森法律事務所
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以前のエントリーでご紹介した『ガズーバ!―奈落と絶頂のシリコンバレー創業記』という本の中に、シリコンバレーで創業したベンチャー企業がベンチャー・キャピタルからの資金調達に成功した後、ベンチャー・キャピタルの担当者からお金の使い方について、指導されるというシーンがあります。
 

「金の使い方が遅い!」と叱られる

昔は投資の目的は「Preservation of Capital」、すなわちインフレで資産が目減りしないようにするのが目的だった。でもVCの投資目的は違う。だから「目的遂行のためにしっかり金を使え! 使ってないってことは何かがおかしい!」という具合になる。必要なコンサルタントはどんどん雇って、プロジェクトをとにかく前へ前へと進めなければならない。(引用終わり)

 
ここには、株式で資金調達した会社やベンチャー・キャピタルからの出資の大きな特徴が出ているように思います。勿論、やみくもにお金を使うことが奨励されているわけではありません。しかし、経営者が自分でコツコツ地道に時間をかけてプロジェクトを進める代わりに、お金を使って効率よくスピードアップする(そして、チャンスを逃さない)ことがこのような世界では求められているように思います。一歩進んで言うなれば、資本効率について、常に株主から強く意識させられているということでしょうか。

この本では、実に様々なコンサルタントが登場します。著者の大橋禅太郎さんは、そのうち1人の会議を効率的に進めるためのコンサルタントから受けたレクチャーを基に、『すごい会議-短期間で会社が劇的に変わる!』という本を出して、その内容でコンサルティングをされている程です。他にも、マーケティング・コミュニケーション、CFO、総務、広報、人材採用と、様々なレンタル人材や、ネーミング、ロゴ、法律家等のコンサルタントが出てきます。こういった人材レンタル文化、コンサルタント文化もシリコンバレーのスタートアップ・サポートの生態系の1つといえるのでしょうね。

日本の製造業系のベンチャー企業で、技術や商品のアイディアは良いが、その他の分野(マーケティングやブランディング、総務、知財戦略から経営そのものに至るまで)はカバーできていないというケースが時々みかけられるように思います。このようなケースでは、極端な話、他からCEOやCFO、その他のプロフェッショナルをレンタルし、創業者兼技術者は、一旦、CTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)等になることも含めて、検討することにより、道が開けることがあるのではないでしょうか。第三者がこのようなことを申し上げるのは筋違いのことも少なくないですが、一度、思考実験だけでもして頂いて損はないかと思います。

2010年10月29日  11:45 AM |カテゴリー: ベンチャー・キャピタル, ベンチャー・ビジネス |1件のコメント

以前から話題に上ることは多かったですが、最近、IFRSについての話題がかなり増えてきたように思います。基本的には会計基準の変更ですので、対応するための費用を除いては、将来のキャッシュフローが変わるわけではありませんので、企業価値自体に直接影響を与えるわけではないですが、IFRS対応後の財務諸表に慣れるという意味では、今から、上場企業の財務担当者のみならず、経営者や投資家は避けて通ることができない話題なのでしょう。

IFRSは、より実質を優先した内容となっており、私が読んだ本の中で、尊敬する会計士の武田雄治先生が執筆された『あっ、そういうことか!IFRSガイド』という本が一番わかりやすく、理解が進みましたので、この場でお薦めさせていただきます。

この本の中では、IFRSの特徴として、以下の8つが挙げられています。

(1) 原則主義(プリンシプル・ベース)
(2) 詳細な注記開示
(3) 比較可能性の重視
(4) 資産負債アプローチ
(5) 経営者の恣意性の排除
(6) 経済的単一体説
(7) 実質優先思考
(8) 演繹的アプローチ

このうち極めて重要なのが、(4) 資産負債アプローチ と、(6) 経済的単一体説 です。

これまでの日本基準の「収益費用アプローチ」から、IFRSの「資産負債アプローチ」への転換は、劇的かもしれません。収益-費用で純利益を算出していた世界から、期末純資産-期首純資産によって、包括利益を算出する世界に移行するということだと思われます。また、そもそもの資産の概念や負債の概念も、将来のキャッシュフローをベースとした実質的なものに変容されているようです。

