森法律事務所
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大阪イノベーションハブにて、『第7回SUEセミナー -ベンチャー企業のファイナンス 実務と法務から-』を開催することになりました。

起業家やベンチャー企業経営者が、エクイティー・ファイナンスをするときに、どのような点に留意して資本政策や投資家へのプレゼンテーションを行なえばよいか、投資契約書や投資手法の選択において気をつけるべきことがないかを解説します。
また、ベンチャー・キャピタリストである出口彰浩さんをお迎えして、実務上の観点や動向もお伝えします。

イベントの後には、ネットワーキングディナーを開催する予定です。
概要及び申込みは、こちらからご覧いただけます。

【日 時】 2016年3月15日(火) 18:00~20:00 (開場17:30)
【会 場】大阪イノベーションハブ(グランフロント大阪 ナレッジキャピタルタワーC 7階) 案内図(PDF)
【参加費】 2,000円(税込)
【ウェブページ】 http://startup-engine.com/event/846
【ネットワーキングディナー】 夜8時から、開催予定(参加費2,000円)(先着40名様)

お申し込みは、こちらからお願いします。

先週末、札幌で開催されていたIVSというイベントに出席させていただきました。

多くのSessionが開催され、大変、刺激的なイベントでした。

本当は、キューエンターテインメント社の水口哲也さんと慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授の稲見昌彦さんのクリエーター・トークや、関西外国語大学准教授のGarr ReynoldsさんのプレゼンテーションZENの話は、非常に面白く、勉強になるというか、それ自体が1つの素晴らしいエンターテイメントとして、成り立つ程でした。ただ、残念ながら、私には、その魅力を十分にお伝えすることはできませんので、この方々の講演に出席する機会がありましたら、参加することをお勧めします。

ちなみに、関連する本としては、今の水口哲也さんの問題意識に大きな影響を与えている「NHKスペシャル 世界ゲーム革命」と、Garr Reynoldsさんが著作された「プレゼンテーションzen」を挙げさせていただきます。

特に、後者は、講演や裁判員裁判等で、Power Point を利用しようと考えている弁護士にも、強くお勧めします。

さて、今回は、IVSの中で、取り上げられた「ベンチャーファイナンスの行方」というテーマについて、考えてみます。

スピーカーとモデレーターは、下記の方々です。
Speakers:
・磯崎哲也事務所 代表 磯崎哲也氏
・インキュベイトファンド 代表パートナー 本間真彦氏
・株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ パートナー 仮屋薗聡一氏
・DCM パートナー 伊佐山元氏
・UBS証券会社 株式本部株式調査部 エグゼクティブディレクター 武田純人氏
Moderator:
・インフィニティ・ベンチャーズLLP 共同代表パートナー 小林雅氏


1つの大きな問題意識は、“日本には、大粒のベンチャーがない”という点です。この問題点は、”もしGoogleの創業者2名(と全く同じ能力の人間)が日本のVCの前で検索エンジンの開発をやりたいといっていたら、Googleは日本に生まれたであろうか”という表現でも、問題提起されていました。

この問題点について、スピーカーの方は、いくつかの興味ある回答を用意されていました。1つは、起業の世界には、まだまだ人・金をマネージするイメージができている人がほとんどいないということです。単にお金を流し込めばよいのではなく、人・情報・ノウハウといったものを有機的に連携していく能力のある人が、経営者側・投資家側を含めて、まだまだ少ないという問題意識ではないだろうかと思います。数多くのイケている人が起業の世界に携わるようになれば、自然といい起業家も増えるのではないかという意見もありました。

もう1つの回答には、日本では、資金提供者が早く回収を望む傾向にあるのではないかということです。シリコンバレーのVCが期待されていることは、「次のGoogleを見つけてくれ」ということであり、中途半端な成功は求めていないということです。すなわち、シリコンバレーのVCの投資家にとっては、最初から売上を気にするようなベンチャーはそれはそれであってもいいけれども、魅力的な投資先ではないということだと思います。

ここで重要な点は、VCの背後にいるLPの存在です。LPとは、Limited Partner の略で、VCの運営するファンドに投資している投資家のことです。このLPの性格によって、必然とVCの性質が決定され、引いては、投資スタンスやVCの投資先に求めることが違ってくるということです。この点では、米国の投資家の方が長期的な視点で考えているのではないかと指摘されていました。

