森法律事務所
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今回は、第1回SUEセミナーとして開催する「会社が成長するために知っておくべき契約の知識」のお知らせです。

SUEセミナーとは、スタートアップエンジンから派生した企画で、ベンチャー企業や中小企業を念頭にして、会社の経営陣や法務担当者が会社を成長させるために絶対に知っておくべき知識をお届けすることを目的としたセミナーです。

今回は、第1段として、「会社が成長するために知っておくべき契約の知識」というタイトルで私が講師を務めさせていただく予定です。

下記の要項で開催しますので、皆様のご参加をお待ちしております。

◆日時
2011年9月22日(木)19時00分 ~ 20時30分


◆参加費
2,000円


◆場所
大阪市北区梅田2丁目5番25号 ハービスPLAZA6階


お申し込みはホームページをご覧ください。

http://startup-engine.com/event/379

2011年9月5日  6:30 AM |カテゴリー: その他 |コメントはまだありません

先週末に、出席したSessionの中で、事前の予想に比して最も面白かったものが、5月29日(日)に京都大学で開催された超交流会2011の「情報学の学生よ、挑戦せよ」でした。

このSessionでは、国立国会図書館館長であり、京都大学の第23代総長でもある長尾眞京都大学名誉教授がご登壇されました。

正直、私は、法学部出身で、長尾先生の業績は全く存じ上げず、入学時に総長をされていたといった記憶しかありませんでした。

しかし、長尾先生は、パワーポイント等をいっさい使わずとも、力強いメッセージを発することができるということ、そして、チャレンジ精神、ベンチャー精神に年齢等全く関係ないことを、このSessionで証明されました。充実した講演でした。

長尾先生は、情報学という学問の礎を作られた先生でおられ、言語処理等の分野で、相当以前から、今のGoogleやWikipediaで実現しようと挑戦している内容を既に30年近く前に提唱されていたとのことです。そのご講演の中で、私が印象に残った話を取り上げさせていただきます。

(過去を振り返って)
・ 機械翻訳はいずれ必ず成功する。今は、日韓で97~8%、日英で85%、日中で70~5%くらい。
・ 1994年には電子図書館というテーマで、いずれは、本単位から欲しい情報のユニット単位で検索・調査し、hypertext構造によって自動発見+リンクで、情報がリンクされる時代になると考えていた。
・ その時代に、情報端末とそのインターフェースが重要となるはずとも考えていた。


(若い人へのメッセージ)
・ 何でも面白いことをやりなさい。
・ 電電(京都大学工学部電気電子工学科の意)の同窓会に出席したが、あまり熱気がない。規制(既成?)の枠、よろしくない。
・ 今の時代、40代の人より、20代、30代の人の方が面白い。特に、判断力があり、仲間とやることに慣れており、孤立していない。競争相手と上手にコミュニケーションをとっている。
・ 他の分野の人間ともっと交わること。今の情報学の世界、エンジニアの人は、法学や社会学の視点がかけていることが少なくない。
・ 関西は、せっかく京都・大阪・神戸・奈良等と文化の違うエリアがあるのに、バラバラのままで、切磋琢磨がないのがもったいない。
・ 自分たちの文化をもっと大切にせよ。浮世絵等の江戸文化は、それそのものが世界に誇れるものだし、通用するものである。外ばっかりキョロキョロ見るのではなくて、「自分は、これをやることで世の中の役に立つ」ということをやっていると、結果的に世界に通用する。
・ 20世紀は科学技術の時代。21世紀は確立した法則を用いて新しいものをクリエイトする時代。
・ 情報学を情報科学という名前にしなかったのは、「科学」という枠にとらわれないようにするため。
・ 国立国会図書館の全ての情報を電子化したい。
・ 日本の著作権法の問題は深刻。
・ (「「面白いこと」の判断基準はありますか」という質問に対し)常に何が面白いかということを発見するには、惨憺たる苦労が必要。常に考え続けるべき。こんなことが面白いんじゃないか、あんなことが面白いんじゃないかと辛抱強くいろいろ考えているうちに、ある瞬間に「これだ」というのが出てくる。辛抱強く考えるというのが、簡単そうで意外に難しい。
・ (「素敵だと思う人はいますか。どういう基準ですか」という質問に対し)セネカやキケロをはじめ、本の中には沢山いる。現に会った中では、業績や肩書きではなく、やっぱり人間的魅力。人柄。