(6)経済的単一体説とは、連結の基礎概念を、持ち株基準ではなく支配力基準とする変容を意味するとのことです。法律家の私は、「既に日本の会社法ではある意味、支配力基準ではないか」と考えてしまいましたので、初めて聞いた時にあまり大きなインパクトはなかったのですが、財務諸表を作成する側からすると、いろいろと大変な問題が生まれてくるのかもしれない等と考えます。

IFRSへの移行は日本の財務関係者には大変な重石となることが予想されますが、一方で経営面においては、キャッシュフローを重視した経営がさらに求められることを意味しているように感じました。

【追記:2010/11/01】 上記のエントリーの後、武田先生から『IFRSを理解するためには「資産負債アプローチ」と「経済的単一体説」の理解が極めて重要!』とのエントリーにて、コメントをいただきました。こちらも紹介させていただきます。

2010年10月28日  8:00 AM |カテゴリー: その他 |1件のコメント

 
昨日は、池銀キャピタル様の御主催の勉強会にて、「IPOを目指す会社の法務上の留意点 ~反社会的勢力排除を中心に~」という題でお話をさせていただきました。

 
本当に大勢の方にお越しいただきまして、ありがとうございました。前半のトピックであるIPOを目指す会社の法務上の留意点につきましても、後半の反社会的勢力等への対処につきましても、とても熱心に聞いていただくことができ、大変やりがいがありました。お話をお伺いしていますと、各社、各機関とも、それぞれの論点でいろいろなお悩みをかかえておられるということがわかり、私も大変勉強になりました。池銀キャピタル様を始めとして、お越し下さった皆様にこの場を借りて、御礼申し上げます。

 
今後も、11月18日に契約書についての講演が予定されており、また、12月にも契約書関連の講演の予定(詳細はまたこのHPで告知させていただきます。)がありますので、ご興味のある方は、是非ご参加いただければ幸いです。

2010年10月27日  7:00 PM |カテゴリー: ベンチャー・ビジネス |コメントはまだありません

今月25日月曜日に、「20代起業家の本音 「i世代」座談会 「ネットのチカラ」第3部 冒険者たち(1)」(2010/10/25 7:00 情報元 日本経済新聞 電子版)
という日経の特集がありました。


 

――創業時の資金はどう調達したのか。

石原氏 親せきを土下座して回った。ベンチャーキャピタルからの調達は考えなかった。経済産業省の外郭団体からも支援を受けられた。エンジェルとして資金を出してくれる人もいた。


――多くの大学で「起業サークル」がブームと聞く。

石原氏 僕には「起業ごっこ」にみえる。そういうサークルの学生も最終的には大手企業に就職している。起業しようという人はサークルなどに行かずとっくに起業しているのではないか。


――日本は「失われた20年」ともいわれ、経済に元気がない。

柿山氏 月に1回海外に行くが、中国やインド、シンガポールに行くと人々の目つきが全然、違う。世界を変えよう、負けたくないという雰囲気がある。日本の学生の友人にはそれがない。挑戦しようという環境がない。そこを変えないと成長できない。これからは個人がインターネットでエンパワーされる(力を身につける)時代だと思う。

石原氏 少子高齢化は避けられない。だが、企業にできること、日本発でできることがあるのではないか。海外で通用するサービスをつくり、外貨をとってくることが大事だ。負けてはいられない。われわれにはウェブという共通言語がある。どこの国にも共通の土俵だ。そこで戦うことで雇用も生まれ、新しい産業になる。日本はもちろん世界を変えるサービスをつくりたい。

柿山氏 日本の商品、人間性、文化は世界で認められている。なぜ積極的に外に出て行かないのかと思う。

石原氏 外に出る発想を教育されていない。米国では小さいころからビジネスやお金の使い方まで学ぶ。日本の学生はお金の使い方も分からない。かつての高度経済成長、バブルの流れを変えずにきてしまった。親の世代も今後の世界の流れを読めず、子供に教えられない。それを変えるのは教育の問題だ。


――起業家として何をめざすか。

石原氏 日本でのIPO(株式公開)は考えていない起業家が多いと思う。具体的に話題になるのは韓国など海外での上場だ。海外企業に買収されることも、タイミングがあえば選択肢になる。事業がある程度順調にいけば資金もたまるはずで、そうなればエンジェルとして起業家を支援する側に回りたい。(引用終わり)

 

