森法律事務所
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法務省は、平成27年3月16日付けで、下記のとおり、取扱いを変更しています。

 「昭和59年9月26日民四第4974号民事局第四課長回答及び昭和60年3月11日民四第1480号民事局第四課長回答の取扱いを廃止し,本日以降,代表取締役の全員が日本に住所を有しない内国株式会社の設立の登記及びその代表取締役の重任若しくは就任の登記について,申請を受理する取扱いとします。」
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00086.html

 従前、代表取締役のうち、少なくとも1名の住所は日本になければ登記申請は受理されませんでした。また、取締役会設置会社以外の会社の場合、取締役の少なくとも1名の住所は日本になければ登記申請は受理されませんでした。

 上記取扱いの変更により、代表取締役の全員が外国に居住していても、登記可能になるものと思われます。なお、取締役会設置会社以外の会社の場合、取締役の全員が外国に居住している場合の登記の取扱いは、上記の取扱いの変更と同様に変更されるかは、明確ではありません(私が変更を発見できていないだけかもしれません)。ただ、同様に変更される可能性はあると思います。

 したがって、海外在住者が代表取締役という内国法人が、事実上、許されることになりました。なお、代表取締役の氏名・住所を登記しなければならない点(会社法第911条第3項第14号)は変わりませんので、登記の添付書面には、当該代表取締役の住所に関する宣誓供述書又は在留証明書が必要になると思われます(実際の登記実務については、ご依頼の弁護士若しくは司法書士、又は法務局にご確認下さい。)。

 また、外国会社が日本において取引を継続しようとするときは、日本における代表者を定めなければならず、この場合に、その日本における代表者の一人以上は、日本に住所を有するものでなければならない点(会社法第817条第1項)に変更はありませんので、注意が必要です。

2015年3月19日  11:23 AM |カテゴリー: 企業法務 |コメントはまだありません

非常に久しぶりの更新です。
今回は、平成26年会社法(平成26年6月27日公布(法律第90号))改正に関して、ややマイナーではあるものの、会社法務上、見逃せない点を取り上げます。

会社法の監査役設置会社とは、会社法第2条第9号により、監査役の監査の範囲が会計に関するものに限定されていない監査役を置く株式会社をいいます。

すなわち、監査役がいても、「監査役設置会社」ではない株式会社が存在します。
特に、資本金の額が1億円以下の小会社で非公開会社の監査役は、整備法(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律)第53条の規定により、定款を変更しない限り、定款に監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定め(会社法第389条第1項)があるものとみなされます。

したがって、大多数の中小企業は、監査役がいたとしても、会社法の「監査役設置会社」ではない場合にあたることになります。

この点が、いわゆる株主代表訴訟を提起しようとする場合に問題になることがあります。
株主代表訴訟を提起しようとする株主は、まず、会社を代表する者(会社法第386条)に対し、提訴請求(責任追及等の訴えの提起の請求)する必要があり、この会社を代表する者を選択する場合に、問題となるのです。

会社法の監査役設置会社の場合、取締役に対する提訴の請求は、監査役宛に行うことになりますが、非監査役設置会社では、代表取締役(会社法第349条第4項)宛となります。非監査役設置会社では、代表取締役の責任を追及するために、その代表取締役宛に、提訴請求をするという、一見奇妙な請求をしなければなりません。

ところで、現在の会社法では、監査役を置く限り、(非監査役設置会社であっても)登記簿上「監査役設置会社」と記録され(会社法第911条第3項第17号)、登記事項証明書を見て「監査役設置会社」と記載されていても、会社法上の監査役設置会社ではないことがあり、混乱を招いていました。株主は、提訴請求前に正確な定款を確保しなければ、監査役設置会社であるか否かが判然としないのです。

今回の会社法改正で、会社法第911条第3項第17号イとして、「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社であるときは、その旨」が登記簿に記録されることになりました。

