森法律事務所
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大阪イノベーションハブにて、『第7回SUEセミナー -ベンチャー企業のファイナンス 実務と法務から-』を開催することになりました。

起業家やベンチャー企業経営者が、エクイティー・ファイナンスをするときに、どのような点に留意して資本政策や投資家へのプレゼンテーションを行なえばよいか、投資契約書や投資手法の選択において気をつけるべきことがないかを解説します。
また、ベンチャー・キャピタリストである出口彰浩さんをお迎えして、実務上の観点や動向もお伝えします。

イベントの後には、ネットワーキングディナーを開催する予定です。
概要及び申込みは、こちらからご覧いただけます。

【日 時】 2016年3月15日(火) 18:00~20:00 (開場17:30)
【会 場】大阪イノベーションハブ(グランフロント大阪 ナレッジキャピタルタワーC 7階) 案内図(PDF)
【参加費】 2,000円(税込)
【ウェブページ】 http://startup-engine.com/event/846
【ネットワーキングディナー】 夜8時から、開催予定(参加費2,000円)(先着40名様)

お申し込みは、こちらからお願いします。

先週末、札幌で開催されていたIVSというイベントに出席させていただきました。

多くのSessionが開催され、大変、刺激的なイベントでした。

本当は、キューエンターテインメント社の水口哲也さんと慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授の稲見昌彦さんのクリエーター・トークや、関西外国語大学准教授のGarr ReynoldsさんのプレゼンテーションZENの話は、非常に面白く、勉強になるというか、それ自体が1つの素晴らしいエンターテイメントとして、成り立つ程でした。ただ、残念ながら、私には、その魅力を十分にお伝えすることはできませんので、この方々の講演に出席する機会がありましたら、参加することをお勧めします。

ちなみに、関連する本としては、今の水口哲也さんの問題意識に大きな影響を与えている「NHKスペシャル 世界ゲーム革命」と、Garr Reynoldsさんが著作された「プレゼンテーションzen」を挙げさせていただきます。

特に、後者は、講演や裁判員裁判等で、Power Point を利用しようと考えている弁護士にも、強くお勧めします。

さて、今回は、IVSの中で、取り上げられた「ベンチャーファイナンスの行方」というテーマについて、考えてみます。

スピーカーとモデレーターは、下記の方々です。
Speakers:
・磯崎哲也事務所 代表 磯崎哲也氏
・インキュベイトファンド 代表パートナー 本間真彦氏
・株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ パートナー 仮屋薗聡一氏
・DCM パートナー 伊佐山元氏
・UBS証券会社 株式本部株式調査部 エグゼクティブディレクター 武田純人氏
Moderator:
・インフィニティ・ベンチャーズLLP 共同代表パートナー 小林雅氏


1つの大きな問題意識は、“日本には、大粒のベンチャーがない”という点です。この問題点は、”もしGoogleの創業者2名(と全く同じ能力の人間)が日本のVCの前で検索エンジンの開発をやりたいといっていたら、Googleは日本に生まれたであろうか”という表現でも、問題提起されていました。

この問題点について、スピーカーの方は、いくつかの興味ある回答を用意されていました。1つは、起業の世界には、まだまだ人・金をマネージするイメージができている人がほとんどいないということです。単にお金を流し込めばよいのではなく、人・情報・ノウハウといったものを有機的に連携していく能力のある人が、経営者側・投資家側を含めて、まだまだ少ないという問題意識ではないだろうかと思います。数多くのイケている人が起業の世界に携わるようになれば、自然といい起業家も増えるのではないかという意見もありました。

もう1つの回答には、日本では、資金提供者が早く回収を望む傾向にあるのではないかということです。シリコンバレーのVCが期待されていることは、「次のGoogleを見つけてくれ」ということであり、中途半端な成功は求めていないということです。すなわち、シリコンバレーのVCの投資家にとっては、最初から売上を気にするようなベンチャーはそれはそれであってもいいけれども、魅力的な投資先ではないということだと思います。

ここで重要な点は、VCの背後にいるLPの存在です。LPとは、Limited Partner の略で、VCの運営するファンドに投資している投資家のことです。このLPの性格によって、必然とVCの性質が決定され、引いては、投資スタンスやVCの投資先に求めることが違ってくるということです。この点では、米国の投資家の方が長期的な視点で考えているのではないかと指摘されていました。