等と非常に興味深いやりとりがあります。

最後の、なぜ日本での上場ではなく、海外での上場を考えるに到ったかという点も、大いに興味をそそられます。

一方で、「クリック証券、韓国上場を中止 環境悪化で株主反対」(日本経済新聞2010/10/20 1:11)というニュースもありました。

インターネット証券のクリック証券が韓国取引所(KRX)への上場計画を中止したことが分かった。6月に上場承認を得ていたが、「韓国市場で証券関連株が低迷を続けており、十分な資金調達ができない」と大株主が反対したという。高島秀行社長は「今後当面はどの市場にも上場せず、別の資金調達手段を考える」としている。(引用終わり)


海外上場には、資金調達額が大きくなる可能性があるというメリットがある半面、日本と現地の双方の証券会社、監査法人、法律事務所等が上場に関与し、また、現地の証券取引法に基づく開示を行わなければなりませんので、継続開示についても会計や証券取引法の分野でコストがかかるというデメリット等が考えられます。他にも、(是非はともかく)株主に外国人投資家の比率が大きくなる等が考えられます。よほど前者のメリットの方が大きくないと選ばないのではないかとも思うのですが、やはりそれだけ内外の市場の熱の差があるのでしょうか。

とはいえ、20代起業家が世界市場を意識してビジネスを展開するという志を持っておられるのは、本当に頼もしい限りです。大きな会社から中小企業・ベンチャー企業まで、様々なタイプの企業が、世界を相手に新しいビジネスを生み育てていく土壌がこれからも醸成されていけばよいな、と思います。

「企業の法務部門の役割(1)」の続きです。

今回は、特に外部に相談した方がよいケースを掘り下げて考えてみます。

(6) 知的財産権が関連している場合

多くのIT企業がシステム等を内部で作るか、外注するかという判断をすることがあります。知的財産権の帰属が関係する開発委託契約は、その製作の過程で生じた知的財産権の帰属について予め明確にしておいた方がよいです。特に重要なシステムを外注する場合は、重要です。また、受託する場合も同様です。

ビジネスモデルが特許と深くかかわっているケース、特に産学連携や大学発ベンチャーの場合や研究開発が中心の会社の場合、特許権が誰に帰属するかという問題は重要です。共同開発契約において、特許権の帰属は重要となりますので、運用・管理の方法も含めて、外部の法律の専門家に相談しておいた方が安全です。

(7) ネットを通じて不特定多数と取引する場合

まず、本人確認をした上で、その後の本人に有効に効果帰属させる必要があります。また、各項目について消費者契約法等を踏まえ、有効な内容としておく必要があります。少なくとも電子商取引に関する準則に準拠した内容にしておく必要があります。

(8) 下請法等の法律により契約書を作成することが義務付けられている場合

外注するケースで下請事業者の方が規模が小さいケースでは、下請法が適用される場合(公正取引委員会のHPhttp://www.jftc.go.jp/sitauke/index.html参照)があります。昨今問題になるのは、個人のシステム・エンジニアに業務委託する場合にこの法律が適用される可能性がある場合がありますので、要注意です。

(9) 広義の資本取引

資本取引については、会社法上の有効性や税務上のリスクを検討した上で、金融商品取引法で有価証券届出書の提出が必要とならないようにすること等が必要となります。また、登記が必要となることがほとんどです。新株予約権の発行や種類株式の発行の場面では、登記申請まで併せて弁護士に依頼するケースも多いです。

(10) 将来の開示書類に、「重要な契約」として記載することとなる可能性が高い場合

上場企業の有価証券報告書をご覧いただければわかるとおり、開示書類には、【経営上の重要な契約等】として、重要な契約を列挙し、概要を記載します。具体的にどのような契約を定めるべきかは、開示府令(企業内容等の開示に関する内閣府令)というものに規定されていますが、およそ「事業の全部若しくは主要な部分の賃貸借又は経営の委任、他人と事業上の損益全部を共通にする契約、技術援助契約その他の経営上の重要な契約」は、対象となります(他にも対象となる契約はあります)。