この点は、これからVCから資金の提供を受けようとするベンチャー企業にとっても、重要な視点だと思います。

上場(IPO)との関係では、未熟なまま上場することにより、経営の自由度が下がる一方で、上場のメリットを十分に得られていないケースも少なくないのではないかという指摘もありました。この点は、先ほどの日本の投資家の早期回収傾向とも関連しますが、時価総額数十億程度で、上場してしまうと、瞬間的に株価が上がってもその後は下がる一方ということも少なくなく、経営者にとっても、既存株主にとっても、新規株主にとっても、不幸なのではないかという指摘です。私には、その数字の当否は、わかりませんが、500億くらいになってからでないと、上場しない方が良いという指摘もありました。

ところで、日本には、自動車産業を筆頭に、多くのニッチ産業においても、製造業を中心に、世界市場で、大活躍している会社は少なくありません。しかも、製造業だけではなく、ファッションの世界、ゲームの世界のような、カルチャーに多くを依存していそうな世界でも、国境を越えて大活躍している会社があります。しかし、ネットの世界では、上記のような「大粒のベンチャーがない」という嘆きをきくことが少なくありません。これは、いったいどうしたことなのでしょうか。時代のせいなのでしょうか。カルチャーのせいなのでしょうか。シリコンバレーのVCが有能なせいなのでしょうか。失われた10年のせいなのでしょうか。このあたりは、最近の私の関心事であり、いくつか仮説はあるものの、確たるものはありません。今後の課題としたいです。

大変、ご無沙汰しております。諸事情により、更新が滞っておりました。

今日は、5月20日に開催予定の「Startup Engine 2011」というイベントについてのお知らせです。

来る5月20日の午後1時から、大阪中之島の国際会議場にて、「Startup Engine 2011」というイベントを開催させていただきます。

関西では、ベンチャーや起業に関連したイベントが少なくなりつつあるという話を聞き、全くの手弁当で、友人知人に声をかけて、志に賛同してくださる方々と立ち上げたイベントです。

今こそ、関西が頑張るべき時であるという声は少なくありません。関西は、古代から江戸時代や近代にかけて、起業や金融という意味では、最先端の地でした。今も、高い技術や志を持つ方が大勢いらっしゃいます。また、商人の地、大阪だけではなく、伝統と新しい価値が融合する地、京都、先端技術の拠点を持つ古都奈良、新しい文化とバイオベンチャー等のシードも多い神戸等、素晴らしい土地が近接しているという地の利があります。一方で、ここ数年、「最近の関西・大阪は元気がない」という言葉を聞くことも少なくありませんでした。

そこで、微力ながらも、関西でも、起業家精神とそれを支えるネットワークを構築するため、そして、その土壌を耕し続けるため、志を同じくする人と一緒に、関西、そして日本が、新しい産業のエンジンとなることを祈念して、「Startup Engine 2011」というイベントを開催させていただく運びとなりました。

新進気鋭の素晴らしいスピーカーに、お話をいただけることになっております。
僭越ながら、私も最後にお話をさせていただく機会を設けさせていただいています。


【日 時】 2011年5月20日(金)13:00〜17:30
【会 場】 大阪国際会議場
【後援・協力】 [後援]大阪証券取引所 [協力]株式会社 幕末
【セッション】
Session 1 ライフネット生命の挑戦

ライフネット生命保険株式会社 代表取締役副社長 岩瀬 大輔 様

Session 2 マイノリティのすすめ

日本マイクロソフト株式会社 コミュニケーションズ・セクター

クラウド・ソリューション営業部 統括部長 今井 早苗 様

Session 3 等身大の経営者が語るBuyout

株式会社オークファン 代表取締役 武永 修一 様
ジンガジャパン株式会社 ジェネラル・マネージャー 山田 進太郎 様
株式会社美人時計 専務取締役 早 剛史 様
株式会社アトランティス 代表取締役社長 CEO 木村 新司 様