私見が混じってしまったものや、意訳や誤解等があるかもしれませんが、お許しいただければ幸いです。間違いがあれば、訂正いたします。

実際の講演では、国立国会図書館館長という肩書きからは想像もつかない程、今もチャレンジし続けておられることがよくわかる話が満載でした。株式会社はてなの近藤淳也社長が、1人の京大卒業生として、「卒業式のときに、旅行にいって出席せず、先生の話を聞けなかったことをとても後悔しました。」と言っておられたのが印象的でした。

なお、長尾先生は昨年、自叙伝「情報を読む力、学問する心 」を出版されたとのことです。この本を見れば、だいたい同じようなことが書かれているはずとおっしゃってました(私もまだ購読できていません。悪しからず。)。

2011年6月1日  6:30 AM |カテゴリー: その他, ベンチャー・ビジネス |コメントはまだありません

昨日、スタートアップエンジン2011(SUE2011)を開催させていただきました。大勢の素敵な方が会場に来て下さいました。

私自身、このようなイベントを主催するのは、初めてのことで、いろいろと不手際があったかと思いますが、総じて、大変好意的な感想をいただいており、心から嬉しく思っています。

個別のSessionの具体的な内容は、いずれまとめて、お伝えしたいと考えています。

お越し下さった皆様、そして、開催にあたり甚大なご尽力を賜りました営業創造株式会社及びアルファクリエイト株式会社の皆様、また、ご後援下さった大阪証券取引所様及びご協力くださった株式会社幕末様に御礼申し上げます。

P.S. Session 1にて、素晴らしい御講演をしてくださったライフネット生命の岩瀬さんの新刊本「入社1年目の教科書」が、昨日発売開始になりました。ご興味のある方は、是非お読みください。

2011年5月21日  1:50 PM |カテゴリー: その他, ベンチャー・ビジネス |コメントはまだありません

震災関連の法律問題について、Q&Aが各所から出ています。主なものを紹介させていただきます。

■ 日本弁護士連合会災害復興支援委員会からは、「東日本大震災法律相談Q&A」が出されています。

http://www.nichibenren.or.jp/ja/special_theme/data/soudanQ&A.pdf (PDF)

関東弁護士連合会が出版した「災害時の法律実務ハンドブック」(新日本法規出版(株))の設問及び回答を簡略化し編集し直し,それに今回の震災に特有と考えられる津波災害と原発災害の設問,回答を追加した構成での御提供とのことで、「同書籍は2006年(平成18年)の出版であり,その後に改正された特定商取引法や被災者生活再建支援法などの改正内容は反映されておりませんので,ご注意ください。」とのことです。

なお、このQ&Aについては、「第17章原子力被害に係る問題」Q170以下については、そもそも法律問題ではない問題が混じっている点や、水戸地裁平成20年2月27日判決、東京高裁平成21年5月14日判決等、参考とすべき裁判例の内容が反映されていない(Q190)点等、実務家を中心に批判が少なくありませんので、ご留意下さい。

新日本法規出版株式会社さんのWEBサイトでは、下記の案内があります。
「災害関連法令一覧とQ&A災害時の法律実務ハンドブックの改訂について」


この中で、同社の御好意で、平成18年版の「Q&A災害時の法律実務ハンドブック」の内容がテキストデータで提供されています。

http://www.sn-hoki.co.jp/shop/new/300.html

■株式会社商事法務さんのWEBサイトでは、『地震に伴う法律問題Q&A』(近畿弁護士連合会編、平成7年3月刊行)のほか、「NBL」の災害関連記事をPDFで公開中とのことです。

http://www.shojihomu.co.jp/

弁護士の方は、弁護士会のeラーニング等もご活用ください。

2011年4月8日  1:30 PM |カテゴリー: その他 |コメントはまだありません

今回の大地震の被害に遭われた皆様に、心よりお見舞いを申し上げます。特に、地震やこれに伴う津波・火災等により生命や財産を失われた方々にお見舞いを申し上げるとともに、罹災地にて人命救助や避難所での生活支援に従事しておられる方々、その他の地域にて様々な形でご協力されている方々に心より敬意を表します。

