような手法が採られるのでしょうか。言い換えると、ベンチャー企業側は、より多くの資金を投資家からコミット(約束)してもらうために、どのような提案をするべきでしょうか。なお、ここで言う大量の資金を必要とするビジネスの展開というのは、主に10億から100億を超えるレベルの資金調達をビジネスがほとんど始まっていない計画段階で調達するケースを念頭に置いています。

アーンアウト条項はその場合の1つの解になるでしょう。商事法務No.1917(2010年12月5日号)の35頁の「アーンアウト条項における検討事項」(弁護士松浪信也先生)によると「アーンアウト(Earnout)条項とは、買収対価の一部支払を買収取引の実行(クロージング)後一定の期間内に、対象事業が特定の条件を達成することに条件づけ、当該事項が発生するまで遅らせる条項をいう。」と定義されています。

具体的に言うと、投資実行時に最終的に120億円を投資することを約束する場合において、(すぐに全部を投資するのは不安だし、インセンティブをつけるためにも)そのうち60億円は、すぐに投資するけれども、残りの60億円のうち、30億円は、商品Aが完成して、市場に出た段階で払い込み、残りの30億円は、Bという発明について特許権として登録された段階で払い込むという約束をするケースになります。こういった達成目標は、「マイルストーン」等と呼ばれることがあります。

実務的には、株式引受の約束だと、株価の問題(有利発行や税務上の問題)があるため、予め新株予約権を発行した上で、投資契約にて新株予約権の行使について合意することが多いでしょう。(なお、ベンチャー企業では一般的ではありませんが、Debt Financeでも、しばしばマイルストーンが設定され、マイルストーンを達成する毎に融資枠(コミットメントライン)が増えるといった契約が締結されることがあります。)

上記論文では、M&Aが念頭に置かれているようですが、M&Aだけではなく、VC(ベンチャー・キャピタル)から事業会社への投資でも、しばしばこのようなアーンアウト条項はみられます。もっとも、日本では、Earnout Agreement を別途締結するより、投資契約や株主間契約の中で、規定されることが多いように思います。ちなみに、以前ご紹介した「DeNA社による米国のゲーム開発会社の買収」でもアーンアウト条項が用いられています。

特に、バイオベンチャーへの投資に多く見られるアーンアウト条項(「新薬の申請の認可」等)ですが、IT系や製造業系等の事業会社でも、利用し得るものです。1つの資金調達方法として、知っていると、それだけで資金調達の幅や金額がぐっと広がるかもしれません。 このあたりは、CFOの力量とも言えますので(参照「ベンチャー企業のCFOとは」)、是非、ご検討いただければ幸いです。

2010年12月15日  6:30 AM |カテゴリー: 未分類 |コメントはまだありません

以前、「ベンチャー企業と独占禁止法」というタイトルのエントリーを作成させていただきました。

これに関連して、公正取引委員会が本年11月30日に、「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」と題する書面を公表しています。

「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」の公表について
別紙1
別紙2
参考
(いずれもPDFファイルです。)


上記のエントリーでもお伝えしたように、中小企業やベンチャー企業であっても、独占禁止法が関連するケースがあり、特に、不公正な取引方法のうち、取引拒絶,排他条件付取引,拘束条件付取引,再販売価格維持行為,優越的地位の濫用といったケースは、自社が犯してしまう可能性もあり得ますし、自社が相手方の立場に立たされることももあり得ます。契約の条文の中に該当するものがあるかもしれない場合や、相手方の立場に立たされているかもしれないといった場合には、一度、弁護士に相談してください。

念のため、独占禁止法第2条第9項及び不公正な取引方法(昭和五十七年六月十八日公正取引委員会告示第十五号)を掲載します。

【独占禁止法第2条第9項】
この法律において「不公正な取引方法」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。


一 正当な理由がないのに、競争者と共同して、次のいずれかに該当する行為をすること。

 イ ある事業者に対し、供給を拒絶し、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限すること。

 ロ 他の事業者に、ある事業者に対する供給を拒絶させ、又は供給に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限させること。


二 不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもつて、商品又は役務を継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの


三 正当な理由がないのに、商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することであつて、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの


四 自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、次のいずれかに掲げる拘束の条件を付けて、当該商品を供給すること。

 イ 相手方に対しその販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその他相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束すること。

 ロ 相手方の販売する当該商品を購入する事業者の当該商品の販売価格を定めて相手方をして当該事業者にこれを維持させることその他相手方をして当該事業者の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束させること。


五 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次のいずれかに該当する行為をすること。

 イ 継続して取引する相手方(新たに継続して取引しようとする相手方を含む。ロにおいて同じ。)に対して、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること。