Session 4 目指せ!Good to Great~起業を支えるプロフェッショナルの立場から~

アントレプレナーファクトリー 代表取締役嶋内秀之
武田公認会計士事務所 公認会計士武田雄治
山本・森・松尾法律事務所 弁護士森理俊

【参加費】 一般席:3,000円(税込)  学生席:1,000円(税込)
※学生席には限りがございます。
【ウェブページ】http://startup-engine.com/
【懇親会】 夜6時から、開催予定(参加費5000円)

お申し込みは、こちらからお願いいたします。

なお、夜6時からの懇親会には、スピーカーの方の中からも参加していただける予定です。

起業について関心のある方、企業内部で新しいことに挑戦する方、ベンチャー企業への就職や転職を考えたことのある方、ベンチャー・キャピタル等の投資家の方、証券会社等の金融機関で上場やバイアウトを担当されている方、中小企業・ベンチャー企業のサポートをしているプロフェッショナルの方など、多くの方のご参加をお待ちしています。

ベンチャー企業にとって、ファイナンスは、極めて重要です。勿論、マーケティングを含めたお金を増やすための戦略も(の方が)重要であることは間違いないのですが、ファイナンスは、その土台を作るという意味でも本当に重要ですし、最初で間違えると、なかなか修正がきかないという特徴があります。

このようなベンチャーのファイナンスについて、学ぶための書として、以前、『起業のファイナンス ベンチャーにとって一番大切なこと』という公認会計士の磯崎先生の本を紹介させていただきました。

ただ、この本は、ある程度、リテラシーや実務感覚がないと、難しいかもしれません。そこで、実際に、起業して、その後、上場した会社の経営者が書いた本「入門 ベンチャーファイナンス―会社設立・公開・売却の実践知識 」を紹介します。著者の水永政志さんは、スター・マイカ株式会社という会社の社長であり、この会社は、いまジャスダックに上場しています。また、MBA、コンサルティング会社、外資系金融機関という経歴をお持ちの方ですので、ファイナンスのプロでもあります。

第1章 ベンチャー企業とは何か
 1 私のベンチャー体験
 2 ベンチャー企業の本質
 3 ベンチャー企業のライフサイクル
 4 ベンチャー企業は危険なのか?
第2章 会社を作る
 1 会社とは何か
 2 会社の機関とその役割
第3章 ビジネスモデルと経営戦略
 1 アイデアをビジネスモデルに変える
 2 経営者が陥りやすい過ち
第4章 ベンチャー企業の組織
 1 求められるスピードと柔軟性
 2 目的に応じた機能的な組織のデザイン
 3 企業組織の変遷
 4 組織の戦略と評価
 5 現代の組織が抱える悩み
第5章 ベンチャービジネスの資金調達
 1 資金調達の方法
 2 デットファイナンス
 3 エクイティファイナンス
 4 資本コストの考え方
第6章 資本政策と上場、コーポレートガバナンス
 1 資本政策とは何か
 2 新規株式公開(IPO)と上場
 3 コーポレートガバナンス
第7章 ベンチャーキャピタルの役割と活用法
 1 ベンチャーキャピタルとは何か
 2 我が国のベンチャーキャピタル
 3 ベンチャーキャピタルの投資プロセス
第8章 企業価値の評価とM&A
 1 資産価値による評価
 2 会社の価値の決まり方
 3 M&A 会社の売り方・買い方
第9章 創業経営者とイクジットストラテジー
 1 創業経営者と企業
 2 イクジットストラテジーのパターン
 3 所有と経営の分離と資本主義の本質
 4 これからの日本のイクジット



非常にわかりやすく、理解の進みやすい構成となっていますので、ご興味のある方は、ご一読をお勧めします。

2011年2月21日  6:30 AM |カテゴリー: ベンチャー・ファイナンス |コメントはまだありません

今日は、新株予約権無償割当てというテーマについて考えます。

新株予約権無償割当てとは、会社法第277条に規定されている資金調達方法で、「株主(種類株式発行会社にあっては、ある種類の種類株主)に対して新たに払込みをさせない」新株予約権の割当てです。

要するに、現在の株主全員に各株主の保有株式数に応じて、無償で新株予約権をあげるスキームです。割当を受けた株主は、お金を払って新株式を引き受けるか、お金を払わないかを選択することができます。お金を払わないと、他の株主がお金を払って新株式を得ると、その分、持ち株比率が低下することになります。ご存知の方は、「株主割当増資」と近いのではないかと考えられると思いますが、その通りです。特に、旧商法では、全株主に新株引受権を付与するという発想が原則でしたので、これに近いといえるでしょう。