したがって、今回の会社法改正後、株主代表訴訟を提起したいと考える株主は、会社の現在事項証明書等をチェックして、「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定め」の有無をチェックすることで、監査役階設置会社であるかを知ることができるようになるはずです。

なお、広く影響があるという意味では、今回の会社法改正により、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある場合に、その株式会社は、その旨の登記申請をしなければなりません(会社法施行前から存在する会社で、会社法施行後、特にこの点について定款変更をしていない小会社は、原則として、登記義務が生じます。)。但し、改正法施行時に当該定めのある会社は、改正法施行後最初に監査役が就任し、又は退任するまでの間は、登記をすることを要しないとされています(改正法附則第22条第1項)。

2014年12月5日  4:12 PM |カテゴリー: 企業法務 |コメントはまだありません


最新の判例時報平成23年4月21日号(No.2104)130頁以下に、金融商品取引法192条1項に基づき、金融商品取引法違反行為の差止めが命じられた事例(東京地裁平成22年11月26日決定)が掲載されています。


この事例は、「抜かずの宝刀」が抜かれたとして、話題になりました。

金融商品取引法192条1項とは、次のようなものです。

金融商品取引法
(裁判所の禁止又は停止命令)
第百九十二条  裁判所は、緊急の必要があり、かつ、公益及び投資者保護のため必要かつ適当であると認めるときは、内閣総理大臣又は内閣総理大臣及び財務大臣の申立てにより、この法律又はこの法律に基づく命令に違反する行為を行い、又は行おうとする者に対し、その行為の禁止又は停止を命ずることができる。
2  裁判所は、前項の規定により発した命令を取り消し、又は変更することができる。
3  前二項の事件は、被申立人の住所地の地方裁判所の管轄とする。
4  第一項及び第二項の裁判については、非訟事件手続法 (明治三十一年法律第十四号)の定めるところによる。

この条文を読むと、金融商品取引法違反や同法に基づく命令違反の行為は、全て対象となるように読めます。政府が緊急性があり、且つ必要性及び相当性があると判断すれば、いつでも申し立てることができ、さらには、審理も短期間で行われることが想定されていると考えられますので、運用には非常に慎重で謙抑的であったと考えられます。

本件は、同法の緊急差止命令が発令された初めての事例ということで、注目を集めました。
本件では、「一種免許なく、募集又は私募の取扱い」→「財務局からの照会」→「金商法違反に該当する行為をしていたことを認める旨の回答」→「警告書」→「当該行為を中止する旨の回答」→「金商法違反の勧誘行為の継続」という流れの結果、緊急差止命令の申立てにいたったようです。

緊急差止命令の相手方となるケースは、非常に稀と考えますので、その意味では、本件は、例外的な事件と言えるかもしれません。
しかし、本件は、どのような事例が「募集又は私募の取扱い」に該当するかの参考事例とも言えます。

本件では、相手方は、ある会社の株式等の取得の申込みの勧誘行為を行うことを引き受けて、一般投資家に対し勧誘・斡旋をし、実際に制約した場合には、発行会社から手数料として出資金の払込価額の3分の1の支払いを受ける旨合意した上で、一般投資家に同社の株式等の取得の斡旋・勧誘を行ったようです。その結果、一般投資家延べ112名が、同社に対して直接又は相手方を経由して、合計9885万円の出資金の払込みを行ったようです。また、この発行会社以外にも、少なくとも4社の株式についても勧誘行為を繰り返していたようです。

この事案は、「私募」どころか「募集」に該当している可能性が十分あり、発行会社の方も問題となりそうな事案です。また、「私募の取扱い」を業として行うことは、第一種金融商品取引業の免許が必要です。なお、「業として」の判断については、裁判所の決定では、「反復継続して」とありますので、営利性より、反復継続性が重要な要素となっているようです。