現在の段階では、私にできることは限られております。当ブログでは、震災に関連する情報については、出来る限り正確なもののみを発信しようと心がける所存です。

2011年3月14日  5:00 PM |カテゴリー: その他 |コメントはまだありません



「スピードが大事なんじゃない。すぐ役に立つことは、すぐに役立たなくなります。何でもいい、少しでも興味をもったことから気持ちを起こしていって、どんどん自分で掘り下げてほしい。そうやって自分で見つけたことは君たちの一生の財産になります。そのことはいつか分かりますから」

(引用終わり。「週刊ポスト2011年3月4日号」より)




ネットで話題になった記事からの引用です。『銀の匙』1冊を横道に逸れながら中学3年間かけて読み込む授業をした、ある国語教師の記事です。

私も、この考え方を、普段から心がけたいです。

振り返ってみると、学生時代に学んだことのうち、当時、興味をもって、じっくりと時間をかけて、自分なり考えたことが、今でも一番、生きているように思います。

司法試験であれば、「国民主権とは何か」「憲法とは何か」「「すべて国民は、個人として尊重される。」とは、どういう意味か」「法の下の平等とは何か」等という問いに真剣に考え、自分なりの答えを出し、先人の見解から学ぶというプロセスは、決して遠回りの道ではありませんでした。

しかも、これらのことを考える時に、小野紀明教授の政治思想史の講座とゼミで3年に渡って教えてもらったことは、大きく影響しました。この頃に学んだことは、長い目で見て、私の糧になっています(講座の単位は1年目で取得していましたが、その後も興味本位で授業に出ていました。)。小野紀明教授の授業は、プラトン、ソクラテスからニーチェにいたるまでを1年間で、その後、ニーチェから現代哲学(フーコー、サルトル、デリダ等)までを1年でするものでした。ゼミでは、古典をずっと読み、私のときは、ヘーゲルの『歴史哲学講義』を通読しました。あと、個別発表というのもあり、各人が興味をもったテーマについて、政治哲学的に議論するというもので、今にして思えば、こちらも本当に勉強になりました。

なぜ、民法は、総則、物権、債権とあるのか、ということも考えてみると面白いかもしれません。私なぞは、世の中の事象を「物」か「人」で分けようとする考え方(特に19世紀以前の西洋哲学の考え方)が背景にあったと考えています。物に対する権利が物権で、人に対する権利は債権ですが、それ以外の概念に対する権利については、民法には書かれていません。古来から、日本では、西欧ほどには、物/人という2項対立で考えてきたわけではなさそうですので、民法制定時に輸入されてきた考え方だと思われます。ちなみに、現代では、物といえるかわからないものや、物か人かわからないものが、いろいろ出てきて、修正を余儀なくされています。知的財産権や動物の問題もそうです。電気については、刑法でわざわざ「この章の罪については、電気は、財物とみなす。」という規定が置かれたくらいです。

法科大学院の学生や受験生は、日々お疲れだとは思いますが、時には、法律の構造や順番、なぜその文言が使われているのかということを味をかむようにして考えることも、如何でしょうか。

2011年2月26日  3:30 PM |カテゴリー: その他 |コメントはまだありません

皆さんは、カラミストという言葉は、ご存知でしょうか。

私は、いま、カラミストとカミツキストという新語(当時)をつくって、「からみ学」を唱える、なだいなださんの『からみ学入門』という本を読んでいます。

普段、何か事件が起きると、電話をかけてきて、愚にもつかない質問を投げかける記者に辟易とした著者は、ある日、奥さんとの会話で、妙にからんだことに着想を得て、電話をかけてくる新聞記者や雑誌の記者にからむことを思いつきます。