したがって、概要が開示されることを前提に、契約期間や解除条件を含めて、契約文言を詰めておく必要があります。

さらに、(契約書の有無にかかわらず)契約の締結自体が何らかの法律に反する可能性があることもあります。こればかりは、その法律を知らないと、そもそも危ないかどうかすら気づきませんので、当然、外部に相談するというオプションも採ることができません。したがって、ベンチャー企業・中小企業の役員の方々に、その感度を磨いていただく必要があります。そして、危ないかもと思ったら、すぐに弁護士に相談してください。法律相談だけであればリーガル・コストはほとんどかかりません。

よく法律に抵触しがち(で見落とされがち)なパターンとして思いつくあたりとしては、健康関連の表記→薬事法、お金を集める→出資法、法律事件処理・債権回収→弁護士法、規模の小さい事業者(個人のシステム・エンジニア等)への外注→下請法、有価証券の取引の仲介→金融商品取引法、マーケティングに懸賞を利用→景品表示法等です。これらの場合は、最悪のケースでは刑事罰が科せられることになりますので、これらの事業をする場合には、日頃から意識を高めておく必要があります。

他にも、ファイナンスもどきの循環取引等の会計的に危険な取引もありますので、外部の専門家と都度気軽に相談できる体制を保持しておくことは中小企業・ベンチャー企業の経営者にとっては重要です。

2010年10月26日  8:00 AM |カテゴリー: 企業法務 |1件のコメント

会社の法務部の役割については、契約実務に加え、コンプライアンス、内部統制への要請という観点から、ここ20年くらいで大きく変容してきました。ただ、この領域については、若輩の私が述べるよりも現場に即し、且つ優れた論文や雑誌の特集等があるので、そちらをご覧いただいた方がよいように思います。現役の法務担当者の方が書かれた最近のものとしては、NBL930号から935号にかけて掲載された「日本の契約実務と契約法」(三菱商事株式会社法務部・ニューヨーク州弁護士 小林一郎氏著)や、ビジネス法務12月号「機能する次世代「法務部長」の役割とは」(ソフトバンク株式会社法務部長 須崎將人氏著)等が挙げられます。

ただ、これらの特集は、大規模な企業が想定されていることも少なくなく、未公開企業や中小企業・ベンチャー企業の法務の現場ではなかなか適用するのが難しいかもしれません。

そこで、ベンチャー企業・中小企業が法務とどう向き合うかという問題を少し考えてみたいと思います。ただ、ベンチャー企業・中小企業と法務という問題は多岐にわたりますので、今回は、その中でも、契約実務に限って、検討します。

一般論としては、契約を締結する場合には契約書を作成した方がよいとされています。想定外のことが起きて紛争になった場合、債務不履行が生じた場合に、紛争を防止したり、迅速に債権回収することが目的の大部分でしょう。しかし、卸の業界や広告代理店の業界、伝統的な製造業の業界等で、長年の信頼関係のあるケースや業界慣行のあるケースでは、契約書がないのが当たり前で、その方が上手くいくとされていることは少なくありません。その多くの場合が、発注書と請書だけで取引が進むことや、口約束だけでビジネスがスタートしていることさえあります。これらの実務は、ある意味、効率的であり、経済合理性の観点から、わざわざ契約書を作成しなくても問題ないケースだと思われます。

とはいえ、どんなケースでも、契約書を作成しない方がよいなんていうことはありません。中小企業やベンチャー企業で契約書が必要であると考えられる場合を思いつくところで列挙してみたいと思います。

(1) 信頼関係が築けていない場合
(2) 予め不履行の危惧がある場合
(3) 契約内容の理解が一致できているか確信が持てない場合
(4) 取引金額が大きい場合
(5) 自社の秘密を提供する場合
(6) 知的財産権が関連している場合
(7) ネットを通じて不特定多数と取引する場合(プラットフォーム作成の場合を含む。)
(8) 下請法等の法律により契約書を作成することが義務付けられている場合
(9) 広義の資本取引(新株発行や新株予約権の発行、株式の譲渡や合弁契約、株式交換等のM&Aの場合)
(10) 【上場を目指す会社の場合】 将来の開示書類に、「重要な契約」として記載することとなる可能性が高い契約
(順不同)
等です。

ベンチャー企業や中小企業では、法務部がないケースがありますので、役員がどうするかを判断しなければなりません。選択肢としては、(a)契約書をつくらない、(b)社内で契約書を作る、(c)外部に契約書作成を依頼する(内部で作成して外部にチェックしてもらう)の3つが考えられます。