株式や新株予約権を発行して、資金を集めようとする会社は、「募集」に該当しないかの検討を十分にしていただきたいですし、自社の株主となるように勧誘する行為を、証券会社ではない第三者に依頼すると、その第三者は、「募集又は私募の取扱い」に該当する可能性があるということを、よく理解していただきたいです。「募集」と「私募」の要件及び効果の違い、「募集又は私募の取扱い」の該当性は、実行前に、弁護士に相談することをお勧めします。

2011年4月27日  6:30 AM |カテゴリー: 企業法務, 法務関連ニュース |コメントはまだありません

震災に伴う労災関連について、質問を受けることが少なくありませんので、この場でも、基本的な情報を共有しておきます。

今回の震災の当日付けで、厚生労働省労働基準局労災補償部補償課長から、下記の内容を含む、「東北地方太平洋沖地震に伴う労災保険給付の請求に係る事務処理について」(基労補発0311第9号)という文書が、都道府県労働局労働基準部労災補償課長宛に出されています。同文書には、「兵庫県南部地震に伴う労災保険給付の請求に係る事務取扱いの留意点について」(事務連絡第3 号 平成7年1月27日)や「兵庫県南部地震における業務上外等の考え方について」(事務連絡第4 号 平成7年1月30日)も添付されていますので、是非、ご参照ください。

http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T110316K0010.pdf (PDF)

「東北地方太平洋沖地震に伴う労災保険給付の請求に係る事務処理について」

1 労災保険給付請求に係る事業主証明及び診療担当者の証明

今回の地震により、被災労働者の所属事業場等が倒壊した等の理由から、労災保険給付請求書における事業主証明を受けることが困難な場合には、事業主証明がなくとも請求書を受理すること。
また、被災労働者が療養の給付を受けていた医療機関が倒壊した等の理由から、診療担当者の証明が受けられない場合においては、診療担当者の証明がなくとも請求書を受理すること。
なお、この場合、請求書の事業主証明欄の記載事項及び診療担当者の証明欄の記載事項を請求人に記載させ、当該証明を受けられない事情を付記させること。


2 業務上外等の基本的な考え方

今回の地震による業務上外の考え方については、平成7年1月30日付け「兵庫県南部地震における業務上外等の考え方について」に基づき、業務上外及び通勤上外の判断を行って差し支えない。
したがって、個々の労災保険給付請求事案についての業務上外等の判断に当たっては、天災地変による災害については業務起因性等がないとの予断をもって処理することのないよう特に留意すること。


「地震による災害の業務災害又は通勤災害の考え方」

地震による災害事例


1 業務災害


事例1 作業現場でブロック塀が倒れたための災害
ブロック塀に補強のための鉄筋が入っておらず、構造上の脆弱性が認められたので、業務災害と認められる。


事例2 作業場が倒壊したための災害
作業場において、建物が倒壊したことにより被災した場合は、当該建物の構造上の脆弱性が認められたので、業務災害と認められる。


事例3 事務所が土砂崩壊により埋没したための災害
事務所に隣接する山は、急傾斜の山でその表土は風化によってもろくなっていた等不安定な状況にあり、常に崩壊の危険を有していたことから、このような状況下にあった事務所には土砂崩壊による埋没という危険性が認められたので、業務災害と認められる。


事例4 バス運転手の落石による災害
崖下を通過する交通機関は、常に落石等による災害を被る危険を有していることから、業務災害と認められる。


事例5 工場又は倉庫から屋外へ避難する際の災害や避難の途中車庫内のバイクに衝突した災害
業務中に事業場施設に危険な事態が生じたため避難したものであり、当該避難行為は業務に付随する行為として、業務災害と認められる。


事例6 トラック運転手が走行中、高速道路の崩壊により被災した災害
高速道路の構造上の脆弱性が現実化したものと認められ、危険環境下において被災したものとして、業務災害と認められる。


2 通勤災害


事例1 通勤途上において列車利用中、列車が脱線したことによる災害
通勤途上において、利用中の列車が脱線したことは、通勤に通常伴う危険が現実化したものであることから、通勤災害と認められる。