この点は、これからVCから資金の提供を受けようとするベンチャー企業にとっても、重要な視点だと思います。

上場(IPO)との関係では、未熟なまま上場することにより、経営の自由度が下がる一方で、上場のメリットを十分に得られていないケースも少なくないのではないかという指摘もありました。この点は、先ほどの日本の投資家の早期回収傾向とも関連しますが、時価総額数十億程度で、上場してしまうと、瞬間的に株価が上がってもその後は下がる一方ということも少なくなく、経営者にとっても、既存株主にとっても、新規株主にとっても、不幸なのではないかという指摘です。私には、その数字の当否は、わかりませんが、500億くらいになってからでないと、上場しない方が良いという指摘もありました。

ところで、日本には、自動車産業を筆頭に、多くのニッチ産業においても、製造業を中心に、世界市場で、大活躍している会社は少なくありません。しかも、製造業だけではなく、ファッションの世界、ゲームの世界のような、カルチャーに多くを依存していそうな世界でも、国境を越えて大活躍している会社があります。しかし、ネットの世界では、上記のような「大粒のベンチャーがない」という嘆きをきくことが少なくありません。これは、いったいどうしたことなのでしょうか。時代のせいなのでしょうか。カルチャーのせいなのでしょうか。シリコンバレーのVCが有能なせいなのでしょうか。失われた10年のせいなのでしょうか。このあたりは、最近の私の関心事であり、いくつか仮説はあるものの、確たるものはありません。今後の課題としたいです。

大変、ご無沙汰しております。諸事情により、更新が滞っておりました。

今日は、5月20日に開催予定の「Startup Engine 2011」というイベントについてのお知らせです。

来る5月20日の午後1時から、大阪中之島の国際会議場にて、「Startup Engine 2011」というイベントを開催させていただきます。

関西では、ベンチャーや起業に関連したイベントが少なくなりつつあるという話を聞き、全くの手弁当で、友人知人に声をかけて、志に賛同してくださる方々と立ち上げたイベントです。

今こそ、関西が頑張るべき時であるという声は少なくありません。関西は、古代から江戸時代や近代にかけて、起業や金融という意味では、最先端の地でした。今も、高い技術や志を持つ方が大勢いらっしゃいます。また、商人の地、大阪だけではなく、伝統と新しい価値が融合する地、京都、先端技術の拠点を持つ古都奈良、新しい文化とバイオベンチャー等のシードも多い神戸等、素晴らしい土地が近接しているという地の利があります。一方で、ここ数年、「最近の関西・大阪は元気がない」という言葉を聞くことも少なくありませんでした。

そこで、微力ながらも、関西でも、起業家精神とそれを支えるネットワークを構築するため、そして、その土壌を耕し続けるため、志を同じくする人と一緒に、関西、そして日本が、新しい産業のエンジンとなることを祈念して、「Startup Engine 2011」というイベントを開催させていただく運びとなりました。

新進気鋭の素晴らしいスピーカーに、お話をいただけることになっております。
僭越ながら、私も最後にお話をさせていただく機会を設けさせていただいています。


【日 時】 2011年5月20日(金)13:00〜17:30
【会 場】 大阪国際会議場
【後援・協力】 [後援]大阪証券取引所 [協力]株式会社 幕末
【セッション】
Session 1 ライフネット生命の挑戦

ライフネット生命保険株式会社 代表取締役副社長 岩瀬 大輔 様

Session 2 マイノリティのすすめ

日本マイクロソフト株式会社 コミュニケーションズ・セクター

クラウド・ソリューション営業部 統括部長 今井 早苗 様

Session 3 等身大の経営者が語るBuyout

株式会社オークファン 代表取締役 武永 修一 様
ジンガジャパン株式会社 ジェネラル・マネージャー 山田 進太郎 様
株式会社美人時計 専務取締役 早 剛史 様
株式会社アトランティス 代表取締役社長 CEO 木村 新司 様

Session 4 目指せ!Good to Great~起業を支えるプロフェッショナルの立場から~

アントレプレナーファクトリー 代表取締役嶋内秀之
武田公認会計士事務所 公認会計士武田雄治
山本・森・松尾法律事務所 弁護士森理俊

【参加費】 一般席:3,000円(税込)  学生席:1,000円(税込)
※学生席には限りがございます。
【ウェブページ】http://startup-engine.com/
【懇親会】 夜6時から、開催予定(参加費5000円)