実は、今の会社法では、株主割当てと新株予約権無償割当ての両方の仕組みがあります。ただ、要件が少し違いますので、ケースに応じて、使い分けることになります。特に、新株予約権無償割当てには、(1)取締役会設置会社では取締役会のみで発行できる、(2)新株予約権なので、新株予約権の行使条件にアレンジを加えることができる、という2つの大きな特徴があります。

(1)の特徴は、取締役会設置会社の株主割当増資については、取締役会のみで発行しようとすると定款の定め(会社202条3項2号)が必要であるのに対し(但し、整備法76条3項に注意)、新株予約権無償割当ては、原則として取締役会という点であり、時に役立つ可能性があります。

(2)の特徴は、ブルドックソース事件で如何なく利用されましたので、覚えておられる方もいるのではないでしょうか。同事件では、全株主に1株につき3個の新株予約権が無償で割り当てられましたが、その新株予約権とは、行使条件において、スティール・パートナーズ関係者は行使できないというものであり、代わりに対価を払う内容のものでした。その適法性は、最高裁まで争われ、最高裁判所平成19年8月7日決定にて、「株主平等の原則の趣旨に反するものということはできない」「当該新株予約権無償割当てを著しく不公正な方法によるものということはできない」という結論がだされるに到りました。

余談ですが、この件では、双方とも無傷ではなく、特に、ブルドックソース側は、平成20年3月期の決算で、営業利益6 億7000万円に対し、当期純損失19億1200万円(イカリソースののれん代(5 億9 千4 百万円)を含む。)を計上しています。新株予約権の取得に伴う支払額は21億1400万円、公開買付の対応に伴う支払額は6億6900万円とのことであり、20億以上もの大金が費消されたことになります。

ところで、先月19日に、金融庁から「「金融庁・開示制度ワーキング・グループ報告」~ 新株予約権無償割当てによる増資(いわゆる「ライツ・オファリング」)に係る制度整備について ~」と題する報道発表がありました。



新株予約権無償割当てによる増資(いわゆる「ライツ・オファリング」)とは、「公募増資」、「第三者割当増資」と並んで、企業の増資手法の一つであり、株主全員に新株予約権を無償で割り当てることによる増資手法である。株主は割り当てられた新株予約権を行使して金銭を払い込み、株式を取得することができるが、新株予約権を行使せずに市場で売却することも可能である。したがって、持分比率の低下を嫌う株主は新株予約権の行使によりそれを回避でき、追加出資を嫌う株主は新株予約権の売却により追加負担を回避できるという特徴を有する。(引用終わり)




この政策の趣旨は、上場企業において、新株予約権無償割当てによる資金調達を容易にすることです。

これをきっかけに、上場企業では、株主割当増資ではなく、新株予約権無償割当てによる増資が増えるかもしれませんので、上場企業の財務担当者やPO担当者は、要チェックだと思います。

ベンチャー企業のファイナンスについては、これまでにも何度か取り上げました。

今回は、銀行融資を受ける場合の注意点について、検討します。銀行融資は、デット・ファイナンス(Debt Finance)と呼ばれます。貸借対照表上は、負債となるからです。

このデット・ファイナンスの企業にとっての最大の特徴は、「支払期日に返さなければならない」という点であり、銀行等の貸し手にとっての特徴は「倒産されては困る」という点です。この2つの特徴を理解することが重要です。

「支払期日に返さなければならない」という特徴を考えると、いつ売上が発生するかわからないような研究・開発先行型のビジネスには、不適当ということがわかります。ある程度、収益の見込みのあるビジネスでないと、支払期日に一定の金額を返済する目処が立たないからです。

さらに、銀行等の貸し手にとって「倒産されては困る」という特徴を考えると、リスクは割とあるが、かなり利益がでるかもしれないというビジネスに関心がなく、確実にキャッシュ・インがありそうでリスクの低いビジネスを好むことがわかります。会社がハイリスク・ハイリターンな設備投資をしようと、ローリスクローリターンな設備投資をしようと、貸し手の収入、すなわち利息は(原則として)変化しません。最近では、例外的に変化する内容のデット・ファイナンスもあるようですが、それでも利息制限法の範囲を超えることはありません。ということは、貸し手からすると、無駄にリスクの高い事業はしてほしくないと思うのは当然です。