 ロ 継続して取引する相手方に対して、自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること。

 ハ 取引の相手方からの取引に係る商品の受領を拒み、取引の相手方から取引に係る商品を受領した後当該商品を当該取引の相手方に引き取らせ、取引の相手方に対して取引の対価の支払を遅らせ、若しくはその額を減じ、その他取引の相手方に不利益となるように取引の条件を設定し、若しくは変更し、又は取引を実施すること。


六 前各号に掲げるもののほか、次のいずれかに該当する行為であつて、公正な競争を阻害するおそれがあるもののうち、公正取引委員会が指定するもの

 イ 不当に他の事業者を差別的に取り扱うこと。

 ロ 不当な対価をもつて取引すること。

 ハ 不当に競争者の顧客を自己と取引するように誘引し、又は強制すること。

 ニ 相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもつて取引すること。

 ホ 自己の取引上の地位を不当に利用して相手方と取引すること。

 ヘ 自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引を不当に妨害し、又は当該事業者が会社である場合において、その会社の株主若しくは役員をその会社の不利益となる行為をするように、不当に誘引し、唆し、若しくは強制すること。

 
【不公正な取引方法】

(共同の取引拒絶)
1 正当な理由がないのに、自己と競争関係にある他の事業者(以下「競争者」という。)と共同して、次の各号のいずれかに掲げる行為をすること。
 一 ある事業者から商品若しくは役務の供給を受けることを拒絶し、又は供給を受ける商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限すること。
 二 他の事業者に、ある事業者から商品若しくは役務の供給を受けることを拒絶させ、又は供給を受ける商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限させること。


(その他の取引拒絶)
2 不当に、ある事業者に対し取引を拒絶し若しくは取引に係る商品若しくは役務の数量若しくは内容を制限し、又は他の事業者にこれらに該当する行為をさせること。


(差別対価)
3 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号。以下「法」という。)第二条第九項第二号に該当する行為のほか、不当に、地域又は相手方により差別的な対価をもつて、商品若しくは役務を供給し、又はこれらの供給を受けること。


(取引条件等の差別取扱い)
4 不当に、ある事業者に対し取引の条件又は実施について有利な又は不利な取扱いをすること。


(事業者団体における差別取扱い等)
5 事業者団体若しくは共同行為からある事業者を不当に排斥し、又は事業者団体の内部若しくは共同行為においてある事業者を不当に差別的に取り扱い、その事業者の事業活動を困難にさせること。


(不当廉売)
6 法第二条第九項第三号に該当する行為のほか、不当に商品又は役務を低い対価で供給し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること。


(不当高価購入)
7 不当に商品又は役務を高い対価で購入し、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあること。


(ぎまん的顧客誘引)
8 自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について、実際のもの又は競争者に係るものよりも著しく優良又は有利であると顧客に誤認させることにより、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引すること。


(不当な利益による顧客誘引)

9 正常な商慣習に照らして不当な利益をもつて、競争者の顧客を自己と取引するように誘引すること。


(抱き合わせ販売等)
10 相手方に対し、不当に、商品又は役務の供給に併せて他の商品又は役務を自己又は自己の指定する事業者から購入させ、その他自己又は自己の指定する事業者と取引するように強制すること。


(排他条件付取引)
11 不当に、相手方が競争者と取引しないことを条件として当該相手方と取引し、競争者の取引の機会を減少させるおそれがあること。


(拘束条件付取引)
12 法第二条第九項第四号又は前項に該当する行為のほか、相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取引すること。


(取引の相手方の役員選任への不当干渉)
13 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、取引の相手方である会社に対し、当該会社の役員(法第二条第三項の役員をいう。以下同じ。)の選任についてあらかじめ自己の指示に従わせ、又は自己の承認を受けさせること。


(競争者に対する取引妨害)
14 自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある他の事業者とその取引の相手方との取引について、契約の成立の阻止、契約の不履行の誘引その他いかなる方法をもつてするかを問わず、その取引を不当に妨害すること。


(競争会社に対する内部干渉)
15 自己又は自己が株主若しくは役員である会社と国内において競争関係にある会社の株主又は役員に対し、株主権の行使、株式の譲渡、秘密の漏えいその他いかなる方法をもつてするかを問わず、その会社の不利益となる行為をするように、不当に誘引し、そそのかし、又は強制すること。

2010年12月14日  6:30 AM |カテゴリー: 未分類 |コメントはまだありません

ベンチャー企業の経営には、ベンチャー企業特有の苦労も少なくはありません。ベンチャー企業の数ある苦労の1つは、人材の確保でしょう。

「優秀な人を雇いたいがお金が足りない。」という場合、経営者は、どうすべきでしょうか。ストックオプション(新株予約権)がその1つの方法であることは以前のエントリー「ベンチャー企業のモチベーション2.0 ストック・オプションの話(1)」「ベンチャー企業のモチベーション2.0 ストック・オプションの話(2)」で、書かせていただいたとおりです。