お申し込みは、こちらからお願いいたします。

なお、夜6時からの懇親会には、スピーカーの方の中からも参加していただける予定です。

起業について関心のある方、企業内部で新しいことに挑戦する方、ベンチャー企業への就職や転職を考えたことのある方、ベンチャー・キャピタル等の投資家の方、証券会社等の金融機関で上場やバイアウトを担当されている方、中小企業・ベンチャー企業のサポートをしているプロフェッショナルの方など、多くの方のご参加をお待ちしています。


日本では、代表取締役社長が会社で一番エラいという観念が、東証一部の大企業から、中小企業・零細企業・ベンチャー企業までにいたるほとんどの会社で色濃く残っているように思います。社長は、会社の行為について全責任を持つ代わり、社長が一番エラく、他のものは最終的には逆らえないという関係性があるともいえるかもしれません。

会社の代表者が、会社の行為に責任を持つ立場にであることは、法律的に間違いありません。このような「社長がエラい」という観念は、歴史的にどのように発展してきたのかはよくわかりませんが、ひょっとしたら、封建時代(御恩と奉公の時代)が長かったからかもしれませんし、戦国時代・幕藩体制における家父長制・家督制を戦前まで引きずっていたからかもしれません。それに、このような観念は、日本固有のものではなく、ヨーロッパでも少なくないでしょうし、アメリカでさえ全くないということはないと思います。

しかし、一方で、会社の発展、特にスタートアップやアーリーステージにおける発展を考えた場合に、常に社長が一番エラいという考え方ではない発想が有効となることはあり得るように思います。(あえて「エラい」という曖昧な単語を用いているのは、「社長」という言葉に潜む感覚的なものを表したいという趣旨ですので、不正確な議論となってしまうことはお許し下さい。)

一昨日のエントリー「あるベンチャー・キャピタリストからのメッセージ」で紹介させていただいた原丈人さんの『21世紀の国富論』 には、次のようなくだりがあります。

肩書きは、必ずしも上下関係を意味するものではない
 私たちベンチャーキャピタリストは、優れたビジョンや才能をもつ個人に出会うと創業を勧めます。しかし、この人物を新しい会社の社長に据えることは、決して多くありません。多くの場合、彼が担うのは研究開発担当の部長という役職です。一方、管理能力を要求される社長は、なるべく外部からスカウトするようにしています。
 日本の感覚で言えば、創業者が社長にならないなんて、ずいぶんひどい話だと思われるかもしれません。けれども創業者の多くは、そもそも財務やマーケティング、セールスといった仕事をやりたがらないものです。むしろ研究開発に専念し、没頭したいというタイプの方が多い。とりわけバイオテクノロジー分野のように、発明・発見型の企業ではその傾向が強いでしょう。また研究開発に対する適正が高いからといって、社長職が務まるものではありません。社長職というのは、マネジメントに関するプロでなければ決して十分な職務を遂行できないものなのです。
 アメリカでは管理に長けた人物が社長を務め、技術開発に向いた人が研究開発担当部長、もしくは研究開発担当副社長を務める、というのは当たり前のことです。
(中略)
 アメリカでも日本でも、ベンチャービジネスをつくりだすような創業者はクリエイティビティ(創造性)に富んでいても、マネジメント(管理)は不得意であることが多いのは同じです。
 しかし、日本の銀行はそんな彼らに対して「経営者なら在庫管理や財務を勉強しなさい」と指導する傾向が強い。これでは、せっかく際立ったビジョンがあったとしても、生かされないまま不得意なことに時間を浪費することになりかねません。クリエイティビティとマネジメントは、しばしば相反する概念なのですから。


社長よりも部長のほうが高い報酬をもらうこともある
(中略)
 創業期の企業では始終ポジションが変わるものですが、そこに降格といった暗いイメージはありません。
(中略)
 実はアメリカのベンチャー企業で、社長が最高給をとっているというケースはむしろ稀です。特異な才能をもった人間は、企業のマネジメント能力をもつ人間より少なく、求めようとしても求められない希少価値があります。それならば、社長の報酬よりも研究開発担当部長の報酬が高いのは当たり前でしょう。
(引用終わり)