もちろん、上記の場合でも、常に(c)が適切ということではなく、ケース・バイ・ケースで対応することになります。一見、契約書が必要そうであるが、いざとなれば○○すればいいということもあるでしょう。金額で小さいので、何かあれば取引を打ち切ればよいだけというケース等です。一方、契約書を雛型的に利用する場合等、当初に一度、弁護士のチェックを経ておけば安心というケースもあるでしょう。

しかし、ベンチャー企業・中小企業の役員の方々には、(c)外部に契約書作成を依頼する(内部で作成して外部にチェックしてもらう)ことをお薦めする場合があります。それは、(6)知的財産権が関連している場合、(7)ネットを通じて不特定多数と取引する場合、(8)下請法等の法律により契約書を作成することが義務付けられている場合、(9)広義の資本取引、(10)将来の開示書類に、「重要な契約」として記載することとなる可能性が高い契約です。

いずれも後から修正することが厳しく、取り返しのつかないことになるケースが少なくないからです。

(次回に続く)

2010年10月25日  10:30 AM |カテゴリー: 企業法務 |1件のコメント

今日は、ベンチャーとも、法務とも全く関係のない雑感を。

私が大阪に来て、もうすぐ10カ月が経とうとしています。

この10カ月で、「東京と違うことは何ですか?」という質問を受けることが割とありました。勿論、多くはビジネスの話です。

ただ、時折、食の話にもなります。大阪と東京では、食文化がいろいろと異なります。その1つが「うどんとそば」です。

落語でも上方落語は「時うどん」ですが、これが江戸落語になると「時そば」となる程、うどんとそばは、大阪と東京の食文化に深く根付いているものでしょう。

私のような大阪出身の人間には、東京は、”うどん不毛の地”でした。うどんで満足した記憶がほとんどない。時折、美味しいうどんを食べても、何か不満だったように思います。もちろん、真っ黒なお汁に違和感があるというのもありますが、それだけではありませんでした。それが何なのか、東京にいる間にはわかりませんでしたが、大阪に来てから思い当たることがあります。

それは、大阪で「きつねうどん」を食べているときのことでした。大阪では、美味しい「きつねうどん」がどこでも安く食べることができるのです。それがあまりに日常的なので、大阪の人は余り意識できませんが、東京では、あの甘辛く炊いた大きいジューシーな「お揚げさん」を目にすることさえ難しいのです。きつねうどんを頼んでも、甘くない薄揚げがのっているだけのことも珍しくありません。万が一、ジューシーな揚げに出会ったとしても、高いお店だったりします。お洒落な感じで「きつねうどん」を食べたいわけじゃないんだけどな・・・という妙な違和感が残ることになるのです。

ただ、関東や東北の方から、「美味しいうどん屋さんを教えてほしい」というリクエストを受けて、返答に窮したことのある大阪人は、多いのではないかというのが私の推測です(私が知識不足で困っているだけかもしれませんが)。

わざわざ大阪まで来ていただいているのに、500円くらいのうどんをわざわざ行かなくても・・・と思わないわけでもない上に、「はて、オススメするとなれば、どこがええかいな?」となってしまうのです。とはいえ、「どこでもええから適当に入って、きつねうどん頼んでみはったら?」と言うわけにもいかず・・・といったところです。

先程の違和感や、上の質問に回答が詰まることを考えあわせると、大阪のうどん文化の基本は、500円前後(場所によっては2~300円)で、美味しい「きつねうどん」が食べられるというところにあるのではないかというのが私の仮説です。


ちなみに、小林カツ代さんの「おいしい大阪」 (文春文庫) という本の中には、「きざみときつね」というタイトルで、大阪のきつねうどんがこのように風に紹介されています。

関西と関東の違いといえば、よく引き合いに出されるのがうどん。(中略)大阪のうどんといえば、一番にあげられるのが、たぶんきつねうどんではないでしょうか。


きつねのお揚げさんを上手に炊くんは、なかなかむずかしいことです。お揚げさんは油抜きをしっかりせんと味がなじみません。うどん屋さんですと、長いことゆでて油を抜き、それからだし、しょうゆ、砂糖とみりんでゆっくりと味をふくませていきます。きつねうどんを日本ではじめてつくって出したという「松葉家」では、三回も四回も炊いてはさましを繰り返し、味をじっくりふくませています。それくらい手間がかかってるんですよ。せやからおいしいし、油っぽくないんですね。