自社のビジネスが(少なくとも外部の人間にとっては)ハイリスク・ハイリターンなモデルであるという理解があれば、そのようなベンチャー企業は、銀行から借入を受けるべきではありません。実際に、急成長を志向するベンチャー企業が銀行融資を受ける場合は、以下のような点に気をつけるべきでしょう。

1 資金的に余裕があり、その必要があまり無い時点で借り入れを実行する。

2 個人保証は極力避ける。キャッシュフロー、運転資金、増資目標の達成など、特定の業績のマイルストーンに応じて借入金額の上限と返済期限を設定する。

3 貸付約定や制限条項を慎重に検討する。専門家やアドバイザーに頼ることなく、社長が自らその結果がもたらす意味を理解し、判断する。

4 一定の条件が満たされたときに、即時実行される不利な条項はよく検討する。特に、期限の利益喪失条項は、慎重に検討する。

昨今では、中小企業やベンチャー企業への融資について、政策的に「新規開業資金(新企業育成貸付)」といった内容の融資制度が整備されています。しかし、「借りることができるから借りる」という態度は、非常に危険です。特に急成長を志向するベンチャー企業は、ビジネスモデルに由来するリスクが高いことがほとんどですから、そのような会社が資金調達を銀行融資に頼ると、将来的に、会社の破産の原因となったり、社長個人の破産の原因となったりすることを念頭に置いておくべきです。ベンチャー企業に限って言えば、銀行融資は、基本的には補完的な位置づけであると考えておいた方が無難でしょう。

2011年2月1日  6:30 AM |カテゴリー: ベンチャー・ファイナンス |コメントはまだありません


今月4日の新聞記事に、三菱重工、英ベンチャーを20億円で買収 大型風車の技術確保 というニュースがありました。

三菱重工業は3日、英国の油圧システム開発ベンチャーのアルテミス(エディンバラ市)を買収したと発表した。買収額は1500万ポンド(約20億円)。  三 菱重工は英国の洋上風車プロジェクトに参入するため、大型風車を開発中。アルテミスの大型風車に適した技術を取り入れ、開発を急ぐ。
(中略)
三菱重工は自前主義が強かったが、最近は経営スピードを速めるため、M&A(企業の合併・買収)にも意欲的な姿勢を見せている。
(引用終わり)(日本経済新聞2010/12/3 22:57配信)

さらに、5日には、韓国の大企業が日本の環境ベンチャーを買収したというニュースが配信されました。

国鉄鋼最大手のポスコは5日、日本の環境ベンチャーのゼネシス(東京・品川)を買収する契約を結んだと発表した。第三者割当増資を引き受け、ポスコと日本法人のポスコジャパンでゼネシス株の51%を保有する。海洋温度差発電や排熱発電の技術を持つ同社買収により、新エネルギー分野を将来の主力事業の一角とする足がかりを得る。
(引用終わり)(日本経済新聞 2010/12/5 19:55配信)

M&Aか、自社開発かという議論は、古くからある議論ではありますが、今でも、引き続き議論されて続けているテーマです。

新しい技術等を得るための方法としてのM&Aと自社開発のそれぞれの主な特徴は、以下の通りです。

M&A:時間がかからないことや既に成果や市場があることがメリットです。デメリットとしては、買収に伴うリスクがあります。特に、買収先のなかで入手したいものが特許権等の知的財産権で保護されていない場合は、買収先の主要な人物が辞めること等により買収した意味が実質的に果たされなくなってしまうことがあります。カルチャーの違いや給与体系の違いも問題化することがあります。

自社開発:すべてを自社でコントロールできるため、M&Aであれば必要な費用(デュー・ディリジェンスの費用等)や軋轢(カルチャー・給与体系の違い等)が発生しません。買収に伴うリスクもありません。知的財産権も自らが取得できます(特許の場合、規定の整備や相当な対価の支払が必要となります。)。一方、開発にお金をかけても成果が出ることが確実ではありません。また、いつ完成するか、成果がでるかわからず、時間がかかります。