米国グーグル社のCEOであるEric Schmidt氏は、創業者ではありません。米国グーグル社は、ベンチャーキャピタリストからプロの経営者を雇い入れるよう強く求められたため、同氏が外部から招聘され、当初は会長となり、その後CEOに就任し、現在に至っています。創業者の1人であるLarry Page氏は製品部門担当社長に、Sergey Brin氏が技術部門担当社長になりました。

日本でも研究者の方が始めたベンチャー企業は少なくありません。大企業の研究職に在籍していた方が設立したベンチャー企業や、大学発ベンチャー企業等です。そのような会社では、研究者の方や教授の方が社長に就任されることがほとんどです。ただ、既に述べたように、優れた研究者が優れた社長・経営者とは限りません。老婆心と言われればそれまでですが、社長という言葉に惑わされず、社長を1つの役割に過ぎないと考え、ベターチームを作ることを優先することにより、道が開けるベンチャー企業も少なくないのかもしれないと思うことがあります。

ただ、現実に、プロの経営者を適切にアレンジすることは、優れたベンチャーキャピタリストでも容易ではなく、また日本では、そこまでプロの経営者が流動的ではない(そもそも希少?)こともあり、なかなか実現は難しいでしょう。

それでも、個人的には、そのような体制が整えば、成長する可能性がある開発系のベンチャー企業は少なくないように思います。その意味で、「社長が一番エラい」という観念から脱却し、経営者を1つの職人的仕事と捉える文化や、経営者となり得る人材が豊富にいるという環境もベンチャー企業が育つための生態系の一環を成すのかもしれません。

2010年12月3日  6:30 AM |カテゴリー: ベンチャー・キャピタル, ベンチャー・ビジネス |1件のコメント

日本の優れたベンチャー・キャピタリストに、原丈人さんという方がいます。「日本の」と書きましたが、正確な記載ではないかもしれません。国籍が日本であり、母国語は日本語であると推察されますが、主な活躍の場は米国シリコン・バレーですので、米国のベンチャー・キャピタリストと表現しても差し支えはないと思います。残念ながら私は直接お目にかかったことはありません。

この原丈人さんが執筆された本に、『21世紀の国富論』という本があります。私は最近この本を手にしました。この本は、2007年6月に出版された本ですので、最新の情勢が含まれているではありませんが、日進月歩のベンチャーの世界で普遍的に通じる内容に加え、経営全体やコーポレート・ガバナンスについての鋭い洞察が数多く含まれていますので、経営者やこれから起業を目指す方、その他、企業に関わる多くの方に読んでいただきたいです。

筆者は、経営の道具であるはずのROEを目的にすることは、本末転倒であり、たとえ短期的にROEが下がろうとも、研究開発にお金をかけ、内部留保を大切にし、優れた工業製品を作ることが重要であると説いておられます。本書中の印象的なフレーズをいくつか紹介させていただきます。

・アメリカに理想のガバナンスはない / 機能しなかったアメリカ型のコーポレート・ガバナンス


・(当たり前のことですが、)財務は経営の主役ではない / ゲームに踊らされて力を失ったアメリカ


・内部留保は中長期の経営に不可欠


・ベンチャー・キャピタルが果たす大きな役割は、兆円単位の新しい基幹産業を生み出すような技術を見抜き、それを長期間にわたって育てていくこと / シリコンバレーでは、もはや「本物のベンチャーキャピタルは死んだ」 / 小さな成功ばかり志向するベンチャー企業


・金融商品化してしまった企業、産業


本書のすべての項目について、すぐに首を縦にふることができたわけではありませんが、様々な視点からの数多くの指摘は、大変勉強になりました。特に、「企業は誰のもの」という議論に、意味はない(株主だけのものでも、従業員だけのものでもなく、すべてのステークホルダーを含めた仕組み)という点は、かねてより考えていたことと同じであり、心から納得できるものでした。

ところで、本書には、昨今、話題となっている社外取締役の議論についての安易な制度設計論に対する警告も含まれているように考えます。詳しくは本書を参照していただきたいのですが、少し触れさせていただきます。実際に多くの、そして様々なステージの欧米企業の社外取締役を務めた筆者は、社外取締役が過半数というアメリカ型のコーポレート・ガバナンスは、実際には機能しないと主張されています。それは、結局、(このような制度を採用したとしても)原則論とかけ離れ、CEOが推薦した人が社外取締役として選ばれることが多く、馴れ合いが生じることが少なくない上、仮に株主の意向を反映する人が社外取締役に就任したとしても中長期の視野に立った経営より、短期的に株価を上げるような施策を望むことが多いからであると述べています。日本の会社法の制度設計論が、このような現場の声を無視した頭でっかちの議論とならないことを望みます。