とにもかくにも大阪のうどんはだしが決め手。どこの店でも昆布と削り節をたっぷり使って作ります。最後の一滴まで飲み干すのが、大阪のうどんつゆです。色は淡いがだしは濃く、つゆの味は「だし命」と言っていいほど、どんなうどん屋さんでも気をつかっています。(引用終わり)


そういえば、うどんの紹介先にこの本に出てきた「松葉家」さんを紹介先候補にすればよいのですね。でも、私は残念ながらまだ行ったことがなく、それ故お薦めすることができませんでした。近いうちに行ってみることにします。


一方、蕎麦については、(個人的な感想であることをお断りさせていただきますが)質と店舗数において、圧倒的に東京の方が良いのではないでしょうか。勿論、大阪にも美味しいお蕎麦屋さんはあります。ただ、東京では、やはり文化として、蕎麦が根付いているように思います。

東京に住んでいた期間にそれほど多くの蕎麦屋さんに行ったわけではないですが、それでもそれなりに行ったと思います。その中で、特に私のお気に入りは、「蕎麦小路さわらび」です。私の前の職場に近く、本当によくいっていました。近くには、最高裁判所や国会があるため、裁判所の職員や国会議員の方もお見かけしました。他の有名店より、私は好きでした。他の地域から出張で東京に行かれる方にもお薦めです。

2010年10月22日  3:30 PM |カテゴリー: その他 |1件のコメント

今回は、前回「投資契約書の株式買取請求権(1)」に引き続き、投資契約書の株式買取請求権を検討します。

前回の最後で、次回は株式買取請求権について、(2)(i)どのような条件で発動されるのか、(ii)誰が買い取る義務を負うのか、(iii)いくらで買うのか(株価)という点を検討する旨をお伝えしました。

ただ、その前に、投資契約書の実効的なペナルティーは、株式買取請求権以外にないのか、という点を少し検討します。

直ぐに思いつくのは、違約金条項です。ただ、違約金条項となると、投資契約を締結していた株主のみに会社がお金を渡すということになり、他の株主からの反発が避けられない上、株主平等原則との関係や特定株主への利益供与といった問題が払拭できません。また、会社が投資家に会社のお金を支払えば解決するという内容自体、ペナルティーとして機能するのかという根本的な問題もあります。

他のペナルティーも全く考えられないわけではありませんが、実質的な解決にならなったり、現実的ではないことが多いと思います。

では、株式買取請求権の規定について検討したいと思います。

(i)  株式買取請求権の発動要件

通常、投資契約違反、表明保証違反は株式買取請求権の発動の対象になります。投資契約において、投資のための条件(停止条件)が設定されている場合は、その条件を満たしていないことが後から判明した場合も含まれることが多いでしょう。

議論となるのは、株式を公開できるのに公開しない場合を対象にするか、さらには、投資家がファンドの場合、ファンドの満期が到来した場合を対象にするか、です。

「株式を公開できるのに公開しない場合」という要件は規定されたところで現実に発動するには困難な側面があることは否定できません。ただ、株式を公開できるのに、取締役会に公開しないという結論を出されてしまうと、投資家側としては投資した趣旨が損なわれます。有態に言えば、公開を目指すと約束したから出資したのに、話が違うではないか、ということです。この点は、公開を目指す努力義務違反という形で条文上は解消されるケースもあるでしょう。

ファンドの満期が到来した場合に発動するかという点も、議論の対象となります。ただ、多くのベンチャーキャピタルのファンドは組合(投資事業有限責任組合)であり、満期が設定されているのが通常です。満期が到来すると、ファンドの運営者(「GP」(General Partnerの略)と言われることが多い。)は、組合員(ファンドへの出資者。「LP」(Limited Partnerの略)と言われることが多い。)にその時点の資産を現金化して渡さなければなりません。しかし、ファンドの清算時に未公開株式が残っていると、誰かに買い取ってもらうより他ありません。このような事情が背景にあり、ファンドの満期が到来した場合も株式買取請求権の発動事由となっていることが少なくありません。この点、ファンドの性質からやむを得ない部分もあります。ただ、契約違反や表明保証違反と並列にするのは、会社や代表者には酷という考え方もあります。現実には、会社や代表者に落ち度がない場合は、(仮に規定上同じであったとしても)契約違反等がある場合と並列に取り扱われることは余りなく、ファンド側も無理を主張をせず話し合って解決していることがほとんどであると理解しています(私の認識ですので、違う場合もあるかもしれません。その点はご了承願います。)。