あるIT業界で有名な方が、ベンチャー企業の経営者に向けて、「自分より優秀な人を自分より高給で雇って下さい。」ということをおっしゃっていました。これこそが日本のベンチャー企業が抱えている問題を解決する1つの方策である、と。そして、同時に、「社長には、エクイティーがあるのだから。」ということもおっしゃっておられました。社長はエクイティーで稼げるのだから、役員報酬は多くをもらう必要はないでしょう、ということです。

このエクイティーとは、具体的には、何でしょうか。

1つは、会社が発行した株式であり、もう1つは、会社が発行した新株予約権です。

できる限り、優秀な人材への給料を高くしてあげることは大事です。ただ、現金の支出を伴うとなると、そこはやはりベンチャー企業であり限界があることが少なくありません。そこで、役員や従業に対するモチベーションとして用いられるのが、エクイティーであるストックオプション(新株予約権)です。そこで、今回は、新株予約権の実務において、よく問題となる税制適格を取り上げます。

従業員に株式を与えるためには、その従業員からお金を支出してもらわなければなりません。ベンチャー企業では、(従業員)持株会という形で会社の株式を保有していることが多いと思います。一方、新株予約権の付与は、無償発行が可能ですので、従業員の負担がありません。

新株予約権の付与は、上場したり上場企業等に会社が買収されたりするときに、行使価額と時価の差額分の利益が現金化可能になります(買収時の現金化の可能性については、要項や契約内容によります。また、社長等の経営陣については、インサイダー規制等の関係で、行使及び株式売却のタイミングが難しいことがあります。)。

この新株予約権を発行する際に、重要なのが、税制適格(租税特別措置法第29条の2)です。税制適格の詳細な内容及び効果については、ここで述べることは割愛しますが、効果面では、税制適格がないと、新株予約権を行使して株式を取得した時点で、課税対象となり、まだ現金化できていないのに、税金を払わないといけないという事態になるリスクがあると認識しておいていただければよいかと思います。

税制適格の主要な要件には、以下のものがあります。

・新株予約権の1株当たりの権利行使価格は、付与契約時における株式時価以上であること。
・当該新株予約の権利行使は、付与決議の日後2年を経過した日から当該付与決議の日後10年を経過する日までの間に行わなければならないこと。
・付与対象者は、発行会社・その子会社の取締役・執行役・使用人・権利承継相続人であること。
・大口株主及び当該大口株主の特別関係者(親族や配偶者など)でないこと。
・当該新株予約権の行使に係る権利行使価額の年間の合計額が、1,200万円を超えないこと。


社長については、大口株主(上場株式等:1/10超、それ以外:1/3超)に該当してしまうことが少なくありませんので、注意が必要です。別途、有償ストックオプションの付与等を検討することになります。

また、当初、税制非適格ストックオプション契約を締結しており、それを後から税制適格を満たす内容の契約に変更したとしても、税制適格が受けられず、すなわち、租税特別措置法第29条の2の規定を適用して、株式の取得による経済的利益を非課税とすることはできませんので、注意が必要です。

ストックオプション契約の内容を税制非適格から税制適格に変更した場合

http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/shotoku/02/28.htm


従って、新株予約権を発行する場合は、要項等が会社法を満たすかどうかを専門家にチェックしてもらうほか、付与契約の内容が税制適格に合致しているかを検討する必要があります(本来は受け取る側(役員や従業員)がチェックすべき問題ですが、会社の主要な役員や従業員に税務問題が発生することは発行会社にとってもリスクですので、発行会社側でもチェックしておいた方がよいでしょう。)。後から変更することはできず、再度、新株予約権を出すとなると、新しい時価(多くの場合、上昇している)を行使価格として、発行する必要がありますので、メリットが減ってしまうことにもなりかねません。

くれぐれも新株予約権については、発行する側も取得する側も慎重にご検討いただければ幸いです。

2010年12月13日  6:30 AM |カテゴリー: 未分類 |コメントはまだありません
 
   
2010年12月
« 11月   1月 »
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  
 
 
 
 
 
 
お問い合わせはお気軽に/06-6228-0505
サイトマップ
ベンチャー法務の部屋
 

RSS

HOME事務所紹介弁護士紹介採用情報所在地本サイトの利用条件プライバシーポリシーサイトマップお問い合わせ

COPYRIGHT2010 ©, 山本・森・松尾弁護士事務所 All Rights Reserved.