ちなみに、この本にiPodは少し出てきますが、2007年1月に発表され同年6月から発売が開始されたiPhoneとその後のアップル社の大躍進については出ていません。クラウドという言葉もありません。個人的には、筆者に、お金目当てで経営をしているとはとても思えない天才的経営者に率いられているアップル社が今のiPhoneやMac Book 等の魅力的なApple製品群を提供している現状について、その評価をお聞きしてみたいです。筆者の造語であるPUC(パーベイシブ・ユビキタス・コミュニケーションズ)に今のところ一番近いのもiPhoneだと思われますので、こちらの観点からもお聞きしてみたいです。

2010年12月1日  6:30 AM |カテゴリー: ベンチャー・キャピタル, ベンチャー・ビジネス |1件のコメント


ベンチャー企業の社外取締役として、ベンチャー・キャピタルから派遣される取締役がいます。今回は、このベンチャー・キャピタルから派遣される取締役の役割について、考えたいと思います。

そもそも、なぜベンチャー・キャピタルは、投資契約書に取締役派遣条項を入れようとするるのでしょうか。それは、主に以下の2つの役割が考えられます。

1 適切な経営が行われているか、チェックする
2 株主として、企業価値が上がることに貢献できる可能性を見逃さない


1の「適切な経営が行われているか、チェックする」というのは、決して現実に経営全般を監視することを意味するわけではありません。理想としては、経営全般の監視ができれば良いでしょうけれども、1人の社外取締役が為し得る現実としては、(i)月次決算や事件・事故の報告を受けて、売上や費用の変動及びその原因を知ること(過去業績情報の収集及び分析)、(ii)各プロジェクトの進捗状況、製品やサービスの内容やリリースの見込みを知ること(将来業績予測に関わる社内情報の収集及び分析)、(iii)既存及び新規の取引先との取引・交渉の状況、新規事業・製品・サービスの内容や見込、顧客・潜在顧客動向、ライバル社・競合製品・新規参入の動き等の分析・検討(将来業績予測に関わる社外情報の収集及び分析)にかかわることにより、会社が健全に発展する様に指導し、代表取締役の決断を支援するということになるでしょう。通常は、変なお金の動きがないか、投資した資金が有効に使用されているか(投資した資金の想定外の使用も問題であるが、資金を使用しないことも問題。使用しない問題については、こちらを参照「ベンチャー企業のお金の使い方」)といった点に焦点をあててチェックすることが多いと思います。勿論、ベンチャー・キャピタルから派遣された社外取締役とはいえ、オフィス内に机があり、週に2~3日以上のペースで業務に携わっている方もおられますので、一概に言えるものではなく、より広範囲に監視等されているケースもあるかと思います。

社外取締役がチェックすることの動機・背景事情には、ベンチャー・キャピタル・ファンドへの出資者(投資家=LP:有限責任組合員)への説明義務があります(株主として会社が健全に成長することへ期待しているのは勿論です。)。ベンチャー・キャピタルとしては、投資先企業から話を聞いて、ファンドの出資者に報告できるようにする必要があります。(なお、実務上、VCのLPへの説明責任と、取締役としての善管注意義務・守秘義務の抵触といった問題が生じることがあり、悩ましい局面が生じることがあります。投資契約書等で予め解決しておくのがよいでしょう。)従って、ベンチャー・キャピタル側としては、ファンドの出資者にきちんと説明を尽くせる程度に、投資資金の使い道や投資先の状況を把握しておく必要があるのです。

投資先企業の業界については、ベンチャー・キャピタルの担当者もある程度詳しいことが多いですが、普通は投資先企業の社長の方が詳しいものです。ですから、ベンチャー・キャピタルから派遣された社外取締役は、新規のプロジェクトやリリース、製品概要について、余計な口出しをして、イノベーションを抑制するようにならないように心がけていることも多いでしょう。

2の「株主として、企業価値が上がることに貢献できる可能性を見逃さない」とは、何でしょうか。それは株主や当該社外取締役がもっているネットワークや情報、知識、アイディア等によって、事業の効率を高めたり、新規の取引につなげたりすることです。