大企業に買収されてもよいと考えるベンチャー企業は、できる限り早い段階から、(i) 特許権、商標権等、知的財産権にできるものは早めに知的財産権化する、(ii) 安定的な収入を確保する、(iii) いつ調査されてもよいように(デュー・ディリジェンスを受けてもよいように)、会計書類を整え、契約書や議事録(株主総会・取締役会)、株式の移動等は法的に問題がないようチェックし、整理しておくことが重要となります。

ベンチャー企業・中小企業の経営者の方におかれましては、今は誰かに買収されるということを考えていなかったとしても、上記(i)から(iii)までのポイントは、(一般論としても)重要な点ですので、頭の片隅においていただけると、良いかと思います。

 
判例時報平成22年11月21日号No.2089に、表題の内容の裁判例(東京地裁平成22年3月8日判決)がありました。

会計評価と、表明保証違反の関係が問題となった事例です。

株価算定の前提となる将来業績予測や会計評価において、相手方(提出側。本件では被告、売主。)が自分に有利な数字を使ったとしても、それは株価の評価の妥当性の問題であり、株価算定書が虚偽であるとはいえない(→被告の表明保証の対象とはならない)と判示されています。

本エントリーでは、本判決が妥当であるか否かの判断はさておき、本判決から得られる企業関係者への教訓を考えてみます。(ここで判断を差し控えるのは、評価が合理的な範囲を超える程度に不相当でおよそ妥当とはいえないレベルであれば、虚偽といえるレベルに達することはあり得ると考えますが、本件の会計評価と実態とを比較することができないことが主な理由の1つです。)

本件から言える一般的な教訓としては、「買収等のM&A案件では、契約締結前に、専門家を使ったデュー・ディリジェンスを怠らないこと」が導けると考えます。本件は、10億円規模のディールのようですが、契約締結前に弁護士や会計士等の専門家を使ったデュー・ディリジェンスが行われていなかったようです。買収案件では、その規模の大小にかかわらず、デュー・ディリジェンスを行い、(i)買収すべきか否か、(ii)株価の妥当性を判断した上で、(iii)デュー・ディリジェンスの結果を踏まえた契約条項の練り上げが必須となります。記憶の曖昧な話で恐縮ですが、いつかの新聞記事に、投資案件や取引案件では、そのディールの3%程度を目安として、リーガル費用やデュー・ディリジェンス費用に使うこととしている大手商社の記事を読んだことがありますが、一つの考え方であろうと思います。

また、私の個人的な関心は、株式譲渡契約書の書き方次第で結論が変わり得たか、原告は他に争い方はなかったのか、といったところにもありますが、やはり本件では、デュー・ディリジェンスをしなかったことが致命的であったように思います。一般的に、契約書の文言や争い方でリカバリーできる範囲は、事前に予防できる範囲より小さいものです。本件は、予防法務の重要性を改めて伝えてくれる裁判例です。

今月25日月曜日に、「20代起業家の本音 「i世代」座談会 「ネットのチカラ」第3部 冒険者たち(1)」(2010/10/25 7:00 情報元 日本経済新聞 電子版)
という日経の特集がありました。


 

――創業時の資金はどう調達したのか。

石原氏 親せきを土下座して回った。ベンチャーキャピタルからの調達は考えなかった。経済産業省の外郭団体からも支援を受けられた。エンジェルとして資金を出してくれる人もいた。


――多くの大学で「起業サークル」がブームと聞く。

石原氏 僕には「起業ごっこ」にみえる。そういうサークルの学生も最終的には大手企業に就職している。起業しようという人はサークルなどに行かずとっくに起業しているのではないか。


――日本は「失われた20年」ともいわれ、経済に元気がない。

柿山氏 月に1回海外に行くが、中国やインド、シンガポールに行くと人々の目つきが全然、違う。世界を変えよう、負けたくないという雰囲気がある。日本の学生の友人にはそれがない。挑戦しようという環境がない。そこを変えないと成長できない。これからは個人がインターネットでエンパワーされる(力を身につける)時代だと思う。