ー ぼくのところに、電話をかけてくる新聞記者雑誌記者にからんでやろう。ともかく、からんでやろう。とことんまでからんでやろう。
かくして、ぼくはカラミストとあったのであった。われ、いかにしてカラミストとなりしや、という問に対する答が、ここにある。(p.17)
(引用終わり)




この話は、人にかみつくカミツキストではなく、しらふで他人に堂々とからむカラミストになることを提案するという痛快エッセイです。よくよく考えれば、ソクラテスプラトンに始まり、昨年流行ったマイケル・サンデルまで、カラミストではないでしょうか。

ところで、この本を私が知ったのは、民事裁判の尋問についての日弁連研修です。上手に証人にからんでいくことが尋問の要諦であるということで、ご紹介いただきました。決して、カミツキストになってはいけない、と。いらだたない、こちらに有利な話は何度も話させる、逃げられないようにする、等。民事の尋問や普段のヒアリングに役立つエッセンスが沢山あります。

しかも、この本には、尋問に役立つという以外にも、多くの知恵があります。特に、普段の思い込みから脱却するための知恵、ゆったり考えて本質を見抜く視点等を得るためにも、お勧めの一冊です。その知恵の一部をご紹介します。

ぼくは世の中には、どうしてこうも正義派が多いか、と思った。その新聞記者などは正義派の代表のようなもので、大久保清に対して、しきりに、ふてえやろうだと怒っていた。こんなに正義派が多くて、それにもかかわらず世の中が不正だらけなのは、ぼくにはなんとも理解しがたいことである。だが、それよりも不思議なことは、この世の中で、正義派同士のあいだで、それもつかみかからんばかりのけんかが、しばしば行われることである。まあ、ヘーゲルが、なにかの本に「悲劇的なのは、われわれの世界にある対立が、正義と邪悪の対立ではなく、正義と正義の対立であることだ」と書いたのも、うなずけぬことではない。(p.33)


新聞の社会部記者の正義感とか、公憤とかいうものが、彼の仕事上のいらいらから出た私憤にすぎない場合もあることを認識した(p.43)


カラミストは、どんな正義にもたじろいではならぬ。また自分を正義派の味方と、安易に考えてはならない。(p.43)


わかったというのは、日本語では決してわかったことではなく、多くの場合逃げ口上なのである。わかった、わかった、と二回続けたら、絶対逃げ口上と思うべきだ。(p.57)


地べたにはうかぼちゃは、どこまではっても、地面しか見ることはなかろうが、相手にからんではいのぼるつる草は、高みからの見通しをえるだろう。(p.69)


相手がつまらぬことと思っている問題には、カラミストは、できるだけ大げさに答えねばならぬのである。そうでないと、どうしても相手のペースにはまってしまうことになる。(p.78)
(引用終わり)


このあたりで辞めておこうと思います。私が、読んでいて楽しくなってきましたので。それでは。

2011年2月24日  10:30 PM |カテゴリー: その他 |コメントはまだありません

10年前であっても、今であっても、シリコンバレーが起業と成長しやすい場所であることに異議を唱える方はあまりいないのではないかと思います。

2月22日に日本経済新聞から配信された「米サンノゼ市長「起業と成長しやすい場所であり続ける」「三度目の奇跡」インタビュー チャック・リード氏 」という記事では、シリコンバレーの中心都市であるサンノゼ市の市長がインフラ整備のために、どのような努力を行っているかが記述されています。

特に、印象に残った内容は、税制面での優遇策の余地はあまりない代わり、「行政が迅速に動くように努めている」という方針を示し、そのために「本社移転の手続きや、拠点拡大などの要望に他の自治体に比べ素早く応じる」という行政インフラの重視を心がけておられる点でした。さらに、「シリコンバレーでは、自治体もベンチャー企業と同じスピードで考えて行動することが大事。」ということで、スピードを重視している点も印象的でした。