独立系のベンチャー・キャピタルでは、投資先に取締役を派遣することは少なくなく、多くの派遣取締役がMBAホルダーや事業経営の経験が豊かな方です。この方々は、1のチェック機能が果たせるのは勿論のこと、取締役個人の力量で、マーケティング戦略を立案したり、コストを削減をしたりすることが可能ですので、投資先の企業価値の向上に貢献することが可能です。

また、ベンチャー企業が、商社系のベンチャー・キャピタルからの投資に対し、その親会社となっている商社のネットワークを利用したいという期待を抱くことも少なくありません。実際、商社系のベンチャー・キャピタルが、そのネットワークから投資先のビジネスに有用と思われる人を投資先に紹介することは稀ではありません。

ところで、法制審議会会社法制部会第4回会議(平成22年8月25日開催) の参照資料・部会資料2・「企業統治の在り方に関する検討事項(1)」 【PDF】 には、次のようなくだりがあります。

社外取締役の役割等については,「平時における経営者の説明責任の確保,有事における社外の視点を入れた判断の担保や経営者の暴走等の防止・安全弁といった役割」や,「取締役の業務執行に対する監督に加え,当該社外又は独立取締役の持つ識見等に基づき,外部的視点から,いかに企業価値を高めていくかといった助言機能」等が挙げられている。これらも踏まえると,社外取締役に期待される主な機能については,以下のような整理をすることができるのではないかと考えられる。
① 経営効率の向上のための助言を行う機能(助言機能)
② 経営者の評価・選解任その他の取締役会における重要事項の決定に関して議決権を行使することなどにより,経営全般を監督する機能(経営全般の監督機能)
③ 会社と経営者との取引の承認など会社と経営者等との間の利益相反を監督する機能(利益相反の監督機能)
(引用終わり)


これにあてはめると、私の分析の1「適切な経営が行われているか、チェックする」は強いて言えば②と③に、2「株主として、企業価値が上がることに貢献できる可能性を見逃さない」は①に該当します。とはいえ、②の「重要事項の決定に関して議決権を行使することなどにより」という部分は、ベンチャー企業の社外取締役について言うのであれば、「月次決算や事件・事故等の会社の過去業績に関わる報告を受け、さらに社内及び社外における会社の将来業績に影響を与える情報を収集及び分析する等すること、その他取締役会の様々な意思決定に関与することなどにより」となるのではないかと考えられます。

なぜなら、実務的には、報告事項や事業展開の決定事項に接することへのウェイトが、会社法的な重要事項の決定に対するものと比べると、同じかそれ以上に大きいと思われるからです。例えば、ベンチャー企業では取締役会と株主総会が対立することがないわけではありませんが、代表取締役は、株主の意向で決まることがほとんどで、取締役会の選任・解任が実質的な意味を持つケースはそれほど多くありません。その意味では、代表取締役の選任・解任議案といった重要事項の決定への議決に関わるためというよりか、月次の業績報告を聞くことの方が重要性があります(「企業統治の在り方に関する検討事項(1)」の「平時における経営者の説明責任の確保,有事における社外の視点を入れた判断の担保や経営者の暴走等の防止・安全弁といった役割」というのは意思決定への議決権行使以外の重要性を述べているものだと理解しますが、同資料の分類では少しわかりにくくなってしまっています。)。

この議論がそのまま上場企業、一部上場の巨大企業に当てはまるとは申しませんし、全てのベンチャー企業に当てはまるわけではないと思いますが、近時盛んな社外取締役(強制)導入論についての議論の参考になれば幸いです。特に、この議論を踏まえると、一般論として、社外取締役の条件としては、(1)会計資料等から業績や状況を分析できること、(2)会社のビジネスや業界に詳しいこと、(3) 企業価値の向上が期待できる知識や知恵、ネットワークを持っていること、を挙げることができると考えますが、現実に上場企業がそのような人材を調達するのは現実的か(若しくは、このような条件のいくつかは満たさなくてもよいか)という観点から検討することも必要なのではないかと考えています。

以前のエントリーでご紹介した『ガズーバ!―奈落と絶頂のシリコンバレー創業記』という本の中に、シリコンバレーで創業したベンチャー企業がベンチャー・キャピタルからの資金調達に成功した後、ベンチャー・キャピタルの担当者からお金の使い方について、指導されるというシーンがあります。
 