事例2 通勤途上、歩道橋を渡っている際に足をとられて転倒したことによる災害
通勤途上において、歩道橋を渡っている際に転倒したことは、通勤に通常伴う危険が現実化したものであることから、通勤災害と認められる。

2011年4月11日  6:30 AM |カテゴリー: 企業法務 |コメントはまだありません

大変、ご無沙汰しております。諸事情により、更新が滞っておりました。

今日は、5月20日に開催予定の「Startup Engine 2011」というイベントについてのお知らせです。

来る5月20日の午後1時から、大阪中之島の国際会議場にて、「Startup Engine 2011」というイベントを開催させていただきます。

関西では、ベンチャーや起業に関連したイベントが少なくなりつつあるという話を聞き、全くの手弁当で、友人知人に声をかけて、志に賛同してくださる方々と立ち上げたイベントです。

今こそ、関西が頑張るべき時であるという声は少なくありません。関西は、古代から江戸時代や近代にかけて、起業や金融という意味では、最先端の地でした。今も、高い技術や志を持つ方が大勢いらっしゃいます。また、商人の地、大阪だけではなく、伝統と新しい価値が融合する地、京都、先端技術の拠点を持つ古都奈良、新しい文化とバイオベンチャー等のシードも多い神戸等、素晴らしい土地が近接しているという地の利があります。一方で、ここ数年、「最近の関西・大阪は元気がない」という言葉を聞くことも少なくありませんでした。

そこで、微力ながらも、関西でも、起業家精神とそれを支えるネットワークを構築するため、そして、その土壌を耕し続けるため、志を同じくする人と一緒に、関西、そして日本が、新しい産業のエンジンとなることを祈念して、「Startup Engine 2011」というイベントを開催させていただく運びとなりました。

新進気鋭の素晴らしいスピーカーに、お話をいただけることになっております。
僭越ながら、私も最後にお話をさせていただく機会を設けさせていただいています。


【日 時】 2011年5月20日(金)13:00〜17:30
【会 場】 大阪国際会議場
【後援・協力】 [後援]大阪証券取引所 [協力]株式会社 幕末
【セッション】
Session 1 ライフネット生命の挑戦

ライフネット生命保険株式会社 代表取締役副社長 岩瀬 大輔 様

Session 2 マイノリティのすすめ

日本マイクロソフト株式会社 コミュニケーションズ・セクター

クラウド・ソリューション営業部 統括部長 今井 早苗 様

Session 3 等身大の経営者が語るBuyout

株式会社オークファン 代表取締役 武永 修一 様
ジンガジャパン株式会社 ジェネラル・マネージャー 山田 進太郎 様
株式会社美人時計 専務取締役 早 剛史 様
株式会社アトランティス 代表取締役社長 CEO 木村 新司 様

Session 4 目指せ!Good to Great~起業を支えるプロフェッショナルの立場から~

アントレプレナーファクトリー 代表取締役嶋内秀之
武田公認会計士事務所 公認会計士武田雄治
山本・森・松尾法律事務所 弁護士森理俊

【参加費】 一般席:3,000円(税込)  学生席:1,000円(税込)
※学生席には限りがございます。
【ウェブページ】http://startup-engine.com/
【懇親会】 夜6時から、開催予定(参加費5000円)

お申し込みは、こちらからお願いいたします。

なお、夜6時からの懇親会には、スピーカーの方の中からも参加していただける予定です。

起業について関心のある方、企業内部で新しいことに挑戦する方、ベンチャー企業への就職や転職を考えたことのある方、ベンチャー・キャピタル等の投資家の方、証券会社等の金融機関で上場やバイアウトを担当されている方、中小企業・ベンチャー企業のサポートをしているプロフェッショナルの方など、多くの方のご参加をお待ちしています。