政府や地方自治体がベンチャー支援となると、すぐに金銭面でのサポートが念頭に来ることが少なくありませんが、貸付の優遇措置等は、本当にベンチャー支援に資するか疑問の面がないわけではなく、逆に、このような行政インフラがスピード感をもって、使い勝手のよいものに変化するというのは、ベンチャー企業にとってありがたいのではないかと感じます。

日本では、法務局的な手続きは、全国一律ですので、なかなか地域間競争が起きにくいという状況にあるのは確かですが、その中でも、行政ができることについて、参考になるのではないかと考えさせられた記事でした。

2011年2月23日  6:30 AM |カテゴリー: その他, ベンチャー・ビジネス |コメントはまだありません

先日、ある会合にて、MBO事案で、PBRが1倍を下回っていた場合に、買い取るべき金額につき、少なくとも1株当たり純資産額は、株式の公正な価格として確保しなくてよいのか、という議論がありました。PBRとは、Price Book-value Ratioの略で、株価純資産倍率を意味します。すなわち、[(株価)÷(1株当たり純資産額)] を意味しますので、PBRが1倍を下回っていた場合とは、株価<1株当たり純資産額という状態です。この状態での公正な価格は、1株当たり純資産額を最低額とすべきではないかという議論です。

特に、少数株主を排除することが前提となっているMBOのようなケースで、少数株主として排除される側からすると、「PBR1倍以下の価格でしか買ってくれないのなら、清算して欲しい(清算すべき)」という期待があるだろうという問題意識から出た議論です。

この点については、商事法務No.1921(2011年1月25日号)の35頁に、太田洋著「サイバードホールディングス事件東京高裁決定の検討」という論文の1つのパラグラフに、下記の部分がありますので、参考になります。

3 PBRが一倍を下回っていた場合と「当該株式の客観的価値」

(中略)

この点、本決定は、・・・(中略)・・・(i)市場株価が当該会社の一株当たり純資産額を下回ることはまれではないこと、(ii)本件では、そのような事態が生じたのは一時期にすぎないこと、(iii)本件TOB公表前一カ月間の市場株価の終値による出来高加重平均値が直近の監査済み貸借対照表上の一株当たり純資産額を上回っていることを根拠に、PBRが一時期一.〇を割り込んでいたとしても、そのことから直ちに市場株価が企業の客観的価値を反映していないと認められる「特段の事情」があるとはいえないと判断している。しかしながら、少なくともわが国では上場会社のPBRが一倍を割り込むことはしばしばみられる現状であることや、平成に入ってからの資本市場に関するさまざまな法制度等の整備(インサイダー取引規制や相場操縦規制等の株式取引の公正確保のための規制の強化、株価に影響を及ぼすべき上場会社についての開示規制の充実、証券取引等監視委員会を始めとする資本市場の監視体制の強化・拡充)により、有価証券市場の株価形成機能が格段に向上している現在においては、少なくとも一カ月間(ないし一〇日間)の株価の平均値は株式価値の指標として十分信頼に足りると解されること等からすれば、仮に(ii)および(iii)のような事情がない場合であっても、特段の事情がない限り、MBOのためのTOBに先立つ時期に対象会社のPBRが一倍を割り込んでいても、「当該株式の客観的価値」に関しては、株価を基礎として算定することに問題はないと解すべきであろう。(引用終わり)



この議論は、「価値とは何か。」「価格とは何か。」という議論が内包されている難しい問題です。そもそも、価値なんてものは、人によって全然違うものです。株式についても、あと1株で過半数に到達する株主の1株と、0.1%の持ち株比率の株主が1株買い増す場合の1株では、購入者にとっての価値は違うといえるでしょう。しかし、ここでは、「客観的価値」又は「公正な価格」について議論しているのですから、いくら価値を議論しても市場で値段がついているのであれば、それが売り買いの成立している価格であり、市場が公正妥当であり、流通量(出来高)もあり、異常値ではないのであれば、すなわち資本市場の株価形成機能が健全な状態であれば、それを「客観的価値」又は「公正な価格」としましょうというのは、ある意味、筋の通っている議論ではないかと考えます。