「金の使い方が遅い!」と叱られる

昔は投資の目的は「Preservation of Capital」、すなわちインフレで資産が目減りしないようにするのが目的だった。でもVCの投資目的は違う。だから「目的遂行のためにしっかり金を使え! 使ってないってことは何かがおかしい!」という具合になる。必要なコンサルタントはどんどん雇って、プロジェクトをとにかく前へ前へと進めなければならない。(引用終わり)

 
ここには、株式で資金調達した会社やベンチャー・キャピタルからの出資の大きな特徴が出ているように思います。勿論、やみくもにお金を使うことが奨励されているわけではありません。しかし、経営者が自分でコツコツ地道に時間をかけてプロジェクトを進める代わりに、お金を使って効率よくスピードアップする(そして、チャンスを逃さない)ことがこのような世界では求められているように思います。一歩進んで言うなれば、資本効率について、常に株主から強く意識させられているということでしょうか。

この本では、実に様々なコンサルタントが登場します。著者の大橋禅太郎さんは、そのうち1人の会議を効率的に進めるためのコンサルタントから受けたレクチャーを基に、『すごい会議-短期間で会社が劇的に変わる!』という本を出して、その内容でコンサルティングをされている程です。他にも、マーケティング・コミュニケーション、CFO、総務、広報、人材採用と、様々なレンタル人材や、ネーミング、ロゴ、法律家等のコンサルタントが出てきます。こういった人材レンタル文化、コンサルタント文化もシリコンバレーのスタートアップ・サポートの生態系の1つといえるのでしょうね。

日本の製造業系のベンチャー企業で、技術や商品のアイディアは良いが、その他の分野(マーケティングやブランディング、総務、知財戦略から経営そのものに至るまで)はカバーできていないというケースが時々みかけられるように思います。このようなケースでは、極端な話、他からCEOやCFO、その他のプロフェッショナルをレンタルし、創業者兼技術者は、一旦、CTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)等になることも含めて、検討することにより、道が開けることがあるのではないでしょうか。第三者がこのようなことを申し上げるのは筋違いのことも少なくないですが、一度、思考実験だけでもして頂いて損はないかと思います。

2010年10月29日  11:45 AM |カテゴリー: ベンチャー・キャピタル, ベンチャー・ビジネス |1件のコメント


30日の日本経済新聞に、「エフオーアイ粉飾事件、東証などを損賠提訴 株主ら「上場チェック不十分」 」という記事がありました。

東京証券取引所マザーズ上場が廃止となった半導体製造装置メーカー「エフオーアイ」(相模原市、破産手続き中)の粉飾決算事件を巡り、株価下落で損失を被ったとして、同社の株主らが29日、証券会社や東証などを相手取って、総額約2億8千万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。

訴状によると、原告は1人当たり最大で3千万円余りの損失を受けたとして「監査法人、証券会社、取引所の3重チェックは空虚。見抜けない粉飾ではなかっ た」と主張。弁護団は「東証が上場審査について訴訟で責任を問われるのは初めてではないか。審査の信頼を守るためにも、民事で実態を解明したい」としてい る。(引用終わり)


とあります。

この訴訟は、様々な論点が含まれることが予想されますが、証券会社の引受審査が、どの程度行われていれば、免責されるのかという点についての判断がなされる可能性が高く、今後の引受審査の実務に影響を与える可能性があります。

いわゆる継続開示書類と呼ばれる有価証券報告書については、そもそも「主幹事証券会社」という概念もなく、虚偽記載について証券会社が責任を負うということはありません。

しかし、発行市場では、目論見書等や有価証券届出書の虚偽記載について、幹事証券会社(目論見書等の使用者、元引受契約を締結した金融商品取引業者)が責任を負う可能性があります。

この場合、ざっくりと申し上げると、原告(株主)側で、 「重要な事項の虚偽記載等」 + 「損害」 を立証すれば、被告(証券会社)側では、 「虚偽記載等の不知」 + 「相当な注意を用いたにもかかわらず知ることができなかったこと」を立証しなければ(原則として)免責されません(他にも、取得者が虚偽記載等について知っていた場合に免責される場合があります。)。なお、有価証券届出書の虚偽記載等については、財務計算書類は「虚偽記載等の不知」のみが免責要件となっています。