今回は、大地震や津波により、契約上の義務を果たせなかった場合、責任を負うのか、という問題について、検討します。

契約上、不可抗力条項がある場合は、その規定に従うことになります。不可抗力条項が規定されている大抵の場合は、免責事由となっているはずです。

問題は、特約で不可抗力条項が定められていなかった場合です。

典型的なケースとしては、工場が津波により被害を受けたので、納品できなくなったというケースです(特に、契約書の取り交わしはなく、発注書と請書のみのやりとりだったという場合です。)。

このような場合でも、不可抗力であるとして、遅滞や履行できないこと(履行不能)については責任を負わないのが原則です(理論上、不特定物の提供義務を負っている場合は、市場で同種同等の物を調達し得る限り、捜索して提供する義務が発生しますが、他の保有者が発見できない場合や調達価額が不相当に高額な場合は、免責されるか、事情変更の原則の適用が検討され得る事案といえる可能性があります。)。

但し、このような原則の例外として、金銭債務(お金を支払う義務)があります。金銭債務の履行については、不可抗力は抗弁となりません(民法第419条第3項)。

民法
(金銭債務の特則)
第419条
1  金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
2  前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
3  第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。


不可抗力により履行不能となった場合に、反対給付(典型的には売買契約における金銭の支払義務)が残るかという問題は、次に検討すべき課題となります。この問題を、危険負担といいます。危険負担については、後日、検討する予定です。

2011年3月24日  6:30 AM |カテゴリー: 企業法務, 法務関連ニュース |コメントはまだありません

日本弁理士会が発行している雑誌「パテント」の2011年2月号(Vol.64 No.2)109頁以下に、中国国家知識産権局局長である田力普さんによる、「中国の知的財産権保護―理解しておくべき事実」という寄稿があります。この中では、中国における知的財産権に対する認識の経緯について、忌憚のないご意見を述べられておられ、大変参考になりました。

まず、田さんが1970年代末に知的財産権分野の仕事に入られたときのお話があります。

当時の中国では、8億の人口のうち、ほんのわずか数十人を除いて、知的財産権に対する認識は、私と同じだったと思います。ゼロに等しく、知識と財産を一緒に結びつけるという概念は全くありませんでした。逆に、当時の人々は一般に、知識は自由に無償で広まり使われるものだと考えており、どんな知識も社会全体、さらには全世界で共有されるべきで、費用の徴収が認められるということは理解し難いことでした。
(中略)
そこで、1970年代に「知的財産権」という語が中国語に翻訳されましたが、2000年になって初めて、中国の数億を数える学生が一般に用いている「新華字典」に正式に収録されました。
(引用終わり)


そして、改革開放時代における、現在の知的財産権制度の実施とその立法過程や討論の激しさが述べられています。

立法が決定して1990年に著作権法が公布されるまで、主要な知的財産権の法律が制定されるのに10年以上かかりました。これが、長い歴史を持つ知的財産権国際規則の、それに疎い中国における初めての運用となったのです。
(引用終わり)


そして、現在の中国の知的財産権制度の実施が中国人の創造力を引き出していることについて述べた上で、一方で、Apple社のiPodやDVDの例を挙げて、知的財産権制度の中国における実施が、欧米諸国や多国籍企業に実際の利益をもたらしている点を指摘しています。

また、中国の現状についても、率直に問題があり、不十分な制度、民衆の意識が比較的低い点、いくつかの場所・分野・製品で突出して知的財産権の侵害があることを認めておられます。

ただ、逆に、海外メディアにおいて、いくつかの問題は故意に、あるいは故意でなく誇張され、歪曲されていることも指摘されています。

最近、私は、多くの外国メディアの、知的財産権の関係した中国に関する報道に、大量のマイナス情報が氾濫しているのを目にします。そこで私の受ける印象は、『欧米諸国で注目を集めたいなら、中国を非難する。中国を非難する際に注目されたいなら、中国の知的財産権保護を非難する』ということです。