この点を以って、「これでは、代表取締役が銀行からの借り入れに連帯保証しているのと同じではないか」という批判があります((ii)に述べるように代表者が買取義務を負っている場合)。ただ、私が知る限り、現実的には、そのような取扱いは非常に少ないのではないでしょうか。会社が銀行からの融資が返済できない場合に、連帯保証人である代表者が個人破産するケースは、全然珍しくありませんが(ほぼ当然のこととして受け止められているように思われます。)、ファンドから出資を受けて、ファンドの満期までに上場できなかったという理由だけで、代表者を個人破産させるということは、私が知らないだけかもしれませんが、ほとんどないと思います。契約文言に対する批判としては理解できますが、実務は、そのような批判を十分理解した上でケース・バイ・ケースで運用されているように思います。

(ii)  株式買取義務者

株式を発行した会社が契約に違反した結果、株式買取請求権を発動することになったことを考えると、まず会社が買取義務を負うことが考えられます。ただ、会社が自ら発行した株式を買い取ることは、自己株式の取得です。となると、会社法に基づく自己株式の取得手続と取得限度額の規制が適用されます。取得限度額の規制とは、取得財源は「当該行為がその効力を生ずる日における分配可能額」を超えてはならないという意味ですので、利益が出ていない会社は減資等の手続をしない限りは取得財源を産み出すことが難しいことになります(さらに言えば、そもそも会社の買取義務自体の有効性について議論がないわけではないです。)。したがって、会社以外に買取義務者を定めておく必要が生じます。

そこで、通常は、会社の主要株主でもある代表者も買取義務を負う内容になっていることが多いです。会社の経営者としては、このような形で買取義務を負うことについては一見抵抗があるかもしれませんが、規定にはそれなりに投資家側の合理的理由がある部分もありますので、それらを理解しつつ、交渉していただければと考えます。

(iii)  株式買取請求における対価

株式買取請求権を現実的な権利とするためには、いくら支払うべきかが明確になっていなければなりません。この点を「協議で定める」等としておくと、実効力に欠けることになります。

実際には、いくつかの算出方法(投資時の株価、純資産法等)を列挙して、その中で最も高い金額とすることが多いのではないかと考えます。
 
 
検討は、以上となります。諸事情により、少し曖昧な表現にさせていただいた部分もありますが、ご容赦願えれば幸いです。

2010年10月21日  2:30 PM |カテゴリー: ベンチャー・ファイナンス |コメントはまだありません


今日は、ベンチャー企業がベンチャーキャピタル等の投資家から投資を受ける際に締結される投資契約書の最後の方に記載されている、株式買取請求権条項についてご説明させていただきます。

株式買取請求権とは、ある一定の条件が満たされた場合に、投資家が、「保有している株式を買い取れ」と請求できる権利を意味します。

ここで、検討すべきは、(1) なぜ投資契約書に株式買取請求権が規定されるのか、(2)(i)どのような条件で発動されるのか、(ii)誰が株式を買い取る義務を負うのか、(iii)いくらで買うのか(株価)、が問題となります。

投資契約書をご覧になった方はご存じのように、投資契約書は、投資に関する事項(発行する株式の種類や数、株価)だけではなく、表明保証条項や投資後に発行会社が順守するべき事項等が記載されています。会社や経営者は、当然、表明保証の際に嘘を述べてはなりませんし、順守すべき事項を守らなければなりません。ただ、現実には、表明保証の内容と異なる事実が判明するかもしれませんし、投資後、発行会社が順守すべき事項を守らないかもしれません。この場合、投資家は何が言えるのでしょうか。

もし、何も投資契約書に特別なペナルティー規定がない場合、考えられることは、何でしょうか。

修習生やロースクールの学生さんは、次のような問題が出題されたとして、一度ご自身で考えてみてください(どちらかといえば知識問題ですので、司法試験にはでないと思います。)。