「相当な注意」とは、どの程度のデュー・ディリジェンスが為されたかという点につきますので、その点の事実の積み上げが裁判の中で明らかになってくるのかもしれません。和解での解決の可能性がどの程度あるかは全く想像できませんが、判決での解決となる可能性も十分にあります。判決が出た場合は、この「相当な注意」とは・・・という点について判示される可能性も十分あり得ると考えます。IPO 関係者やベンチャー・キャピタリストにとって、要注目の裁判となります。

被告当事者は、証券会社の他、役員、監査法人や証券取引所等が挙がっているようですが、免責要件がそれぞれ異なりますし、「不知」の立証も異なるでしょうから、一部の被告のみ責任が認められる可能性もあります。そのあたりも要注目です。

なお、この「相当な注意」についての話は、10月26日(火)の講演でも触れさせていただく予定です。

【追記:10/1】

※ 10月26日(火)の講演は、事前のエントリーが必須となります。エントリーをされていない方は、事前に、当職から池銀キャピタル様に連絡する必要がありますので、必ず御連絡いただきますようお願い申し上げます。当日、エントリー無しにお越しになった場合、入室できない可能性もありますので、御留意下さい。

9月11日付けの日本経済新聞に、「日本VC協会が国際会議」という記事がありました。

日本ベンチャーキャピタル(VC)協会は11月、アジアのVC関連団体などを集めた国際会議を開く。アジア域内で国境を越えた投資が増えているため、各国のVC業界の情報を集約する組織の設立を検討する。投資マネーを日本国内に呼び込むのが狙いだ。(中略)
韓国や香港、シンガポールのVC関連団体の代表らが出席する。欧州ベンチャーキャピタル協会も参加し、これまでの取り組みを説明する。(引用終わり)

日本では、ベンチャーキャピタルに関連する数字や資料が集まりづらいことがありましたが、この動きはとても良い動きだと思います。ベンチャー業界全体の統計にもつながる可能性があります。そして、なにより、ベンチャー企業に投資家が投資をするという動きに、国境は関係ありません。投資家が海外投資家のケース、ベンチャー企業が海外のケースのいずれも増えてきたように思いますが、さらに加速するでしょう。

先日、日本のmygengoというベンチャー企業がシード・ラウンドで、$750,000 (約6300万円)という金額を、Dave McClure等の著名エンジェル投資家から資金調達したという記事がありました。

myGengo、国内外のエンジェル投資家ら10者から総額約5,000万円を調達

Transalation startup myGengo raises $750,000

この会社は、代表も親会社も米国人ですので、シリコンバレー式の言語の壁やシード・ラウンドのファイナンスに慣れておられると推察できますが、このようなケースが日本のスタートアップに増えてくることが、経済の活性化につながると思います。ビジネスに、国境はありません。シンガポールの投資家をLPに持つ日本のVCが、ベトナムのスタートアップに投資して、それが香港市場でIPOする、等というケースが起きるのも、そう遠くない日の出来事かもしれません。

2010年9月13日  8:30 AM |カテゴリー: ベンチャー・キャピタル |コメントはまだありません


アメリカの話です。

先週、9月2日のTech Crunchの記事は、Jessica Mah(20歳)という女性が、彼女の金融サービスサイトInDineroのためのシード資金の調達を1週間後に完了することを報じている。

この記事によると、

Mahは、最初のスタートアップを立ち上げたのが13歳のときである。そして15歳で、カ大バークレイ校のコンピュータ科学科に入学、在学中にinternshipIN.comを立ち上げた。20歳で100万ドル以上を調達した彼女には、これからまだまだやりたいことが、たくさんあるようだ。

このラウンドに参加したと確認されている投資家は、500 StartUpsのDave McClure、MicrosoftのFritz Lanman、YouTubeのJawed Karimである(SV AngelのようなシリコンバレーのVIPたちのための席があと3つある)。(引用終わり)

記事の原文は、こちら。

20 Year Old Founder Jessica Mah Gets $1 Million Put Into Banking Startup InDinero

20歳の’神童’女性ファウンダJessica Mahが小企業財務サイトInDineroに$1Mを調達

彼女のインタビューの動画も見れます。聡明で、強いリーガーシップを持っていそうな雰囲気の女性です。

日本でも、どんどんと若年起業家が現れるといいですね。

 
   
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