しばしば、米国メディアと政治家が引用するデータが誇張されており、事実と符合していないことは明らかなのです。(引用終わり)


中国の立場は、これまで欧米諸国が長年により培った知的財産権制度について、わずか30年ほど実施しているにすぎず、これからも長期的に努力をするということです。実際に、中国における、この10数年で立法された知的財産権関連法の数は、大変なもので、現在では、ほぼ一通りの法律は揃っていますし、改定作業も迅速です。

中国を生産拠点としてではなく、マーケットとしてみる動きはこれからも留まることはないでしょう。日本企業が中国の市場に進出する際には、是非、予め、特許権や商標権の登録等の準備を怠らなければ、仮に模倣品被害にあっても採り得る手段は少なくありません。また、仮に商標権がこちらになかったとしても、中国の商標法や、日本の不正競争防止法に該当する反不正当競争法が活用できる可能性が残っていますので、諦めずに専門家に相談していただきたいです。具体的には、日本の弁護士や弁理士と連携しつつ、現地の法律家に依頼するのが一般的でしょう。

一応、現時点の中国商標法や反不正当競争法の関連条文を挙げておきます。なお、この翻訳は、特許庁及びJETROのものに依拠しておりますので、その正確性等について保証するものではありません。

中国商標法
第 31条 商標登録の出願は,他の者の先の権利を害してはならず,他の者の既に使用している一定の影響力のある商標を不正な手段で先に登録することもしてはならない。
第 41条 登録された商標が第10条,第11条,第12条の規定に違反しているか,又は詐欺的な手段若しくはその他の不正な手段で登録を取得したときは,商標局は当該登録商標を取り消す。その他如何なる組織又は個人も,商標評審委員会にそのような登録商標を取り消す裁定を請求することができる。
登録された商標が第13条,第15条,第16条,第31条の規定に違反しているときは,当該商標の登録日から5年以内に,他の商標所有者又は関係当事者は,商標評審委員会にその登録商標を取り消す裁定を請求することができる。悪意による著名商標の登録の場合,その真の所有者に対しては5年間の制限はない。
前 2段落に定めた状況のほか,既に登録された商標について係争があるときは,当事者は当該商標の登録許可日から5年以内に,商標評審委員会に裁定を請求することができる。 商標評審委員会は裁定請求を受理した後,関係当事者に通知し,かつ,指定の期間内に答弁させなければならない。
引用元(PDF)はこちら

中国反不正当競争法
第5条 事業者は以下に記載する不正手段を用い市場取り引きをし、競争相手に損害を与えてはならない。
(1)他人の登録商標を盗用すること。
(2)勝手に著名商品の特有な名称、包装、デザインを使用し、または著名商品と類似の名称、包装、デザインを使用して他人の著名商品と混同させ、購入者に当該著名商品であるかの誤認をさせること。
(3)勝手に他人の企業名称または姓名を使用して公衆に当該他人の商品であるかのを誤認させること。
(4)商品の上に品質認定標識、優秀著名標識など品質標識を偽造し盗用し、または原産地を偽造して公衆に誤解させる商品品質の虚偽表示をすること。
第9条 事業者は広告またはその他の方法を用いて商品の品質、成分、性能、用途、生産者、有効期間、産地などに対し公衆に誤解を与える虚偽宣伝を行ってはならない。
広告事業者は明確なまたは知りうるべき情況のもとで虚偽の広告を代理、設計、制作、公布してはならない。
引用元(PDF)はこちら

2011年3月11日  6:30 AM |カテゴリー: ベンチャー・ビジネス, 企業法務 |コメントはまだありません

先日(3月4日)、神田秀樹教授による「会社法制の見直しを巡る議論と展望」という講演を聴いてきました。

非常に面白い示唆がいろいろとありましたが、今回は、ベンチャー企業に関連する内容について、触れてみたいと思います。

兼ねてから、当ブログでも、取り上げておりました監査役会設置会社における社外取締役の選任の義務付けという点です。

現在、主に上場企業を対象として、監査役会設置会社に社外取締役の選任を義務付けようという議論があります。直近では、今年1月の法制審議会会社法制部会第9回会議会社法制部会資料9(PDF)を参考にして下さい。