それに、「1株当たり純資産額」は、もし清算すれば株主が実際にもらえる「1株当たりの金額」(清算価値)を意味するわけではありません。なぜなら貸借対照表に記載されている資産は、その金額で売却できることを保証する金額ではないからです。理論的には清算価値と言われますが、現実に清算時の残余財産として分配される金額を保証してくれるわけではありません。

しかも、解散決議の可決について現実性がないのであれば、清算価値が実現することもあり得ないのですから、清算価値を「客観的価値」といって議論しても意味がないのではないかという観点もあり得ると思います。

ただし、会社が発表している中期経営計画等を前提にして、収益還元法(DCF法)を考えた際に、それでも清算価値を下回るようであれば、それはそれで取締役としての善管注意義務や忠実義務に違反する可能性があるという問題は別途発生するように思います。経営者(取締役会)が、会社の資産を全部売却するより、何とか事業を継続して収益につなげる方が株主への利益に資すると判断しているからこその事業継続の判断であり、そうでなければ株主及び会社に対する関係上、解散して、清算するべき義務が認められる可能性は否定できないでしょう。

以上が私見です。ご参考になれば幸いです。

2011年2月22日  8:30 PM |カテゴリー: その他 |コメントはまだありません

最近、「男はつらいよ 寅さんDVDマガジン」というものを購入いたしました。

誠に恥ずかしながら、この年になるまで、映画『男はつらいよ』をきちんと見たことがありませんでした。
しかし、あまりの面白さに驚きました。まだ、シリーズのうち、ほんの数話しか見ていない私が論評するのも、分をわきまえない話かもしれませんが、少し触れさせていただければと思います。

まず今の映画では、見られなくなった、大家族や地域コミュニティーの中の愛情コメディーです。人と人の距離が近く、それゆえ数多くの人間模様とドラマが発生します。お決まりのプロットはありますが、決して単なる1対1の恋愛が魅力の中心にあるわけではありません。この映画のように、大きな話の流れも、細かなネタ的な面白さも、さらにその世界観も楽しめる映画というのは、それほど多くないのではないでしょうか。

ところで、この映画の魅力の1つは、寅さんの口上です。その説得力は、素晴らしいものがあります。

説得力の要素として、エトス(ethos)とロゴス(logos)とパトス(pathos)の3つが挙げられることがあります。確か、アリストテレスによる分析であったと記憶しています。

ざっくりと申し上げれば、エトス(ethos)とは倫理・性格を意味し、ロゴス(logos)は論理を、パトス(pathos)は情熱を意味します。ちなみに、法律家は、常にロゴス(logos)を軸に議論することを生業としています。これが普段の会話にも知らず知らず影響しているようにも思います。勿論、実際に他人を説得する場合は、他の力、すなわちエトス(ethos)やパトス(pathos)も使いますが、基本は、ロゴス(logos)、すわなち論理です。

しかし、寅さんの話は、ほとんど全てパトス(pathos)によって成り立っているとさえ言えるでしょう。少なくとも、第1話「男はつらいよ」で、さくら(倍賞千恵子)に惚れている博(前田吟)に対する寅さんの台詞は、決して論理的ではありません。それどころか、前に言っていたことと180度真逆のことを言うことさえあります。しかし、観客も含めて誰も、変節してるとは、非難しません。決してロジックの優れた説得ではないのですが、聞いていて、ほれぼれする語りであり、いつのまにか引き込まれてゆくのです。それが、いったい何処から来るのかを探るのも、この映画の楽しみかもしれません。

全く、企業法務と関係なさそうな話題ですが、「説得」や「人を惹きつける魅力」という点では、ビジネスの世界にいる人も、この映画から学ぶことは、少なくないように感じました。まだ、ご覧になっていない方は、是非、ご覧になることをお勧めします。

2011年1月24日  6:30 AM |カテゴリー: その他 |コメントはまだありません
 
   
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