未公開会社であるA社は、A社への投資を検討しているBさんに対し、『我が社は、反社会的勢力を交際をもったことは一度もない』と述べて、書面においてもその旨を表明し保証した。また、A社は、A社の経営に重要な施設であるP工場で事故が起きた場合、直ちにBさんに報告することを予め書面で確約した。Bさんは、これらのA社の表明保証及び確約を受けて、A社に投資することを決意し、A社の株式の割当を受け出資を履行した。


(1) 投資から1年経過後、Bさんは、A社が反社会的勢力を深くつながっている噂を聞いたため、調査したところ、A社の役員が反社会的勢力の構成員であることが判明した。また、A社の利益の一部が反社会的勢力に横流しされていることも判明した。しかも、いずれもBさんがA社の株式を引き受ける前からのことであった。Bさんが採り得る手段を述べよ。


(2) 投資後しばらくして、P工場が火災に遭い全焼した。しかし、Bさんがその報告を受けたのは、火災から1年を経過してからであった。Bさんが採り得る手段を述べよ。


(1)は表明保証違反の事実が発覚した事案です。表明保証違反が発覚した場合、通常では、民法上の錯誤無効か詐欺取消を主張することが考えられそうです。ただ、会社法第211条第2項によりこれらの主張は、「株主となった日から一年を経過した後又はその株式について権利を行使した後」には、できません。上記の設問では、この期間が経過していますので、無効や取消の主張はできません。(2)の報告義務違反は、債務不履行の問題です。債務不履行の問題は、基本的に解除か損害賠償が問題となります。しかし、解除は、新株発行を巻き戻す効力までは有しないと考えられます。また、損害賠償をするにしても、BさんはBさんが被った損害の内容及び金額を主張・立証しなければなりません。しかし、何が損害なのかは、非常に難しいです。報告をしなかったことにより、Bさんが被った損害とは、一体何でしょうか。報告の有無は、Bさんの株主としての地位には何ら変化を及ぼしませんし、報告の有無が株式の価値に変化を及ぼしたという主張も無理がありそうです。

すると、いずれの場合も実効的なペナルティーは、ないことになってしまいます。そこで、実務的にペナルティーとして、考案されたのが、株式買取請求権です。

これが投資契約書に株式買取請求権が規定される主な理由です。

次回は、株式買取請求権について、(2)(i)どのような条件で発動されるのか、(ii)誰が買い取る義務を負うのか、(iii)いくらで買うのか(株価)という点を検討します。

投資契約書は株式買取請求権以外にも重要なポイントがあります。ただ、その内容は幅広く、分量も多いため、とてもブログのみでは説明できせん。レビュー・解説等につきましては、別途ご相談いただければ幸いです

2010年10月20日  2:00 PM |カテゴリー: ベンチャー・ファイナンス |1件のコメント

法務と関係のない話題で恐縮です。最近、twitterのTL経由で、アントレプレナーシップを学ぶための素敵な動画を教えていただきました。御存じの方も少なくないかもしれないですが、紹介させていただきます。たった11分で、あなたの周りの世界に、可能性があふれていることに気付けるかもしれません(何かの自己啓発系の勧誘文句のようですね。。。)。

スタンフォード大学集中講義 May 27, 2009(このページの「動画を見る」の欄を参照)

講師は、『20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義』の著者で、スタンフォード大のTechnology Ventures Program の Executive Directorのティナ・シーリグさんです。情熱的でオープン・マインドな話し方が素敵ですね。「何もないところから何かを生み出すこと」「幸運は自分でつくれ」「努力は自分の意志でできることの1つでしかない」という言葉は、まさにアントレプレナーシップそのものです。

失礼ながら、誰の言葉だったか忘れてしまいましたが、タクシーに乗れば必ずタクシーの運転手さんといろんな話をするし、電車に乗れば隣の人に声をかけて(勿論迷惑のかからない範囲で)いろんな会話をするとおっしゃっていた経営者がいたことを思い出しました。常に、起業すること、事業を興すことが最も価値があると申し上げるつもりはありませんが、日々、身近な出来事や人との関わりに対して、もっと注意深く、興味を持ち、オープン・マインドでいることは、人生に様々な示唆を与えてくれるという指摘は、多くの人に有益なメッセージではないでしょうか。

2010年10月19日  2:00 PM |カテゴリー: その他 |1件のコメント
 
   
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