ここでは、「1 監査役会設置会社における社外取締役の選任の義務付け」と「2 監査・監督委員会設置会社制度(仮称)の創設」が挙げられています。

私は、上場(IPO)実務という観点から、上場会社に、社外取締役の選任を義務付けるとなると、これまで社外監査役を選ぶことさえ大変だったのに、さらに社外取締役を探してこなければならず、上場のハードルがこれまで以上に上がるのではないかという危惧をもっていました。(なお、現在は、会社法上、監査役会設置会社については社外監査役2名以上(335条3項)が求められており、これに加えて、取引所ルールによって独立役員1名が必要です。)また、そもそも根本的な点として、会社法で規定しなければならないことなのかという疑問や、新興市場に上場している会社にも本当に必要だろうかという疑問もありました。

この点、神田教授は、おそらくこの案(社外取締役選任義務付け案)を通すのは簡単ではないであろうという趣旨のことを述べておられました。理由の一つには経済界の反対が強いということです。なお、教授によると、過去に調査したところ、業界1位の会社は、いずれも社外取締役がおらず、2位以下の会社にはだいたい社外取締役がいるということでした。勿論、全ての業界ではないでしょうし、例外もあるとは思いますが、なかなか興味深い話でした。その趣旨としては、社外取締役がいないから1位ということではなく、2位以下だから社外取締役を置いているということなんだろうと思います。

さらに、この案が有力ではない推論の一つとしては、「会社法制部会資料9」の中で、「1 監査役会設置会社における社外取締役の選任の義務付け」と「2 監査・監督委員会設置会社制度(仮称)の創設」の分量が全然違うということもあるようです。ご覧いただけるとわかりますが、明らかに後者の分量が多いです。これは、法務省のやる気度合いに比例している可能性があるということです。

上場(IPO)実務という観点からでは、後者の案は、期間設計についてのオプションが増えるだけですので、さほど影響はないように思われます。(今後の実務動向や証券取引所のルールにもよりますので、留保付きです。)今後の動向に、慎重に注目した方がよいと思います。

参考
会社法
(大会社における監査役会等の設置義務)
第328条第1項  大会社(公開会社でないもの及び委員会設置会社を除く。)は、監査役会及び会計監査人を置かなければならない。


(監査役の資格等)
第335条第3項 監査役会設置会社においては、監査役は、三人以上で、そのうち半数以上は、社外監査役でなければならない。

2011年3月9日  6:30 AM |カテゴリー: 企業法務 |コメントはまだありません



昨年(平成22年)の会社法制部会の審議事項について、先月(2月)28日に、経済同友会から意見が出されていますので、紹介します。


法制審議会「会社法制部会」への意見


会社法制部会の内容については、こちらをご覧下さい。第4回から第6回あたりまでが、今回の経済同友会の意見の対象となっているトピックが議題となっています。

過去の関連記事は、「会社法改正の動向と株価算定事件についてのメモ」「昨今の会社法制に関する話題」等ですので、こちらも参考にしてください。

 企業経営者の立場で望むのは、経済関連の法制が結果として個々の企業が活性化、国際競争力を向上させ、ひいては日本経済全体の成長に貢献することである。過度な規制で、結果的に企業活動が萎縮するようなことがあってはならない。