石原氏 少子高齢化は避けられない。だが、企業にできること、日本発でできることがあるのではないか。海外で通用するサービスをつくり、外貨をとってくることが大事だ。負けてはいられない。われわれにはウェブという共通言語がある。どこの国にも共通の土俵だ。そこで戦うことで雇用も生まれ、新しい産業になる。日本はもちろん世界を変えるサービスをつくりたい。

柿山氏 日本の商品、人間性、文化は世界で認められている。なぜ積極的に外に出て行かないのかと思う。

石原氏 外に出る発想を教育されていない。米国では小さいころからビジネスやお金の使い方まで学ぶ。日本の学生はお金の使い方も分からない。かつての高度経済成長、バブルの流れを変えずにきてしまった。親の世代も今後の世界の流れを読めず、子供に教えられない。それを変えるのは教育の問題だ。


――起業家として何をめざすか。

石原氏 日本でのIPO(株式公開)は考えていない起業家が多いと思う。具体的に話題になるのは韓国など海外での上場だ。海外企業に買収されることも、タイミングがあえば選択肢になる。事業がある程度順調にいけば資金もたまるはずで、そうなればエンジェルとして起業家を支援する側に回りたい。(引用終わり)

 

等と非常に興味深いやりとりがあります。

最後の、なぜ日本での上場ではなく、海外での上場を考えるに到ったかという点も、大いに興味をそそられます。

一方で、「クリック証券、韓国上場を中止 環境悪化で株主反対」(日本経済新聞2010/10/20 1:11)というニュースもありました。

インターネット証券のクリック証券が韓国取引所(KRX)への上場計画を中止したことが分かった。6月に上場承認を得ていたが、「韓国市場で証券関連株が低迷を続けており、十分な資金調達ができない」と大株主が反対したという。高島秀行社長は「今後当面はどの市場にも上場せず、別の資金調達手段を考える」としている。(引用終わり)


海外上場には、資金調達額が大きくなる可能性があるというメリットがある半面、日本と現地の双方の証券会社、監査法人、法律事務所等が上場に関与し、また、現地の証券取引法に基づく開示を行わなければなりませんので、継続開示についても会計や証券取引法の分野でコストがかかるというデメリット等が考えられます。他にも、(是非はともかく)株主に外国人投資家の比率が大きくなる等が考えられます。よほど前者のメリットの方が大きくないと選ばないのではないかとも思うのですが、やはりそれだけ内外の市場の熱の差があるのでしょうか。

とはいえ、20代起業家が世界市場を意識してビジネスを展開するという志を持っておられるのは、本当に頼もしい限りです。大きな会社から中小企業・ベンチャー企業まで、様々なタイプの企業が、世界を相手に新しいビジネスを生み育てていく土壌がこれからも醸成されていけばよいな、と思います。

2010年10月27日  8:00 AM |カテゴリー: ベンチャー・ビジネス, ベンチャー・ファイナンス |1件のコメント

今回は、前回「投資契約書の株式買取請求権(1)」に引き続き、投資契約書の株式買取請求権を検討します。

前回の最後で、次回は株式買取請求権について、(2)(i)どのような条件で発動されるのか、(ii)誰が買い取る義務を負うのか、(iii)いくらで買うのか(株価)という点を検討する旨をお伝えしました。

ただ、その前に、投資契約書の実効的なペナルティーは、株式買取請求権以外にないのか、という点を少し検討します。

直ぐに思いつくのは、違約金条項です。ただ、違約金条項となると、投資契約を締結していた株主のみに会社がお金を渡すということになり、他の株主からの反発が避けられない上、株主平等原則との関係や特定株主への利益供与といった問題が払拭できません。また、会社が投資家に会社のお金を支払えば解決するという内容自体、ペナルティーとして機能するのかという根本的な問題もあります。

他のペナルティーも全く考えられないわけではありませんが、実質的な解決にならなったり、現実的ではないことが多いと思います。

では、株式買取請求権の規定について検討したいと思います。

(i)  株式買取請求権の発動要件

通常、投資契約違反、表明保証違反は株式買取請求権の発動の対象になります。投資契約において、投資のための条件(停止条件)が設定されている場合は、その条件を満たしていないことが後から判明した場合も含まれることが多いでしょう。