 こうした観点からすると、現在、法制審議会「会社法制部会」(以下「部会」)で検討されている項目は、本当に今現在、法改正まですべき切迫した事情(いわゆる立法事実)があるのか、疑問に感じるものが多い。もし今回の会社法見直しの発端に、「会社法で規制緩和が行き過ぎ、企業の規律が失われ、不祥事や違法・脱法行為が増えた」といった認識があるのであれば、それは企業実務の実感とは明らかに異なるものである。金融商品取引法(以下「金商法」)や証券取引所規則はじめ、会社法以外で新たなルールが次々と設けられ、全体としては、企業に対する規律はむしろ増えているように感じる。ごく一部の違法・脱法行為者の事例を一般化して規制を強化しても、確信犯的に法の間隙を縫ってくる者を完全に防 ぐことは不可能であるし、また規制強化の結果、非常に煩雑な手続きを企業全体に課すことになれば、適正なガバナンスを構築し、法令を遵守している大多数の企業の負担増となり、むしろ、日本経済が全体として国際競争力を失う可能性が大である。

 また、部会では、諸外国にある制度を導入しようという志向も強いように見受けられる。しかしながら、一方で各国の会社法制は、その他の経済関連法制や税制、司法制度、更には雇用慣行、会社帰属意識その他の社会・文化的背景の下で設計され、機能しているものでもある。もちろん、経済のグローバル化が進む中、国際的ルールとの不整合により、日本企業が国際競争上不利となる事態は避けなければならないが、法律の一部分だけを単独で日本に移入しても、必ずしも意図通りに機能する保証はなく、それどころか弊害さえ招きかねない点もまた認識すべきである。

(公益社団法人経済同友会 平成22年2月28日「法制審議会「会社法制部会」への意見」1頁より)


経済同友会は、規制の対象となる会社の集団ですので、規制強化に反対という立場を採ることは容易に想像できますが、それを差し引いたとしても、真剣に耳を傾けるべき意見が少なくないように思います。特に、「特に株式市場で広く投資家から資金を集める上場企業では、社外取締役を少なくとも1名導入すべきであるし、さらには複数名導入することが望ましい。但し、社外取締役を、上場大企業から中小企業・個人企業までカバーする「会社法」で強制すべきかどうかは別次元の問題である。」(2頁)といった意見や、「何より、日本の産業構造転換と国際競争力強化、資本市場のダイナミズム向上の為には、特に大企業はスピンオフ(企業発ベンチャー)を推進し、国もこうした流れを支援すべきものである。だが、 日本では、従業員の会社への帰属意識の強さもあり、一挙に 100%全て外に出す訳にいかないことも多く、 まず 51%とか60%保有で上場し、投資家の信頼を得つつ、徐々に独立色を高めて、やがて完全分離することが現実的である。こうした流れのステップとして、親子上場は不可欠な選択肢である。」(6頁)といった意見は、現場の声として有用と考えます。

このような現場の意見を踏まえつつ、より議論が充実したものとなることを願っております。

2011年3月3日  6:30 AM |カテゴリー: 企業法務, 法務関連ニュース |コメントはまだありません

先月(1月)26日に、東京地裁民事第8部において、株主総会決議不存在確認等請求事件で、決議不存在を認める判決がありました(商事法務No.1924 60頁)。

主な内容は、以下のとおりです。
(1)適法な議長不信任・議長交代の動議がないままに、議長を交代した後の取締役解任決議は、議長でない者によって採決が行われたことになり、不存在である。
(2)(1)の株主総会決議を追認する株主総会決議についても、適切ではない代表取締役によって招集手続きが行われた点には瑕疵があるものの、株主が1人であるところ、その1人株主が出席してなされたと考えられるため存在する。
(3)(2)の株主総会により追認決議が行われたとしても、(1)の株主総会が有効になるものではなく、その間の((1)で解任された取締役の)報酬請求権は、認める。
(4)(2)の株主総会の解任に正当な理由が無いとして、会社法339条2項に基づき損害賠償請求権を認める。

株主総会の決議不存在が認められるケースは、それほど多くありませんので、ご紹介します。

2011年2月28日  4:00 PM |カテゴリー: 企業法務, 法務関連ニュース |コメントはまだありません
 
   
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