議論となるのは、株式を公開できるのに公開しない場合を対象にするか、さらには、投資家がファンドの場合、ファンドの満期が到来した場合を対象にするか、です。

「株式を公開できるのに公開しない場合」という要件は規定されたところで現実に発動するには困難な側面があることは否定できません。ただ、株式を公開できるのに、取締役会に公開しないという結論を出されてしまうと、投資家側としては投資した趣旨が損なわれます。有態に言えば、公開を目指すと約束したから出資したのに、話が違うではないか、ということです。この点は、公開を目指す努力義務違反という形で条文上は解消されるケースもあるでしょう。

ファンドの満期が到来した場合に発動するかという点も、議論の対象となります。ただ、多くのベンチャーキャピタルのファンドは組合(投資事業有限責任組合)であり、満期が設定されているのが通常です。満期が到来すると、ファンドの運営者(「GP」(General Partnerの略)と言われることが多い。)は、組合員(ファンドへの出資者。「LP」(Limited Partnerの略)と言われることが多い。)にその時点の資産を現金化して渡さなければなりません。しかし、ファンドの清算時に未公開株式が残っていると、誰かに買い取ってもらうより他ありません。このような事情が背景にあり、ファンドの満期が到来した場合も株式買取請求権の発動事由となっていることが少なくありません。この点、ファンドの性質からやむを得ない部分もあります。ただ、契約違反や表明保証違反と並列にするのは、会社や代表者には酷という考え方もあります。現実には、会社や代表者に落ち度がない場合は、(仮に規定上同じであったとしても)契約違反等がある場合と並列に取り扱われることは余りなく、ファンド側も無理を主張をせず話し合って解決していることがほとんどであると理解しています(私の認識ですので、違う場合もあるかもしれません。その点はご了承願います。)。

この点を以って、「これでは、代表取締役が銀行からの借り入れに連帯保証しているのと同じではないか」という批判があります((ii)に述べるように代表者が買取義務を負っている場合)。ただ、私が知る限り、現実的には、そのような取扱いは非常に少ないのではないでしょうか。会社が銀行からの融資が返済できない場合に、連帯保証人である代表者が個人破産するケースは、全然珍しくありませんが(ほぼ当然のこととして受け止められているように思われます。)、ファンドから出資を受けて、ファンドの満期までに上場できなかったという理由だけで、代表者を個人破産させるということは、私が知らないだけかもしれませんが、ほとんどないと思います。契約文言に対する批判としては理解できますが、実務は、そのような批判を十分理解した上でケース・バイ・ケースで運用されているように思います。

(ii)  株式買取義務者

株式を発行した会社が契約に違反した結果、株式買取請求権を発動することになったことを考えると、まず会社が買取義務を負うことが考えられます。ただ、会社が自ら発行した株式を買い取ることは、自己株式の取得です。となると、会社法に基づく自己株式の取得手続と取得限度額の規制が適用されます。取得限度額の規制とは、取得財源は「当該行為がその効力を生ずる日における分配可能額」を超えてはならないという意味ですので、利益が出ていない会社は減資等の手続をしない限りは取得財源を産み出すことが難しいことになります(さらに言えば、そもそも会社の買取義務自体の有効性について議論がないわけではないです。)。したがって、会社以外に買取義務者を定めておく必要が生じます。

そこで、通常は、会社の主要株主でもある代表者も買取義務を負う内容になっていることが多いです。会社の経営者としては、このような形で買取義務を負うことについては一見抵抗があるかもしれませんが、規定にはそれなりに投資家側の合理的理由がある部分もありますので、それらを理解しつつ、交渉していただければと考えます。

(iii)  株式買取請求における対価

株式買取請求権を現実的な権利とするためには、いくら支払うべきかが明確になっていなければなりません。この点を「協議で定める」等としておくと、実効力に欠けることになります。

実際には、いくつかの算出方法(投資時の株価、純資産法等)を列挙して、その中で最も高い金額とすることが多いのではないかと考えます。
 
 
検討は、以上となります。諸事情により、少し曖昧な表現にさせていただいた部分もありますが、ご容赦願えれば幸いです。

2010年10月21日  2:30 PM |カテゴリー: ベンチャー・ファイナンス |コメントはまだありません
 
   
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